軽スペシャリティ、ダイハツ コペンを試す|Daihatsu
CAR / IMPRESSION
2015年5月13日

軽スペシャリティ、ダイハツ コペンを試す|Daihatsu

Daihatsu Copen Robe|ダイハツ コペン ローブ

軽スペシャリティ、ダイハツ コペンを試す

軽自動車という日本独自のジャンルに生まれたオープンスポーツカーのなかでも、電動式ルーフとクラシカルなルックスで人気を集めた「コペン」が第2世代に生まれ変わった。先代とは大きくスタイリングのイメージを変えた新型コペンを河村康彦氏が試乗した。

Text by KAWAMURA YasuhikoPhotographs by HANAMURA Hidenori

軽自動車規格ならではの魅力

今、ここで目にされているCARのコーナー――それが、OPENERSというメディアに相応しく、プレミアムなモデルを厳選して扱うスペースであるのはお気づきだろう。

そうは言っても、そんなこの場は「ガイシャなら扱い、日本車だったら扱わない」などという狭い了見に基づいたものではない。その証左のひとつが、数多ある高級・高額プレミアムモデルのあいだに割って入っての登場となった今回のこのモデル。それは何と、“黄色いナンバー”が燦然と輝く「軽自動車」だ。

今や日本の新車販売台数中の、約4割のシェアを占めようという軽自動車。それが、まずは自動車税の安さを筆頭とした維持費の低さゆえに強い支持を獲得しているのは、事実だろう。

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

くわえて、各メーカーの技術や商品力の向上により、それが見ても乗ってもひと昔前のような“我慢グルマ”ではなくなったという点にも、魅力を感じる人は多いにちがいない。日本独自のカテゴリーに属するこうしたモデルたちがターゲットとするのは、「品質や見た目の質感に対しては世界一厳しい」とされる日本の市場のみ。 

結果として、いわゆる新興国を中心とするグローバルマーケットも意識した昨今のコンパクトカーなどよりも、むしろインテリアの質感などは上を行くようになったという現実も、その人気ぶりに少なからず影響を及ぼしているにちがいない。

人口減少や“若者のクルマ離れ”などが報じられ、勢い、より大きな成長が見込める海外のマーケットに開発や販売の軸足を移しつつある日本のクルマたち。が、そうした状況のなかにあっても軽自動車だけはハナシは別なのだ。「軽自動車は日本だけで通用する“ガラパゴスCAR”」との揶揄にも一理はある。が、こうしてガラパゴスであることのメリットも、実は無視できないはずだ。

Daihatsu Copen Robe|ダイハツ コペン ローブ

いっぽうで、そこにマーケットが存在すると判明をすると、たちまち「誰も彼もがおなじものを作り始める」というのは、日本のマスプロ製造業の不甲斐ないところ。クルマの世界でも、軽自動車はその最たるもの。

右を見ても左を向いても“おなじような背の高い箱型車が溢れている”のは、残念ながら日本ではもうお馴染みの光景だ。

Daihatsu Copen Robe|ダイハツ コペン ローブ

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世界唯一の電動オープントップ付きコンパクト2シーター

だからこそ、「良くぞ生まれて来てくれた!」と、まずは発売そのものに対して賛辞を送りたくなるのが、ここに採り上げる新型「コペン」だ。かくもコンパクトなのに2シーターのスポーツカー。その上で、リトラクタブル式の電動オープントップ付き――というモデルは、もちろん世界でもこれ1台しか存在しない。

3,395×1,475mm――そんな軽の規格枠いっぱいの全長と全幅サイズは、その他もろもろの売れ筋モデルたちと変わるところはない。いっぽうで、わずかに1,280mmしかないこのモデルの全高は、数ある軽自動車のなかにあってももはや「異常」と言うべき低さだ。ほかの全ての軽自動車が参加をする“広さとの戦い”からひとり決別したコペンは、だからすでにこの時点で“孤高の存在”となる。

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

まるでお椀を伏せたような極端に丸味を帯びたスタイリングの従来型からすると、新型のルックスは一変をした。それは当然、従来型に好意的な気持ちを抱いてきた人々からは、「どうしてイメージを踏襲してくれなかったのか」と、そんなコメントが聞かれそうなものでもある。

