激戦区であるコンパクトSUV市場にプジョーが投入した「2008」に試乗|PEUGEOT
CAR / IMPRESSION
2021年3月30日

激戦区であるコンパクトSUV市場にプジョーが投入した「2008」に試乗|PEUGEOT

PEUGEOT 2008 Allure|プジョー2008アリュール

フレンチライオンのコンパクトSUV、プジョー「2008」に試乗

PSAがFCAと合併しステランティスグループが生まれ、ライオンをモチーフとしたロゴを刷新するなど、自動車が大きな変革期を迎える中、新たなフェーズを迎えているプジョー。同車が2020年9月に、競合しひめくコンパクトSUV市場に投入した2008の実力を確かめるべく、エントリーグレードたる「Allure(アリュール)のガソリンエンジンモデルに試乗した。

Text & Photographs by HARA Akira

ルノー キャプチャーからヤリスクロスまで、競合ひしめくコンパクトSUV市場

先ごろブランドロゴを刷新したプジョー。1850年以来絶えずライオンをモチーフにしたロゴを採用し続けていて、現行のものは2010年に登場したもの。オンラインで開催された新ロゴ発表会によると、プジョーではこの10年間、ブランドの高級感を高めるために日々努力を続けてきており、今回PSAとFCAが合併したステランティスグループの設立や、自動車業界に押し寄せる電動化の波などを受けて、プジョーが次のフェーズに入ったことの象徴として新しいロゴに移行することになったのだという。
具体的には、これまで使用していたライオンは横向きで全身のものだったが、11代目となった新ロゴでは同じ横向きの頭部だけのものになっている。新ロゴはWEBサイトやディーラーなどユーザーとのコンタクトポイントから使用を開始し、車両のエンブレムとして登場するのは今年発表予定の新型「308」からになるという。
そんなプジョーが2020年9月、現在最も激戦区であるコンパクトSUVというジャンルに送り出してきたのが、今回試乗した「プジョー2008」だ。全長4,305×全幅1,770×全高1,550mmというBセグメントを少しだけはみ出すサイズのボディを持ち、同じ仏ブランドのルノーから今年2月にデビューしたばかりの「キャプチャー」、独フォルクスワーゲンの「T-Cross」と「T-Rock」、日本車ではトヨタ「ヤリスクロス」、日産「キックス」、まもなくデビューするホンダ「ヴェゼル」などがガチンコの勝負相手となる。
2008が採用するプラットフォームは、ガソリン車用の「CMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)」と電動モデル用の「e-CMP」があり、ラインナップはガソリンエンジンモデルのほかにピュアEVモデルまで揃っている。それは96kW(130ps)/230Nmを発生する3気筒1.2リッター ガソリンターボを搭載した「2008」(302万円~341万円)と、その EVモデルである100kW(136ps)/260Nmのモーター搭載モデル「e-2008」(431万円~470万円)で、それぞれにGTとAllure(アリュール)というグレードを揃えている。

アグレッシブなエクステリアとアバンギャルドなインテリア

エクステリアでは、ブランドロゴであるライオンを彷彿させる、フロント両端の牙のような形のデイライトや、3本のかぎ爪のようなデザインのリアライトが目立つ。
ヘッドライトは上級モデルではこちらも3本のかぎ爪デザインとなるが、アリュールでは少しおとなしい2眼LEDを採用。ボディーサイドにはひし形を半分にしたような深いくぼみが前後にあり、ウインドウラインが後端に向かってキックアップしたシャープな造形になっている。
大径タイヤ(215/60R17)による高めの最低地上高(205mm )と、1,550mmという立体駐車場に収まる低いルーフを組み合わせた“いで立ち”は、なかなかアグレッシブだ。
インテリアはさらにアバンギャルドな雰囲気につつまれる。それは、先代から採用してきた上下が平らな小径ステアリングの上側にメーター部分を組み合わせたプジョー独特の「i-コックピット」を、さらに進化させた新しい「3D i-コックピット」を搭載したことによるものだ。
ただでさえ斬新だったこのレイアウト。3Dに進化した新型のメーターナセル内には、デフォルトで左端に燃料計とオドメーター、右端に水温計とシフトポジションが表示され、中央にはナセルの天井部分から投影されたデジタル速度計とアナログの速度計、回転計が前面に浮き出るような立体形で表示されるのだ。
これが見やすいかどうかは別として、ドライバーにもパッセンジャーにもとてもインパクトがある。またナセルのサイド部分には三角の切り欠きがあって、角度によっては外光がメーター部分まで差し込んできたりするのだが、これもデザイン優先の部分かもしれない。
一方、アイシン製の8段ATをつかさどるシフトレバーはアッパークラスにでも採用されそうな上質なデザインが施されており、押してR、引いてDの使い勝手がいい。スマホに連携する7インチタッチスクリーンの下側には鍵盤のような形状の空調やハザードのスイッチが並び、その下にはQi充電可能なボックスが備わっている。
シートはブラックのファブリックとテップレザー(合皮)のコンビで、パンッと張りがあるタイプ。2,610mmの長いホイールベースを生かしたリアの足元にはゆとりがあり、広い開口部をもつラゲッジは434リッターを確保。フロアボードは上下2段のどちらかに設置でき、60:40の分割可倒式シートを全部倒せば1,467リッターのフラットで広大な空間が出現する。

フランス車の十八番だった“猫足”的乗り味は過去のもの

130ps/230Nmの1.2リッター3気筒による前輪駆動の走りはどうか。こちらは8段ATの優れた制御によって、街中でのスタート時や低中速域での加減速がストレスなく行われてとても気持ちがいい。ドライブモードは、センターコンソールのボタンでEco、Normal、Sportの3段階に切り替えが可能で、ステアリングにはパドルシフトを備えている。
アクセルを強めに踏み込んだ時には、3気筒特有のブルブル感が伝わってくるけれども、それはこちらが注意しているから分かるようなもの。普通にドライブしていれば気になるレベルのものではない。
また、小径ステアリングによるコーナリングについては、最初は少し違和感があったけれども、慣れてしまえばクイックなハンドリングが面白くてすぐに思ったラインが狙えるようになってくる。
サスペンションは、かっちりしたボディ剛性を生かしつつロールやピッチングをきちんと抑えた硬めの設定。昔のフランス車にみられる“猫脚”的なものを懐かしがる向きもあるが、現在のフランス車はグローバルな基準に適合できる、スタンダードなセッティングになっているのだ。
運転支援面では、各種センサー類によって歩行者・二輪車・夜間検知ができるアクティブセーフティブレーキ、0~180km/hで作動するアクティブクルーズコントロール(ACC ストップ&ゴー機能付き)、ステアリング補正を行うレーンポジショニングアシストなど、現代のクルマらしい装備が充実している。
上位のGTモデルには、雪、砂、ぬかるみといった悪路に対応するアドバンスドグリップコントロールや、急な下り坂でも車速を一定に保つことができるヒルディセントコントロールなどが装備されるが、エキストラコストを払ってまでそれらが欲しいというのでなければ、2008アリュールというチョイスはなかなかイイ線をいっているのではないだろうか。
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