高級感がうんと高まった──新型フォルクスワーゲン ゴルフに試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2021年6月25日

高級感がうんと高まった──新型フォルクスワーゲン ゴルフに試乗|Volkswagen

Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ

新型フォルクスワーゲン ゴルフに試乗

1974年のデビュー以来、2ボックスカーのメートル原器として進化し続けてきたフォルクスワーゲン ゴルフ。8代目となるその新型にさっそく試乗した。

Text by OGAWA Fumio|Photographs by KAWANO Atsuki

走らせて楽しい

フォルクスワーゲン ゴルフが8代目にフルモデルチェンジした。1974年に初代が登場して以来、ベストセラーの座を守るハッチバック車であるゴルフ。クルマ好きだったら、乗ったことはなくても、一度は興味を持ったことがあるはず。最新モデルも、走らせると、いい“味”をもった好印象の仕上がりだ。
面白いのは、ゴルフが“よく出来ている”という事実である。変な言い方だと思う。でも、というのは、いまフォルクスワーゲンは、欧州で「ID.」というピュアEVのラインナップを拡充中で、近い将来EVメーカーになることを謳っているのだ。
それなのに、ガソリンエンジンのクルマの出来がよい。普通だったら、そういうときは、ピュアEVシフトを施いて、旧来のエンジン車は手抜きしそうなものではないか。なのに、今回のゴルフ8は走らせて楽しい。エンジンの魅力も味わわせてくれる。
最新のゴルフはかといって、化石ではない。最新モデルの最大の特徴は、エンジンがマイルドハイブリッド化されたところにある。999cc 3気筒モデルも、1497cc 4気筒モデルも、ともにガソリンエンジンに、補助的な電気モーターを備えている。
マイルドハイブリッドは、小さなモーターを使い、発進時や変速時など、トルク(力)が少し足りないかなと思えるところを、モーターのトルクで補うシステムだ。たとえば発進のとき、モーターが動いて、クルマを前に引っ張る。そのあとエンジンの出番、という流れなのだ。
いまの欧州メーカーにおけるはやりが、このマイルドハイブリッドシステムだ。モーターのおかげでアクセルペダルの踏みこみ量が抑えられるため、CO2排出量が抑えられることになる。多くのメーカーが急ピッチでマイルドハイブリッド化を進めている。
とはいえ、一般的にいうと部品点数は増えるし、それなりにコストがかかる技術なので、高級シリーズに限っているところもある。フォルクスワーゲンは300万円そこそこのゴルフで、それをあえて、やってのけた。ここも注目点だ。

1.5リッターは力があって使いやすく、1リッターはほんわかと快適

今回のゴルフは、1.5リッター「eTSI R-Line」と、1リッター「eTSI Active」に試乗した。前者は、110kW(150ps)の最高出力と250Nmの最大トルクを発生。後者は81kW(110ps)と200Nmとなる。変速機はともに7段ツインクラッチタイプだ。
2車の印象をそれぞれ、一言でまとめると、1.5リッターは力があって使いやすく、いっぽう1リッターはほんわかと快適、となる。とりわけ印象に強く残ったのは、1リッター車だ。
ほぼ同時に日本発売となった、アウディの新型A3(「30TFSI Advanced」)と同じエンジンだ。アウディもかなり好印象のクルマである。ゴルフ同様。数値からみれば、そうたいしたことのなさそうなエンジンだ。
でも実際は、気持ちがよい。出力の数値から分かるとおり、頭が後ろにのけぞるような加速力はない。ただし、非力ではない。電気モーターのおかげで走りだしからスムーズ。そして、最良の部分は、高速道路だ。
一度走り出すと、どこまでも速度が伸びていく。ボディの空力特性もいいのだろう。そしてそのとき、車体の動きはフラットで、路面の影響もほとんど受けず、しかも遮音性が高いので、高級感がうんと高まったという印象だ。
サスペンションは、荷重がかかったときにフロントの沈み込みがやや大きいので、小さなカーブに高めの速度で入っていくようなときは、ある程度慣れが必要であるかもしれない。基本的には安定したコーナリング性能を発揮する。
1.5リッターエンジンは、トルクもそなりに太いので、市街地での走行や、高速での追い越し時などに大きな利点を発揮する。アクセルペダルを強めに踏み込んでの加速時など、期待以上にパワフルな感覚が味わえる。
試乗したのは、スポーツサスペンションシステムや、バケットシートを備えた「R-Line」という仕様である。足まわりが案の定、少し硬めに締め上げてあって、ステアリングホイールを切ったときの車体の動きも俊敏な印象だ。
1リッターと1.5リッター、どちらがいいか。日常的に使っていないので断言はできないものの、山岳路と高速道路での試乗では、1リッターの素直な気持ちよさに軍配を上げたい。街中でも非力とは思わないはずだ。
メーカー発表の燃費は1リッターモデルが18.6km/ℓ(実際に近い数値が出るWLTCモード)で、1.5リッターモデルが17.3km/ℓ。決して悪い数字ではない。高速などではエンジンを完全停止させるなどの技術の恩恵もあるだろう。

デジタライゼーションもゴルフ8の特徴

運転支援システム「トラベルアシスト」も、ひと足先にマイナーチェンジを受けたティグワンと並んで導入される。「アダプティブクルーズコントロール」と「レーンキープアシストシステム」を統合制御していて、ドライバ−が軽くステアリングホイールに触れているかぎり、システムは作動する。
デジタライゼーションもゴルフ8の特徴だ。たとえば、計器盤は 10インチとけっこう大きなTFT液晶に。ここにナビゲーションなどの情報も表示できる。もう一つ、インフォテイメントシステム用に10インチ液晶が備わるのが、印象的にかなり新しい。
インフォテイメントシステム、つまり車両の状態をチェックできるインフォメーションと、オーディオなどのエンタテイメント、おおきく二つの機能を液晶画面で操作できる。
ユニークなのは、たとえばエアコンを使うときだ。画面操作で、「ウインドスクリーンをクリアに」「足を温める」「手を温める」「足を冷やす」といったコマンドを入れられる。これもゴルフ8に導入された「スマートテクノロジー」とフォルクスワーゲンでは説明する。
ゴルフ8では、常時オンライン接続で、情報のアップデートができるようになっている「We  Connect」と「We Connect Plus」が用意され、期間限定ながら無償で提供される(「We  Connect」は10年)。スマートデバイスからクルマの一部機能を操作できる「ワイヤレス・アップコネクト」も搭載されている。
車種構成は。1リッター仕様が「ゴルフeTSI Active Basic」(291万6000円)と「ゴルフeTSI Active」(312万5000円)。1.5リッター仕様が「ゴルフeTSI Style」(370万5000円)と「ゴルフeTSI R-Line」(375万5000円)。ナビゲーションシステムやコネクティビティ機能の「Discover  Proパッケージ」は19万8000円のオプションとなっている。
個人的には、電動パノラマスライディングルーフ、480ワット 12スピーカーのハーマンカードン・プレミアムサウンドシステムからなる「ラグジュアリーパッケージ」(23万1000円)も欲しい。
問い合わせ先

フォルクスワーゲン カスタマーセンター
Tel.0120-993-199
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