事実、リサーチによれば従来型ユーザーからは、確かに不満の声も少なくはないという。いっぽうで興味深いのは、そんな従来型にはしがらみを持たない若い人からは、新型のスタイリングになかなか好意的な意見が多く聞かれるというポイントだ。

実は発売と時をおなじくして、ダイハツからはすでに近い将来追加をされる別デザインモデルの姿が公開されている。

丸型ヘッドライトを備えたそちらのルックスは、惜しまれつつ姿を消して久しい従来型の雰囲気を、明確に意識したものだ。

「気分によって“着せ替え”が可能」と、そうした面が強くアピールをされる新型の樹脂製アウターパネル構造。が、そうした特徴は、少量生産車であっても手軽にあたらしいデザインを提案しやすいという、そうした部分のメリットも大きいにちがいない。

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

Daihatsu Copen 第3のデザイン

ちなみに、外板のなかでもドアパネルだけは、一般的なスチール構造で樹脂製とはされなかった。「セキュリティを含めた安全性を考慮した結果」というのが、開発エンジニアよるその回答だ。

Daihatsu Copen Robe|ダイハツ コペン ローブ

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見られることを意識したインテリア

かくして、エクステリア デザインに対しては賛否両論が渦巻くことになりそうな新型コペン。いっぽうでそのインテリアは、オープンモデルゆえに“見られること”も意識したにちがいないデザインが、なかなかの存在感だ。

それはさすがに、「高級感溢れる」という仕上がりではない。スポーツカーとしてはステアリングホイールが大径に見えるのはちょっと“気分”ではないし、純正ナビを装着した場合、ダッシュボード中央にそのクラスターが無造作に盛り上がるのも、「もうちょっと何とかならなかったのか」と、正直そうおもえる部分だ。

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

けれども、上部にフェイスレベルの噴き出し口を配し、その下に空調スイッチ類をシンプルで扱いやすくまとめた縦長のセンターパネルは、機能的であると同時に見た目もなかなか個性的。カーボン調のインパネガーニッシュも、実物は意外なほどに質感が高い。

軽いバケット風デザインのシートに、標準でヒーターが内蔵されたところも、なかなか分かっているナ、という印象だ。実は涼しげな見た目とは裏腹に真夏の直射日光下でルーフを開くのは、オープンカーではほとんど“自殺行為”。いっぽうで、「ちょっと寒い」くらいのなかを、身の回りを暖かさにくるまれながら走るのが、もっとも快適で気分が良いものだ。

となると、シートヒーターはそんな快適に走行できる時を、初冬にまで延長してくれる重要なアイテム。もちろん春も、桜の季節になればじゅうぶん「開いてみようかな」という気持ちになれるものだ。

Daihatsu Copen Robe|ダイハツ コペン ローブ

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スポーツカーを名乗るにふさわしい走りの実力

ルーフ閉じの状態のコペンに乗り込んでみると、さすがに居住空間はかなりタイトだ。常に一緒に過ごしていたい彼氏と彼女という組み合わせか、はたまたもう気心の知れあった夫婦同士か――いずれにしても、お互いの息遣いが聞こえるくらいの近くにいても抵抗のないふたり同士でないと、このスペースで長時間を過ごすのはちょっと辛そうだ。見方を変えればそんな新型コペンのキャビン空間というのは、あくまでも“1+1レイアウト”に過ぎないのだ。

いっぽう、リトラクタブル式ルーフを備えるモデルが例外なくそうであるように、ルーフ閉じ状態でのトランクスペースは、驚くほどに広い。それもそのはずで、そもそもここはリアウインドウ部分とルーフトップ部分を畳んで収納する空間。ルーフを開けば荷物のためのスペースは極端に減少するが、ルーフ閉じの状態では新型コペンは、ふたりで数泊の旅行に出掛ける程度の荷物は楽々と積める“GTカー”的要素もしっかり備えるというわけだ。

