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2021年8月2日
例え50km/hでも十分楽しい──フェラーリポルトフィーノMに試乗|Ferrari
Ferrari Portfino M|フェラーリ ポルトフィーノM
フェラーリ ポルトフィーノMに試乗
イタリア北部の風光明媚な海辺のリゾートの名を車名にいただくフェラーリ「ポルトフィーノ」が、「ポルトフィーノM」へと進化したのは既報の通り。その進化の度合いを探るべく、モータージャーナリストの小川フミオ氏が試乗した。
Text by OGAWA Fumio|Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko
車名に「M」が付けられた意味
フェラーリには2種類あるのをご存じだろうか。サーキット走行も存分に楽しめるミドシップのスポーツモデルと、エレガントで高速巡航も快適なGTモデルだ。2021年1月14日に日本に導入された「フェラーリ・ポルトフィーノM」は世界の富裕層がリゾートで乗るのにふさわしいイメージのオープンGTだ。
ポルトフィーノMは、北イタリアのリゾートとして有名な、ジェノバ近くのポルトフィーノを車名にもつ。特徴は、アルミニウムを中心として軽量でかつ耐候性の高い格納式トップを備えたオープンボディにある。
抑揚がついたボディ面は、煩雑なキャラクターラインなどなく、グラマラスと形容したい前後フェンダーの張り出しが強調されているのが、大きな魅力だ。このスタイルに惹かれるものの、“フェラーリは敷居が高い”と尻込みをする人でも、フェラーリが初めての人でも存分に楽しめるドライバビリティの高さを、フェラーリ自身が謳っている。
従来の「ポルトフィーノ」に対して、改良を意味する「M」を車名に付けたのは、意味がある。パワーが20ps上がり、ツインクラッチのギアボックスが、従来の7段から8段に、最大トルク(数値は同一)を使えるエンジン回転領域が少し上まで持ち上がっているのだ。
実際に、乗りやすいのだ。まず操縦性に感心した。456kW(620ps)の最高出力と760Nmの最大トルクを発生する3,855ccV型8気筒エンジンをフロント(ただし前車軸より後ろのフロントミドシップ)に搭載した後輪駆動で、すごい数値から想像するより、はるかに運転がしやすい。
ごく低速域から力強いトルクを出すエンジンと、切ったときに車体の反応が速いステアリングをもつものの、神経質さはない。ドライバーは自分の手と足でしっかりとコントロールできる感覚だ。
「2プラス2のパッケージで、子どものいるファミリーでも充分に使ってもらえます」。そう話してくれたのは、フェラーリジャパンのフェデリコ・パストレッリ代表だ。実際に、街中ではまるで高級クーペのように、落ち着いて、快適な乗り味を堪能できる。
エンジン音は、昨今の騒音規制の影響で、以前のような“咆吼”ではない。それでも高音と中音とをうまくブレンドした快音。エンジン回転数が3,000rpmを超えるあたりから、乗っている人間のアドレナリンが湧き出すようなすばらしい”ミュージック”が響いてくる。
スタイリッシュさでポルトフィーノMを選んでも、おそらく後悔しないだろう。上記のように取り回しがよく、市街地でも扱いやすく、しかも、速度に関わらず、スポーツカーに大事な加速性能がたっぷり味わえる。例え50km/hでも十分楽しい。速度に関係なく楽しい、というのは、優れたスポーツカーの証明だ。