フォードのコンパクトSUV、エコスポーツに試乗|Ford
CAR / IMPRESSION
2015年1月29日

フォードのコンパクトSUV、エコスポーツに試乗|Ford

Ford ECOSPORT|フォード エコスポーツ

実用性と遊び心のバランス

フォードのコンパクトSUV、エコスポーツに試乗

フォード・ジャパンが2014年4月より日本に導入しているコンパクトSUV「エコスポーツ」は、大胆なルックスをもつ、人気のコンパクトクラス、Bセグメントに属するモデルだ。フォードが世界戦略として推し進めている「One Ford」コンセプトのもとで開発されたグローバルプロダクトシリーズの第4弾という国際派でもある。

Text by SAKURAI KenichiPhotographs by MOCHIZUKI Hirohiko

十分なパワーとユーティリティ

大きなグリルに背の高いフォルム。一見ではサイズ感が読み取れないが、じつはこの「エコスポーツ」は、「フィエスタ」同様フォードのBカープラットフォームがベース。フィエスタのボディサイズが全長3,955×全幅1,720×全高1,475mmであるのに対して、エコスポーツは4,195×1,765×1,655mm。ならべてみるとSUVだけあって車高の高さは如実だが、かなりコンパクトに仕上げられているのがわかる。

ただし、おなじプラットフォームを使用してはいるものの、パワートレインはフィエスタとことなり、こちらは最高出力82kW(111ps)、最大トルク140Nm(14.3kgm)の1.5リッターのオール アルミニウム4気筒DOHCエンジンを搭載。自然吸気で、フォードの次世代低燃費エンジン、いわゆるエコブースト(ターボ)エンジンではない。とはいえ最新のTi-VCT(吸排気独立可変バルブタイミング)を装備し、フォードがデュアルクラッチ テクノロジーと呼ぶトランスミッション、「6段パワーシフト(DCT=デュアルクラッチトランスミッション)」が組み合わされるため、キビキビとした走りが味わえる。

Ford ECOSPORT|フォード エコスポーツ

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余談だが、フォードの現行グローバルモデルはいずれも 最新のB-carないしC-carプラットフォームに、最新のパワートレインを組み合わせ搭載しているが、「フィエスタ」「エコスポーツ」「フォーカス」そして「クーガ」とこれら4車種とも、ひとつとしておなじパワートレインとシャシーの組み合わせがない。

仕様はそれぞれの車格やキャラクターに合わせ決定されているので、エンジンとトランスミッションにおなじ組み合わせがないというのが、こだわりでありユニークなところなのだが、クルマを選ぶ際には少々ややこしい。参考までに、フィエスタは74kW(100ps)の1.0リッター直列3気筒エコブースト(ターボ)+6段DCT、エコスポーツは前述のとおり82kW(111ps)の1.5リッター直列4気筒(NA)+6段DCT、フォーカスは125kW(170ps)の2リッター直4(NA)+6段DCT、そしてクーガは132kW(182ps)の1.6リッター直4エコブースト(ターボ)+6段ATという組み合わせである。

「フォードの社内に車重や車種、キャラクターの性格などによる独自のパワートレイン採用基準があり、おなじプラットフォーム同士だからといって、共通のエンジンやトランスミッションを採用するとは限らない」とは、フォード・ジャパン関係者の弁。つまり、「このエンジンがあるから、この車種にもこれを使おう」という簡単な企業論理の上に成り立った選択ではないのである。走りにも影響を及ぼすこうしたパフォーマンスへのこだわりこそが、おなじメカニズムを使用しコストを抑えるよりも、まずは優先されるべき要求項目なのだ。


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実用性と遊び心のバランス

フォードのコンパクトSUV、エコスポーツに試乗 (2)

