フィアット500X、ウィットに富んだプロモーションで北米に乗り込む|Fiat
L.A. Autoshow Report|Fiat
フィアット500X、ウィットに富んだプロモーションで北米に乗り込む
フィアットが北米プレミアとしたのは、10月のパリモーターショーで発表されたばかりの「500X」。名前から連想されるとおり、チンクエチェントのフェイスをまとった新型コンパクトSUVだ。大谷達也氏が、会場をわかせたユニークなプロモーション動画とともに紹介する。
Text & Event Photographs by OTANI Tatsuya
クォリティ感とイタリア人の美的センスを兼ね備える
フィアットはパリサロンで発表済みのコンパクト クロスオーバー「500X」を引っさげてロサンジェルスにやってきた。
南欧諸国の狭い市街地をすばしっこく走ることを第一義に考えてつくられたフィアットのコンパクトカーが、広大な大地を有する北米で人気を得るのは容易なことではない。じつは、フィアットはかなりの期待をかけて「500」の4ドア版である「500L」を北米市場に投入したが、思うような成績は残せなかったらしい。「ならば、SUV風味をくわえた500Xで北米市場に再チャレンジしよう!」 LAショーでのフィアットブースからは、そんな意気込みが強く感じられた。
500Xの詳細はすでにOPENERSでも紹介しているが、実車を目の前にしてみると、500の面影を残しつつもサイズが拡大されたボディのプロポーションは意外にまとまりがよく、大地にしっかりと踏ん張っているかのようなスタンスとのバランスも悪くない。
それよりもさらに驚かされるのがインテリアのクォリティ感で、誠に失礼ながら「おお、フィアットもここまできたか!」と感慨をあらたにすることまちがいなし。ブースに展示されていた黄色い1台は、インテリアがベージュとグレーの2トーンで構成されていたが、この色味のオシャレ感はイタリア人の美的センスがあらわれていて、生粋のドイツ人にはちょっと真似できないのではないかと思われた。
フィアットのパワートレーンが優れていることは知る人ぞ知る事実だが、500Xは4WD機構もなかなか凝っているほか、安全デバイスやインフォテイメント系も充実。全方位にわたって隙のないクルマづくりは、それだけフィアットの500Xへの期待の大きさを物語っているともいえる。
L.A. Autoshow Report|Fiat
フィアット500X、ウィットに富んだプロモーションで北米に乗り込む
高い感性のPR戦略
そしてもうひとつ、是非とも紹介したいのが彼らのPR戦略である。
今回のプレスコンファレンスでも北米向けに制作されたと思われる500XのCMが何本か公開されたのだが、その内容たるや、いかにもイタリアらしいウィットに富んだもので会場の笑いを誘っていた。たとえば、斜め後方の車両を検知する機能(ブラインドスポット デテクション)を紹介するCM(上動画 12:50あたり)には、通りを歩く美女がコンパクトを広げて後をちらりと見るシーンが用いられているだけで、小難しい説明は一切なし。
また、日本車と思しきコンパクトセダンを持ち込んだ白人の客に、イタリア人らしい修理工場のメカニックたちが「あそこもダメ、ここもダメ、そもそもこのクルマはセクシーじゃない。俺たちが直してあげるよ」といって作業に取りかかると、まったく外観のことなる500Xになって仕上がってくるというCM(上動画 16:45あたり)もあるのだが、そのタイトルは「Fix It Again, Tony(トニー、もう一度直して!)」。これ、かつて頻繁に故障する同社の製品を揶揄する言葉として流行したもので、頭文字がFIATになっているのがミソ。それを逆手に取る彼らのセンスはさすがというしかない。
最後に紹介したいのは、アメリカ各地にある「ROMA」「ITALY」「GENOA」「NAPLES」「PALERMO」「POMPEII」「FLORENCE」「MILAN」「VENICE」などイタリアゆかりの地名を500Xで訪ね、「やっぱりアメリカ人はイタリアが好き。そのサインはアメリカ各地で見られます」というナレーションが入る作品(上動画 19:45あたり)。こうなると完全にイメージ戦略だが、それが許せてしまうCMを制作できるイタリア人の感覚もまたすごいと思う。
500X、その優れたイタリア人の感覚で日本市場にチャレンジして欲しいものである。