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2021年7月13日
クルマと通じ合うシューズって?——マツダとミズノによる新コンセプトのドライビングシューズ体験記|MAZDA & MIZUNO
MAZDA|マツダ
MIZUNO|ミズノ
マツダとミズノによる新コンセプトのドライビングシューズ体験記
人間中心のクルマづくりで人馬一体の走りを追求すると謳うマツダが、独自の考えでドライビングシューズを作りあげた。スポーツウェアでおなじみミズノをパートナーに、ペダル操作のやりやすさを主眼に開発。さっそく試した印象は”こんなシューズ履いたことない”というものだった。
Text by OGAWA Fumio
空気で出来たスリッパを履いているような感覚
「ミズノとマツダは、2015年からエンジニア同士が異業種交流として、お互いのもつ製品の素材などのノウハウを勉強し合ってきました。そこから生まれたのが、シューズの共同開発。人馬一体を実現する理想のドライビングギアの第一弾です」
マツダの車両開発部における若きエース、梅津大輔氏は、いつもとはちょっと異なる趣の試乗会の会場で、上記のように語ってくれた。マツダ車のために開発されたといってもいいシューズ(名称は現時点で「マツダ/ミズノ ドライビングシューズ」)を装着してマツダ車に乗るのだ。
梅津氏のチームが、そもそもシューズに眼をつけたのは、筋肉と靴との関係だったという。アクセルとブレーキを中心としたペダル操作時の脚の負担をやわらげ、かつ確実に操作できる機能を盛り込む。そのために、膝から下の脚のふたつの大きな筋肉、前脛骨筋と腓腹筋のサポートに注目したそうだ。
これらの筋肉の動きを重視したのは、「ペダルを踏まされる感覚をなくし、かわりに踏みこみ量の調整がしやすく、かつペダル踏み替え操作がしやすいように」(梅津氏)と説明される。
実際に、履いてみると、第一印象は一言で言って、これまで未経験の履き心地、というものだ。スニーカーが好きな人なら、シューレース締めて足をしっかり固定する感覚をご存じだろう。それとはまったく違うのだ。
冒頭で、こんなシューズ履いたことない感覚としたのは、足の締め付け感がほぼないのに、シューズが足に密着している独特の感覚ゆえだ。空気で出来たスリッパを履いているような、とすればいいのか。
このシューズで、より繊細なペダル操作が求められるロードスターを操縦したところ、足が動かしやすくなっているのが、すぐ分かった。普通のスニーカーだと運転中は、思いもしなかった個所が締め付けられ、やや不自由な経験をすることもある。それに対して、マツダとミズノが共同開発したドライビングシューズは、いっさい違和感がない。
よく出来たスポーツカーを“着ているよう”と表現することがある。このドライビングシューズもまさにそれ、なのだ。
「私たちがこれまで手がけてきたスポーツシューズは足の甲をしっかり締め付けることを念頭において設計してきました。でも今回は、脚の動きをサポートするという目的でもって、ほぼゼロから、マツダさんと一緒に開発しました」
ミズノのグローバル研究開発部の佐藤夏樹氏はそう教えてくれた。ラスト(靴型)こそ、従来のものに手を加えて使用しているものの、アッパーの構造は斬新だ。一つはつま先を持ち上げる「背屈動作」をサポートするため甲から足首にかけての部分にストレッチ素材を使用。
もう一つは、つま先でペダルを踏みこむ動作のために、「底屈時」の動きを繊細にコントロールできるよう、かかとの上のアキレス腱があるあたりのアッパーに、ジャバラ構造のメッシュ素材を採用している。
クルマと同様の面反射の美を靴で表現
同時にこのシューズには、「MIZUNO COB(ミズノコブ)」なるソールを採用。「足裏の感度を高め、バランス能力向上を追求した」とミズノが謳う、体幹を鍛えるトレーニングシューズで知られた技術だ。足裏に正確な情報を伝達する凹凸構造に、マツダの梅津氏が注目したのも、今回の採用の理由という。
「すべてのステッチに(機能的な)意味があります」(梅津氏)という一方、スタイルも同時に重んじたのが、魂動(こどう)デザインなど、審美性をことさら重視するマツダらしいところ。
「360度どこから見ても美しいように」(デザインにかかわったマツダデザイン本部の藤川心平氏)というのが、このシューズにおけるもう一つのこだわり。たいてい、シューズはラストを決めて、あとは一人の職人が裁断した生地をそこに被せて縫い合わせていく。トルソを使う洋服と近い。
それに対して、今回マツダのデザイナーは、同社のクレイモデラーとともに、まずシューズのクレイモデルを作りあげた。「イメージがはっきりと伝わると思ったためです」と、先の藤川氏は説明する。
そこから、両社の共同作業が始まる。コロナ禍にあって、直接会っての作業はできず、リモートで話し合い、途中経過を報告し合いつつの作業は楽でなかったろうと思う。
マツダのデザイナーにとって、先に梅津氏の言葉にあったように、すべてのステッチが意味を持つというシューズの作りは驚きであり、同時に大きな発見につながったようだ。加えて、クルマ関連のものと違い、シューズは中が空洞。「これも改めて知って、造型のスタート地点が違うことに、いろいろ気づきがありました」(デザイン本部の寺島佑紀氏)とする。
最終的にデザイナーがこだわったのは、スタイリッシュに見せること。クルマのデザインイディオムを適用して、製品に面の質感をもたせたい、というのもデザイン部共通の思いだったそうだ。
「クルマと同様の面反射の美を靴で表現するのは難しいのですが、素材の選び方など、できるだけがんばったつもりです」とは、ミズノ・グローバルフットウエアプロダクト本部でデザインを担当する南波友規氏の言葉だ。
「特にこだわったのは、アッパーを二つに分けたこと。下はグレイのヌバックを使って、上はブラックにしました。二つの素材の色と、質感の違いでもって、私たちの言葉でいう“カラーブレイク”(色の分割)を実現し、クルマのように重心髙の低さも表現できたと思います」(マツダの寺島氏)
はたして、デザインと技術が高いレベルで融合して生み出された「マツダ/ミズノ ドライビングシューズ」。これまで世の中になかった新しい製品やサービスの提供をめざすクラウドファンディングプラットフォーム「Makuake(マクアケ)」で、21年7月6日から“応援購入”がスタートする。発送は22年3月から。
日本製にこだわったこのドライビングシューズ。600足限定で、価格は4万4000円。サイズは24.5cmから28cmまで。カラーは、グレー×ブラックの1色のみ。先着100名分は限定先行価格として3万5200円(同)で発売されたものの、一瞬で売り切れとなっている。
Makuake(マツダ/ミズノドライビングシューズのプロジェクトサイト)
https://www.makuake.com/project/drivingshoes/
https://www.makuake.com/project/drivingshoes/
ミズノ株式会社
https://www.mizuno.jp
https://www.mizuno.jp
MAZDA COLLECTION(マツダオフィシャルサイト)
https://www.mazda.com/ja/collection
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問い合わせ先
マツダコールセンター
Tel.0120-386-919(平日9:00〜17:00、土日祝9:00〜12:00 13:00〜17:00)
https://www.mazda.co.jp