キャラクターに合わせた自然でなめらかなエンジン

エコスポーツとフィエスタ、この両車のちがいは走り出してすぐに気づくはずだ。フィエスタが低速から湧き上がるようなトルクとともに加速するのに対して、こちらは小気味よくエンジンが回り、それに速度が付いてくるといった印象。いかにも自然吸気エンジンのもつ走りといった滑らかな加速感で、シフトダウンを強要しても、唐突な加速などはない。あくまでもそれは控えめであり、ドライバーが求めただけの予想を裏切らないパワーをもたらすというフィーリングである。

いったん走り出してしまえば、1.5リッターの排気量、しかも自然吸気エンジンとはおもえないトルクのツキは、「吸気側と排気側を独立して低回転から高回転まで理想的なバルブ開閉タイミングを実現することでもたらされたもの」とフォードは説明する。

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確かにフィエスタのわずか1リッターで74kW(100ps)を発生させるエコブーストエンジンがもたらすパワフルな動力性能は魅力だが、SUVというキャラクターを考えれば、スロットルペダルの入力に対する自然な反応や、加速力には不満はない。デュアルクラッチトランスミッションのレスポンスの良さが、数値的な物足りなさをしっかりとフォローし、1,270kgの車重に対し十分といえるパフォーマンスをもたらしてくれる。

SUVだけにドライバーのアイポイントは高いのだが、ドライビングにおける違和感はない。コーナリング中でもボディとステアリング操作の乖離はなく、他のフォード車のような一体感は健在。シャシー剛性が高く、同時にステアリングの動きに対しボディが遅れずについてくるのはこのクルマの美点。一般的な車高のコンパクトカーからの乗り換えでも戸惑うことは少ないはずだ。


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フォードのコンパクトSUV、エコスポーツに試乗 (3)

FFながらオフロードも十分な走破性

気になるオフロード性能は、FFであっても十分な走破性を持つことを今回の試乗で確認できた。試乗コースの中にちょっとしたオフロードセクションが盛り込まれており、スリッピーな路面を持つアップダウンの激しいコースでも難なくクリアできた。180mmと、本格SUV並の最低地上高を確保したことにくわえ、しっかりしたボディとよく動くサスペンションによるグリップ力のおかげだ。

Ford ECOSPORT|フォード エコスポーツ

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オフロード性能を測る上で気になるアプローチアングルとデパーチャーアングルは、それぞれ25度と35度を確保。万が一の際は水深550mmまで走行できるよう、エンジンルーム内の電装系統や空気取り入れ口のレイアウトも工夫されているのだという。もちろん本格的なガレ場や泥濘路では4WDに敵わないだろうが、ゲレンデに向かう雪道やキャンプ場など、レジャーの範囲であれば申し分ないパフォーマンスを持っていると紹介できるものだ。

いまどきはSUVであっても前輪駆動というモデルが少なくない。タウンユースがメインという使い方の場合、日常での使い勝手や燃費を考えれば有利であることのほうが多いからだ。実際に北米でもSUVを選ぶユーザーの半数以上が2輪駆動をチョイスするというハナシもあるぐらいなので、もしも本格的な4WDは欲しいのならば、特にSUVのリーディングブランドたるフォードの場合は、ほかに選択肢がいくらでもあるということだろう。

事実、SUVでありながら、リッターあたり14.5km(カタログ値)という低燃費性能もまた、Bセグメントモデルとしてのエコスポーツの魅力だろう。


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フォードのコンパクトSUV、エコスポーツに試乗 (4)

タフでインパクトのあるSUVスタイル

コンパクトカーのサイズにSUVとしての機能性やFFながら不満のない走破性にくわえ、十分なロードクリアランスを持った車高、リアゲートにスペアタイヤを備えるエクステリアデザインは、道具としてのタフなイメージに溢れている。台形をモチーフとしたフロントの大型グリルは、フォードのグローバルモデルに共通するアイコンで、ひとめでフォード ブランドと分からせる役割を担う。

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金属の塊から削りだしたような硬質なイメージと、そのボディに対して少し大きめな205/60R16サイズのタイヤを四隅に配置した安定感あるフォルム、そして背面のスペアタイヤは、いかにもSUV然としたモノだ。ボディ全体で、道を選ばないオールラウンダーとしての機能性が存分に表現されている。

