角田陽太|「東京浪漫酒場」|第五回 代田橋「しゃけ小島」
ワーキングデスクが隣りだった元クラスメイト同士の話が盛り上がる
第五回 代田橋「しゃけ小島」
ロンドンから訪ねてきていた友人を京成立石に連れて呑みに行き、そのまま西へ。京王線の代田橋駅から甲州街道を越え徒歩5分、沖縄タウン内に北海道産しゃけの銘店がある。今年で5周年、意外にも筆者がその1年目に店員としてときどきカウンターに立っていた店でもある。
Text by KAKUDA YotaPhotographs by YAMADA Kazunobu
今宵3軒目の1杯目は、筆者地元産の「日高見」
元市場だったアーケードをくぐっていくと森本千絵さんが手がけた看板が見えてくる。引き戸をガラガラっと開けると昭和時代の家具がならぶ空間が広がる。
カウンター7席、テーブル席14席。この奥行き60cmの広いカウンターはゆったりできて、ついつい長居してしまうのだ。
日本酒が充実していて、店主の出身地の会津や東北のお酒を中心に、全国から良い銘柄が揃う。
前述のように、今宵3軒目ということもあり、1杯目から筆者の地元産の「日高見」をいただきながら、しゃけの腎臓の塩辛、めふんや頭の軟骨の酢漬け、氷頭をいただく。
秀逸なステムグラスと、日本製のウィンザーチェア
冷酒グラスは口が薄く飲みやすい形状である秀逸なステムグラス。ドイツ製のそれと日本酒がピッタリの関係という事実はデザイナーとしてとても勉強させられる。
各地の民藝などが使われている食器も充実していて、淡路工藝製のテーブルなど、家具も過度に飾らない佳作揃い。なかでも窓際の席で使用されている日本製のウィンザーチェアは昭和の日本人用だけあり、最小限に身体を支えるサイズ感と簡潔な形状がすばらしい。
会津の奈良萬の燗酒と天ぷらなどをいただいてから、最後は上しゃけ定食。店の顔である定置網によって捕獲された上しゃけのグリルは絶品。レストランのメインと比較しても引けを取らず、そう考えるとまったくリーズナブルである。いくら丼も人気の一品。
ワーキングデスクがまさに隣りだった元クラスメイト同士、上質な料理と日本酒で、話が盛り上がる。
昔から胃腸に良いと言われるしゃけのおかげで、呑んだあともなぜかとても健康になった気がしながら、タクシーに乗り込んだ。
しゃけ小島
東京都杉並区和泉1丁目3-15 めんそーれ大都市場
Tel. 03-6240-8409
営業時間|18:00~24:30、17:00~24:00(日曜日)、水曜日のみランチ営業
定休日|月曜日
角田陽太|KAKUDA Yota
デザイナー。仙台生まれ。2003年渡英し、さまざまな事務所で経験を積む。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を修了。2008年に帰国後、無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年、YOTA KAKUDA DESIGNを設立。
http://www.yotakakuda.com/
山田和伸|YAMADA Kazunobu
1978年奈良県生まれ。2005年よりフォトグラファー熊谷隆志氏に師事。2008年独立、以降フリーランスフォトグラファーとして活動中。