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

くわえて、自身で「スポーツカー」を謳うこのモデルは、走りの実力もそんなフレーズがじゅうぶん納得できる仕上がりぶりだ。

ターボ付きの心臓を搭載するとはいえ、加速力は軽自動車の常識内に留まる。スイッチひとつ、およそ20秒でクーペからオープンへと遂げる凝ったルーフシステムを備えるゆえ、飛び切り軽量というわけではないから、絶対的な加速力そうたいしたものではない。

非凡なのはフットワークの仕上がりで、これは入念に設計されたシャシーや、ほかの軽自動車にはあり得ない低重心デザインが、しっかり効いている印象だ。無駄なボディの動きが抑えられ、フラット感もおもいのほか高い。すなわち、快適性もなかなかということだ。

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

そのフットワークが高い実力を備えることは、ワインディングロードをちょっとやそっと攻めた程度では、トラクションコントロールやスタビリティコントロールなどが簡単には介入してこない点にも証明されている。

実際、ミニサーキット風のコースで限界走行へと挑んでも、まずスピンやドリフトアウトの兆候を示さないのは確認済み。いっぽうでルーフを開くとボディの剛性感はそれなりに明確にダウンする。

ワインディングロードを、本格スポーツカーとして攻め込みたい――そんな場合は、ハンドリング感覚もより正確性を増す“クローズドモード”がお薦めだ。

Daihatsu Copen Robe|ダイハツ コペン ローブ

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スモールカーのプレミアムモデル

いっぽうで、一旦停止の後にセンターコンソール上のスイッチを押しつつ待つこと20秒ほど。まずはリアリッドが大きく跳ね上がり、そこにリアウインドウ部とトップ部を折り畳みながら格納、という大仰なプロセスと共に、”オープン化”を果たしたこのモデルが提供してくれる開放感の高さは、何ものにも換え難い。

「新型では、エアロダイナミクス性にもこだわった」という成果は、高速走行時の安定感向上のみならず、オープン時の空気流にも実感できる。60km/hを超えるあたりから確かに“風”は感じるものの、サイドウインドウを上げればそれは頭頂部に限定。オープンモデルならではの爽快感は保ちつつ不快な髪の乱れを起こさないのは、しっかりと“空力チューニング”が図られた結果であるはずだ。 

Daihatsu Copen Robe|ダイハツ コペン ローブ

Daihatsu Copen|ダイハツ コペン

軽自動車でありながら、その価格およそ180万円。そんな新型コペンに対して「高過ぎる」という声が聞かれるのは、ある程度予想ができる事柄だ。

けれどもそれは、受け取る人の価値観次第。クーペと同等の耐候性とスポーツカーならではのソリッドな走り味を備えたクローズドモードと、爽快なオープンエア ドライビングを堪能できるオープンモードというふたつを、スイッチひとつでチョイスが可能。そんなモデルが、200万円を大きく割り込む価格で手に入るとなれば、「それは夢のようにリーズナブル」と感じる人も、もちろん少なくないはず。

とにもかくにも、こうした存在は世界にひとつしかない――日本の、それも軽自動車のなかからそんな“プレミアムなモデル”が誕生したことを、まずは理屈抜きでうれしくおもう。

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Daihatsu Copen Robe|ダイハツ コペン ローブ
ボディサイズ|全長 3,395 × 全幅 1,475 × 全高 1,280 mm
ホイールベース|2,230 mm
トレッド 前/後|1,310 / 1,295 mm
重量|(5MT)850 kg (CVT)870 kg
エンジン|658 cc 直列3気筒 DOHC インタークーラーターボ
ボア×ストローク|63.0 × 70.4 mm
圧縮比|9.5 : 1
最高出力| 47 kW(64 ps)/ 6,400 rpm
最大トルク|92 Nm(9.4 kgm)/ 3,200 rpm
トランスミッション|5段MT / CVT
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|トーションビーム
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ドラム
タイヤ 前/後|165/50R16 75V
燃費(JC08モード)|(5MT)22.2 km/ℓ (CVT)25.2 km/ℓ
価格│(5MT)181.98万円 (北海道地区)183.06万円
(CVT)179.82万円 (北海道地区)180.9万円

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