背面にあるフルサイズのスペアタイヤは、ルックス上このクルマのキーとなる装備だが、しかし後退の際などに邪魔に感じる場合もあるだろう。その点、エコスポーツには、車両後方障害物を感知するリバースセンシングシステムが装備されているので、実用上のビハインドは少ない。バックをアシストしてくれるこの装備は、日常使用においてドライバーのストレスを大幅に軽減させてくれるはずだ。


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フォードのコンパクトSUV、エコスポーツに試乗 (5)

使い勝手のよいインテリア

右側のリアコンビネーションランプと一体化したデザインに隠されたレバーを引き、リアゲートを開けると、5人乗車時333リッターの容量を確保した高さのあるラゲッジスペースが現れる。コンパクトなボディからは想像できないその空間は、スペアタイヤを背面搭載することによって確保されたものだ。さらに60:40の分割可倒式となるリアシートをダブルフォールディングで折りたためば、容量は最大1,238リッターにまで拡大する。キャンプ道具一式や自転車、買い物の際は家具や大型家電までも飲み込んでくれそうだ。

Ford ECOSPORT|フォード エコスポーツ

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エコスポーツの車内には、小物入れが20ヵ所も用意されている。細かなことだが、日常の使い勝手を向上させるユーザーサイドに立ったこうした配慮は、行動範囲の広いアクティブなSUVオーナーのみならず、日々クルマを使うものにとって実にありがたいと感じられる。

センターコンソールにふたつのドリンクホルダーを設置したほか、ドアポケットにもペットボトルが置け、またグローブボックスはクールド機能を持っているので、いつでも冷やした飲み物を楽しむことができる。さらに、シート下にあるスライド式の引き出しには、CDや車内に散らばりやすい小物類などが収められるようになっている。実際に使ってみれば、財布やサングラスのほかにも、スマホ、音楽プレーヤーなど身の回りの小物が増えた現代の生活において、「エコスポーツ」の車内は地味ながら確実にユーザー心理を捉えた設計だと感心する。

Ford ECOSPORT|フォード エコスポーツ

タフなキャラクターを前面に押し出したエクステリアデザインから、男性ユーザーが多いのかとおもっていたが、意外にも女性ウケもいいのだと、販売の現場は評判を語る。

「フィエスタ」を見にディーラーを訪れた女性ユーザーが、「エコスポーツ」のデザインにひと目惚れするケースが多いのだとか。確かに、女性がフィエスタに乗っている姿はごく自然だが、「エコスポーツ」をドライブしている姿は颯爽としていてファッショナブル。

女性が男性モノの腕時計を細い手首にしている姿にドキッとするのは、個人的な好みの問題だとおもいつつも、コンパクトなサイズでありながらしっかりした主張を持った「エコスポーツ」のデザインに女性がシンパシーを感じても不思議はない。それは街中でSUVに乗るというギャップにもどこか似ていて、実にカッコ良いものだと独りごちるのである。

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Ford ECOSPORT TITANIUM|フォード エコスポーツ タイタニアム
ボディサイズ│全長 4,195 × 全幅 1,765 × 全高 1,655 mm
ホイールベース│2,520 mm
トレッド前/後│1,520 / 1,525 mm
最小回転半径│5.5 m
最低地上高|180 mm
重量│1,270 kg
エンジン│1,497cc 直列4気筒 DOHC
最高出力│82 kW(111 ps)/6,300 rpm
最大トルク│140 Nm(14.3 kgm)/4,400 rpm
トランスミッション│セレクトシフト付電子制御6段パワーシフト(デュアルクラッチ)
駆動方式│FF
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / ツイストビームトレーリングアーム
ブレーキ 前/後│ベンチレーテッドディスク / ドラム
タイヤ│205/60R16
燃費(JC08モード)|14.5 km/ℓ
ハンドル|右
価格│246 万円

フォードお客様相談室
フリーダイヤル0120-125-175

           
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