フェラーリ F60アメリカ、世界初公開|Ferrari
Ferrari F60 America|フェラーリ F60 アメリカ
北米上陸60周年を祝う
フェラーリ F60アメリカを世界初公開
フェラーリは、ロサンゼルスのビバリーヒルズを舞台に大々的に開催された、北米マーケット進出60周年祝賀イベントにおいて、限定スペチアーレ「F60アメリカ」を発表した。
Text by TAKEDA Hiromi
北米のフェラリスタが愛するV12のオープンモデル
アメリカ市場にフェラーリが進出して60年を祝福するパーティが、ロサンゼルスで大々的におこなわた。このイベントでは歴史的な貴重なモデルをはじめ、1,000台ものフェラーリが集結したほか、目玉として60周年記念限定モデル「F60アメリカ」が発表された。
注目のF60アメリカがオマージュを捧げるのは、当時の最高性能版フェラーリ「375プラス」を1954年に初めて輸入した北米におけるフェラーリの礎、故ルイジ・キネッティ氏と、彼の興したNART(ノースアメリカン レーシング チーム)であろう。
1949年、戦後初のル・マン24時間レースを、こちらも初出場となるフェラーリで制したキネッティは、直後にアメリカでのフェラーリ販売代理権を取得。一時は世界最高のフェラーリディーラーとなった。また、スクーデリア・フェラーリとも密接な関係をもつNARTを設立し、1960-70年代には、ル・マンをはじめとする世界中のスポーツカーレースで大活躍を果たした歴史上の人物なのだ。
このほど初公開されたF60アメリカは、古くから北米のフェラリスタが愛してやまないフロントエンジンのV12に、こちらもアメリカ好みなオープントップの組み合わせ。ベースは、「F12ベルリネッタ」とする。特別なスペチアーレとはいえ、740psを発生する6,262ccのV12エンジンなど、メカニズムはF12と変わらない。それでも0-100km/h加速で3.1秒という速さは、もはやそれ以上を求めるべきものでもあるまい。
Ferrari F60 America|フェラーリ F60 アメリカ
北米上陸60周年を祝う
フェラーリ F60アメリカを世界初公開 (2)
製作台数も過去に敬意を表して
このモデルの真骨頂は、1950-60年代の“特別なフェラーリ”たちと同様に完全なビスポークとされていること。そして、ベースモデルであるF12とは一線を画したアピアランスにある。
フロントは、格子型グリルを持つフェラーリの伝統的スタイルとされ、ブレーキを冷却するエアインテークに至るまでクロームで仕上げられる。また、カーボンとレザーのフィニッシュも美しいロールバーを持ち、オープン状態がデフォルトとなる。つまり、いわゆる“バルケッタ”なのだが、120km/hの速度までは走行可能な軽量ファブリック製トップが装着できることになっている。
バルケッタゆえに、外界からのアイキャッチとなるインテリアにも趣向が凝らされており、コックピットは「375MM」や「250テスタロッサ」など、歴史的なフェラーリ製レーシングスポーツにインスパイアされた左右非対称なザインを採用。華やかなレッドに彩られたドライバーズエリアと、シックな黒を基調としたパッセンジャーズエリアにわけられている。
そしてボディカラーは、NART伝統のカラーである「Blu NART」がイメージカラーとされたほか、フェラーリ北米上陸60周年を記念する特別な「カヴァリーノ ランパンテ」のバッジが、フロントのホイールアーチおよびコクピット内のセンタートンネルに奢られるなど、あらゆるパートが入念に仕上げられているのだ。
この魅力溢れるF60アメリカは、当然ながら限定モデルであり、生産数はわずか10台。その由来は、かのスティーヴ・マックイーンをはじめとする米国の顧客向けに、キネッティ氏がエンツォ・フェラーリに特別注文、1967年に製作された「275GTB/4 NARTスパイダー」へ敬意を表したもの。販売価格は「ラ フェラーリ」をも大きくしのぐ250万ドルになるとのことだが、じつは発表と同時に完売になってしまったとの噂である。
このクルマの存在は、アメリカとフェラーリが60年に亘って紡いできた「絆」を感じさせるものなのである。