レース界のレジェンド×ピニンファリーナによる超限定スーパーカー|Pininfarina
Fittipaldi EF7 Vision Gran Turismo by Pininfarina|フィッティパルディEF7ヴィジョン・グランツーリスモ
歴史を所有する悦び
ピニンファリーナによる超限定スーパーカー
大手ブランドから新型モデルが次々と発表されるなど、話題の尽きなかった今年のジュネーブモーターショー。そんななか、ピニンファリーナが発表したのは、往年のドライバーが企画した新しいスーパーカー「フィッティパルディ EF7 ヴィジョン グランツーリスモ」だ。現地に赴いた大矢アキオ氏が、フィッティバルディ氏本人へのインタビューを行い、その制作の経緯や想いを訊ねた。
report by Akio Lorenzo OYAPhotographs by Pininfarina/HWA/Sony Interactive Entertainment/Akio Lorenzo OYA
伝説のドライバーによるプロジェクト
イタリアを代表するカーデザインハウスのひとつピニンファリーナは2017年3月、ジュネーブモーターショーで「フィッティパルディ EF7 ヴィジョン グランツーリスモ(以下EF7)」を公開した。
この超エクスクルーシブなレーストラック用スーパースポーツカーのスタッフロールには、名だたるブランドが並んでいる。
まずは、プロジェクトを立案した人物である。その名はエマーソン・フィッティパルディだ。1946年ブラジル出身の彼は、1972年にロータスF1で史上最年少の25歳で年間チャンピオンに輝いたのち、1974年にマクラーレンでも同様にチャンピオンとなった。
後年米国のCARTシリーズに転向。そこでも1989年と1993年に優勝している。F1とCARTいずれも2回チャンピオンに輝いたドライバーは、彼以外存在しない。
そのレース界のレジェンドが、自らのメーカー「フィッティパルディ・モータース」を立ち上げようと思いついた原点は「(今までの)GTは重すぎる。いっぽう、フォーミュラカーは軽く操縦エラーを起こしやすいこと」だった。
そうした点を踏まえて、ジェントルマンドライバーのために「品質、安全そしてフォルム、いずれもベストを目指した」という。
加えて、過去5年にわたり、世界の名だたるGTカーの数々をテストドライブした彼は、「それらが極めて快適で優秀であったものの、よりロマンティックなもの」を求めた。
その結果、フィッティパルディがエンジニアリングを託したのは、ドイツ・シュトゥットガルトのHWA社だった。メルセデス・ベンツのDTMマシーン供給で知られるレーシングカーコンストラクターである。
Fittipaldi EF7 Vision Gran Turismo by Pininfarina|フィッティパルディEF7ヴィジョン・グランツーリスモ
歴史を所有する悦び
ピニンファリーナによる超限定スーパーカー(2)
マーケットは全世界
当初フロントエンジンを目指したが、その後ミドシップへと計画を変更。そして、フィッティパルディとHWAが到達した答えは、FIAレギュレーションをクリアできるレベルのセイフティーカプセル機能を果たすカーボンモノコックだった。
将来日の目をみる約600bhpの4.8リッター自然吸気V8エンジンおよびシーケンシャル6段インテグレーテッド ギアボックスもHWAの手による。
イタリアン・デザインに対して強い思い入れを抱いてきたフィッティパルディは、自らのスポーツカーのデザインハウスに、フェラーリをはじめ数々のスーパースポーツを手がけたことで知られるピニンファリーナを迷わず選んだ。
フィッティパルディの希望をもとに「鮫」からインスパイアしたデザインが完成。エキゾティックなデザインだが、彼によれば「ジェントルマン ドライバーのために、前方視界の確保にも腐心したものである」と、ここでも前述のカーボンモノコック同様、安全に対する配慮をみせる。
フィッティパルディは今年71歳。どのエリアでカスタマーを開拓するのか? との筆者の質問に、彼の会社はドバイをベースとするもののマーケットは「全世界!」と、即座に力強く答えた。
Fittipaldi EF7 Vision Gran Turismo by Pininfarina|フィッティパルディEF7ヴィジョン・グランツーリスモ
歴史を所有する悦び
ピニンファリーナによる超限定スーパーカー(3)
リアルとヴァーチャル レーシングの融合も
現行デザインのままで走行できるのはレーストラックのみだ。ただしピニンファリーナのデザインスタジオチーフ、ルカ・ボルゴーニョ氏によれば、灯火類のデザイン変更などを施せば、公道走行も不可能ではないという。どの程度のモディファイになるかは、仕向け地のレギュレーションによる。
エマーソン・フィッティパルディ、HWA、そしてピニンファリーナと並ぶもうひとつのビッグネームは、冒頭の正式な車名からも想像できるとおりゲーム『グランツーリスモ』だ。近日発売の『Gran Turismo SPORT』では、FE7がさっそくヴァーチャルで操縦できる。
フィッティパルディは「リアルとヴァーチャルレーシングの融合はとても印象的」としたうえで「ヴァーチャル分野のリーダー的存在であるグランツーリスモとの仕事は極めて刺激的」と振り返る。
いっぽう“リアル”のEF7を手に入れた幸運なオーナーには、もれなくフィッティパルディ本人によるプライベートのドライビングレッスンが受講できる特典が付与される。
リリースには、このようなフレーズも記されている――「このクルマのオーナーになることは、歴史の一部を共有すること」。
プライスはこうしたモデルの常で公表されていない。しかし、その言葉に心打たれた富裕なエンスージアストは、この産声をあげたばかりのブランドと密かにコンタクトをはじめているに違いない。