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2020年10月30日
ボルボ全車電動化へ、マイルドハイブリッドのXC40 B4に試乗|VOLVO
VOLVO XC40 B4 AWD Inscription|ボルボXC40 B4 AWD インスクリプション
ボルボ全車電動化へ、マイルドハイブリッドのXC40 B4試乗
昨年限りで生産が終了したV40にかわって、ボルボのエントリーモデルとなったコンパクトSUVのXC40。欧州と日本でカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するとともに好調な販売を続けてきており、今年8月25日にはプラグインハイブリッドモデル(PHV)の「Recharge Plug-in hybrid T5」を導入するとともに、従来のエンジン単体モデル「T4」「T5」を廃止してエンジン+48Vマイルドハイブリッド(MHV)システムを搭載した「B4」「B5」に入れ替えることで、ボルボSUVシリーズのパワートレーンは全車電動化(内燃機関のみの車両がなくなる、の意)を果たしたことになった。今回乗ったのは、そのMHVモデル「XC40 B4 AWD インスクリプション」。“電動化”によって走りはどう変わったのか、箱根を舞台にした試乗会に参加して確かめてみた。
Photographs & Text by HARA Akira
全車電動化の一翼を担うB4モデル
ボルボが導入した48Vハイブリッドパワートレーンは、ベルトでクランクと結ばれたISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)によって回生ブレーキで発電した電力を48Vリチウムイオンバッテリー(24セル)に蓄電し、エンジンの始動や車両出力補助、制動に使用するというもの。


試乗車(B4)が搭載するのは、最高出力145kW(197ps)/4,800〜5,400rpm、最大トルク300Nm/1,500〜4,400rpmを発生する「D420T6」型2.0リッター直列4気筒DOHC16バルブのインタークーラー付きターボガソリンエンジンに、10kw/3,000rpm、40Nm/2,250rpmの電気モーターを組み合わせたもので、8段ATトランスミッションを介して電子制御のAWDシステムを駆動する。



電動化のもう一方のモデルであるPHVは、1.5リッター3気筒エンジン+大馬力モーター、7段デュアルクラッチトランスミッション、フロント駆動というシステムを組んでいて、当然ながら大きく異なっている。ちなみにB4の4気筒エンジン本体も第3世代のDrive-Eパワートレーンとして、ターボチャージャー、ピストン、シリンダー、シリンダーヘッドとブロックなど約90%ものパーツを新設計し、遮音材の変更やオイルパンカプセルを追加することで静音化がさらに進んでいるという。
「T」モデルより上質になった「B」モデルの走り
全長4,425×全幅1,875×全高1,660mm、車両重量1,780kg(サンルーフ付き車)の試乗車は、フュージョンレッドメタリック(オプション)のボディカラーにブロンド/チャコール&ブロンドの2トーンインテリアを組み合わせたインスクリプションモデル。


早速スタートボタンを押すと、始動はスターターモーターではなくISGが行うのでノイズやバイブレーションが低減されているのが分かる。さらに走り出しの最初の部分でモーターのトルクがアシストしてくれるので、ススッと車体が動き始め、MHVを搭載したことによるメリットが最初からドライバーに伝わってくるのだ。
目で見てMHVが分かるのが、ブレーキング時にタコメーター内にある小さな電池マークがブルーに光って充電していることを知らせるところだけ。ことさらそれを強調しないところはボルボとしての見識なのだろう。



試乗コースは芦ノ湖スカイラインを中心としたアップダウンのきついワインディング路。そこではさすがにスポーティカーのような俊敏な走りは望めないものの、これはこれで必要十分な感じ。
センターコンソールの端にちょこんと配されたドライブモードボタンでDynamic(高性能)を選ぶか、パワーアップバージョンのB5 Rデザインを選んだりすれば、さらなる走りが提供されるとは間違いないが、ボルボとしてはそれよりも、美しいレザーシートや、ノーベル賞の晩餐会に供される食器で知られた地元スウェーデン・オレフォス社製の輝くクリスタルのシフトノブ、太陽の光を愛する人たちにとって必需品と言ってもいい大型の電動パノラマガラスサンルーフ(オプション)から見える青空など、上質な北欧テイストをしっかりと味わいながらドライブを楽しんでほしいと願っているような気がするのだ。




マニュアルモードを選択したところでパドルシフトは廃されているし、クリッピングポイントを目指してコーナーに突入するような走りをする気がしないところも、このクルマが持つ美点かもしれない。B4インスクリプションではテールパイプも少し奥まった場所に目立たない形で取り付けられているため、後方から撮影したB4の写真を見ると、まるでEV車のように見えるところもグッドアイデアだ。


さすがに高回転まで回すとエンジンの透過音や振動が伝わってくるけれども、音質的には4気筒らしいビートのきいた気持ちの良い音なのでこれもOK。ボルボによると、XC40が使う小型車用プラットフォームCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)は、将来のフル電動化まで見据えていて、エンジンを必ず搭載することを前提として設計した中・大型車用のSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)に比べてその辺りはちょっと負けているのだそうだ。
ドイツ御三家とは異なった魅力を放つ
安全面では、全車に最高速度180km/hのリミッターを採用しただけでなく、「死亡事故ゼロ」を目指すボルボのセーフティビジョンに基づいた、最高速度を設定するケアキーを導入しているのもニュースだ。


今回の試乗車にもチャコールとオレンジのレザーキー2つが用意されていて、オレンジの方がそのケアキー。設定はモニター画面上で行い、システムからケアキーを選んで制限速度を選べば、そのクルマの最高速度を決めることができる。クルマを共有するメンバーの中で、経験が浅かったり高齢だったりする人がいる際にはこれで利用して貸し出せば、速度超過による事故の確率を減らすことができるという考えだ。
また今回の試乗では試すことができなかったが、高速道路を一定速度で淡々と走るような場面では4気筒のうち1番と4番のシリンダーが停止するCDA(シリンダー・ディ・アクティベーション:気筒休止)による2気筒走行ができ、燃費が大きく改善されるという。


日本のスタッフによるテストでは、気筒休止がフルに働いた場合平均で17km/ℓ、最高で20km/ℓまで伸びたという報告がある(試乗車のWLTCモード燃費は12.5km/ℓ)。こうなってくると、低速トルクがあって経済的といわれたディーゼルエンジンとの差がなくなり、逆に排気ガスやガラガラという騒音(その音がノスタルジックでいいという方もいらっしゃるが)というディーゼルのデメリットが目立ってきてしまうのだ。
ボルボのモデルラインアップを見渡して気がついたのは、ボルボの21YモデルのXC60、XC90にはディーゼルがなくなっていて、XC40には元々日本に入ってきていない。S60、V60も同様で、全てPHVやMHVに入れ替わっている。わずか5年ほど前には主力のコンパクトモデルV40をはじめ、S、V、XCの60など、7割近くがD4等のディーゼルエンジンだったのに、例のディーゼルゲートを発端にして全車電動化を目的にして一気に舵を切ったのがボルボなのだ。



全長4.5メートル前後で価格が400万〜600万円前後のコンパクトSUVは、メルセデスGLA/GLB、BMW X1/X2、アウディQ3/Q3SBなどライバルが多いジャンル。コアバリューである「安全」と、サステナビリティなどの「環境への配慮」、さらに雰囲気のある「北欧テイスト」を前面に押し出した電動化モデルのXC40は、ドイツ御三家とは異なった魅力を放つモデルとして、選択肢のかなりいいところに入っていくはずだ。
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