CAR /
IMPRESSION
2022年7月20日
フルモデルチェンジを受けた日産「エクストレイル」に試乗──上質さを追求した新型の走りやいかに|NISSAN
「技術の日産」の面目躍如
数字を並べると、最大トルク250Nmのエンジンが発電する電力で、330Nmと195Nm、馬力だと144psの3気筒ターボで、204psと136ps、2つのモーターを動かす、ということになる。あくまで、原動機それぞれの最高出力と最大トルクの数値を並べているから魔法のようにも思えるわけだけれど、これらエンジン、モーター、そして電池からなるシステムの巧みな制御に、日産e-POWERとe-4ORCEの真骨頂がある。
エンジン単体として見ても、VCターボは興味深い。開発担当者によると、平行四辺形のリンクはバランサーシャフトとしても働き、3気筒なのに6気筒と同じ振動特性を得ているという。直6といえば、完全バランスである。あくまで発電のみで、駆動には関わっていない。それでも全開時に聞こえてくるエンジン音は乾いた小気味のよいもので、回転の上昇と加速の感覚が一致している。フル加速時にはガソリンエンジンっぽさが漂ってくるのだ。
ちなみに、VCターボの摩訶不思議な機械式のリンク構造は、微分積分が趣味だというエンジニアがコンピューターではできない複雑、かつ膨大な計算を、一人でせっせとこなすことによって生まれたのだという。もうひとつ驚いたのは、マルチリンク構造の主部品、平行四辺形っぽいカタチのパーツはヤスリよりも強度のある鍛造の削り出しで、日産で内製しているということだ。モノづくりの国、「技術の日産」の面目躍如というべきではあるまいか。
VCターボを、駆動用エンジンとして搭載するモデルも海外ではすでに販売されている。日本市場は電動化を推進する方針のため、販売予定はないという。実にもったいない。とも思うけれど、新型エクストレルの上質さは、VCターボによるe-POWERがもたらしたものであり、VCターボなかりせば、我々の驚きもなかっただろうこともまた事実である。
なお、新型エクストレイルは下からS、X、Gの3種類のグレードと、スペシャルな仕様としてオーテックがある。オーテックは、20インチでミシュランを装着する。
駆動方式にはそれぞれに前輪駆動と4WDのe-4ORCEがある。e-4ORCEは195Nmと、後輪専用としては強力なモーターを搭載する。と前述したけれど、たとえばトヨタRAV4のE-FOURのリア・モーターは121Nmで、RAV4の場合はエンジンとモーターで前輪を駆動する。e-4ORCEは常に前後モーターと左右ブレーキで各輪のグリップ限界を算出し、各輪の駆動力をコントロールする。モーターはトルクを即座に生み出すことができるから、より緻密な制御ができる。それゆえ、意のままのコーナリング、雪道でもオフロードでも、圧倒的な安心感と楽しさを提供する、と日産は主張する。
「プロパイロット パーキング」等、運転支援装備や、「ハローニッサン」と呼びかけると答える対話型インターフェイスも搭載。
3列7人乗りの設定もある。価格は319万8800円から504万6800円まで。車両価格と購入層の年齢の上昇が、上質さを追求させた一因でもある。開発陣は目標をクリアし、よくその期待に応えた、と筆者は思う。
Spec
Nissan X-Trail X e-4ORCE|日産エクストレイル X イーフォース
- 全長×全幅×全高|4,660×1,840×1,720mm
- ホイールベース|2,705mm
- トレッド前/後|1,580 / 1,590mm
- 駆動方式|4WD
- 車重|1,880kg
- 乗車定員|5名
- サスペンション前|マクファーソン・ストラット/コイル
- サスペンション後|マルチ・リンク/コイル
- エンジン|1,497cc 直列3気筒DOHC(ボア×ストローク=84.0×90.1mm)+インタークーラー付きツインターボ
- 最高出力|106kW/4400―5000rpm
- 最大トルク|250Nm /2400―4000rpm
- モーター(フロント)| BM46 交流同期電動機
- 最高出力|150kW/4739―5623rpm
- 最大トルク|330Nm/0―3505rpm
- 動力用主電池|リチウムイオン電池
- モーター(リア)|MM48 交流同期電動機
- 最高出力|100kW/4897―9504rpm
- 最大トルク|195Nm/0―4897rpm
- 動力用主電池|リチウムイオン電池
- ブレーキ前後|ベンチレーテッドディスク
- タイヤ前後|235/60R18 103H
- 価格|379万9400円
問い合わせ先
日産お客さま相談室
Tel.0120-315-232(9:00-17:00、12/31-1/2を除く)
http://www.nissan.co.jp/