角田陽太|「東京浪漫酒場」|第六回 国立「カラスの家」
Design
2015年11月11日

角田陽太|「東京浪漫酒場」|第六回 国立「カラスの家」

良いオーディオに囲まれながらゆっくり電気ブランのグラスを傾ける

第六回 国立「カラスの家」

国立駅を南に出て富士見通りをしばらく行くと国立音大付属高の近くにそのお店がある。駅からはかなり遠い。Technicsのサイン、提灯、複数の看板などかなり怪しい外観をしている。“カラオケ飲み屋”と称しているこのお店、だからなのか店名は伝説のソプラノ歌手、マリア・カラスに由来する。

Photographs by SHIRAISHI KazuhiroText by KAKUDA Yota

国立の奥深くあるディープゾーン

カラスの家はインテリアが凄い。統一感がまったくないごちゃごちゃしたモノたちで溢れかえり、それが不思議と一つの雰囲気を作り上げている。

カラスの家|角田陽太 03

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店を入るとそこにはその独特の空間が広がる。まるで小宇宙、通常の生活とはかけ離れた感覚になる。店奥のスペースはクラシックなベロアのソファと往年のスピーカーなどがならぶ。

内装というかある意味“装い”をはるかに越えている。

現在あまりアクティブではないが、昼間は「シーマ音響」として真空管アンプの製造と販売をしている。当然お店には良い音を出してくれる真空管アンプが置かれていて、筆者は学生時代から聴きたいレコードを持ってきては、かけてもらっていた。

今回はレコードが繋がっていなかったので、お店のCDを聴きながら瓶ビールを飲む。

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モノが溢れているという前述どおり、薄暗い店内のわりにはたくさん照明がある。カウンターにはデスクライトたちが頭を垂れている。

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またランプのバリエーションは多く、パイプ内にケーブルが仕込まれているもの、綺麗なへら絞りによるシェード、バイクのヘッドライトを天井に取り付けたもの、和紙でできた提灯など、とてもおもしろい。

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過去にお客さんの一人がデザインしたというカラスのキャラクターがオリジナルの焼酎など、店内のいろいろなところに出没するのも私たちを和ませてくれる。

良いオーディオに囲まれながらゆっくり電気ブランのグラスを傾け、ナッツを食べる。ここはメニューのほとんどが乾きものなので、2軒目以降にでも、この国立の奥深くあるディープゾーンを体験しにいってみてほしい。

カラスの家
東京都国立市西2-20-10 第二村上ビル1F
Tel. 042-575-2556
営業時間|19:00~25:00
定休日|日曜日

角田陽太|KAKUDA Yota
デザイナー。仙台生まれ。2003年渡英し、さまざまな事務所で経験を積む。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を修了。2008年に帰国後、無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年、YOTA KAKUDA DESIGNを設立。
http://www.yotakakuda.com/

白石和弘|SHIRAISHI Kazuhiro
1980年千葉県生まれ。2007年より写真家 上田義彦氏に師事。2011年独立、以後フリーランスフォトグラファーとして活躍中。

           
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