マイバッハ S クラスをためす|Mercedes-Maybach
CAR / IMPRESSION
2015年1月21日

マイバッハ S クラスをためす|Mercedes-Maybach

Mercedes-Maybach S Class|メルセデス・マイバッハ S クラス

“メルセデス”の新ラグジュアリーフラッグシップ

マイバッハ S クラスをためす

メルセデス・ベンツのサブブランド「メルセデス・マイバッハ」として再出発を果たしたマイバッハ。Sクラスにくらべ、運転手付きを前提として後席を重視し、ラグジュアリーさに磨きをかけたモデルだ。11月のロサンゼルス モーターショーで発表されたばかりのこの「マイバッハ S クラス」に、小川フミオ氏がアメリカで早速試乗。“メルセデス”ブランドが放つ、最高のおもてなしクルマの出来をリポートする。

Text by OGAWA Fumio

復活した高級車のネーム

「最高のなかでも最高のクルマをつくる」。1930年代、ドイツにおいて超がつく高級車をつくっていたマイバッハのポリシーは、「あらゆる望みをかなえる究極のクルマ」だったという。

マイバッハのブランドコントロールをするメルセデスベンツが、2002年に発表したマイバッハ(57および62)が製造中止になったあと、ついにまたその名が、メルセデス・マイバッハとして復活した。

2014年11月開催のロサンジェルスオートショーで公開されたのが、メルセデス・マイバッハ「S クラス」。通常の「S クラス」より全長、ホイールベースともに200mmも延ばされ、後席のレッグルームは倍になったショファードリブンの4ドアサルーンだ。

Mercedes-Maybach S Class|メルセデス・マイバッハ S クラス

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その試乗会が、2015年1月、米カリフォルニア州サンタマリアでおこなわれた。海岸にもちかい丘陵地帯で、一帯はワイナリーが多いリゾートである。2月に発売予定のメルセデス・マイバッハ S クラスは、「S 600」と「S 500」が用意されるが、うちV12のS 600が試乗に供された。

試乗は最初、フリーウェイでの後席、そのあと自分でもステアリングホイールを握る機会があった。快適性と走行性においてSクラスの頂点に位置するS 600ロングとどう差異が出ているのか。それが興味の中心だった。結果は、かなりちがう独自のクルマになっていた。

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前席のシートバックがはるかかなたに

メルセデス・マイバッハが、かつてのマイバッハとちがうのは、今回から明確にメルセデスにおけるサブブランドとして位置づけられることだ。

メルセデスブランドには、従来どおりの「メルセデス・ベンツ」をはじめ、スポーティなモデルを手がける「メルセデスAMG」(やはり名称に変更を受けた)と、高級リムジンを手がける「メルセデス・マイバッハ」の3本柱で構成される。これがあたらしい点だ。

「高級装備と快適性において、まさしく最高の水準をきわめたクルマ」。メルセデスベンツカーズで営業およびマーケティング部門を統括するオラ・ケレニウス氏はそう語っている。

Mercedes-Maybach S Class|メルセデス・マイバッハ S クラス

スタイリングはS クラスとよく似ているが、プロファイル(サイドビュー)を見ると、Cピラーにクォーターウィンドウが設けられているのが目を惹く。

元来メルセデスは「ドライバーズカーをつくる」ことがモットーで、自動車のルールブックに忠実な同社では、ドライバーズカーは4ライト(ドア以外に窓をつけないスタイル)という定石を守ってきたからだ。

つまりメルセデス・マイバッハは、スタイリング的にもショファードリブンであることを明示したモデルである。

Cピラーで乗員を隠すようにしてプライバシーをつくり出すという後席空間は、スタイルは基本的にSクラスに準じたものだ。クロスステッチを施した、見た目もやわらかそうなレザーシートは表面に無数の通気用孔が開けられ、機能面でも配慮されていることがわかる。

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そこに腰を落ち着けるとSクラス ロングボディで166mmというニールームがこちらでは325mmに拡大されている恩恵がすぐ感じられる。前席のシートバックがはるかかなただ。通常の着座ポジションでは足を延ばしても爪先で触れることもできないかもしれない。

足元には毛足の長いカーペット。米国に導入されるメルセデス・マイバッハ S 600は少々乗り心地が硬くなるはずのランフラットタイヤを装着している(VIP用車両としては大事な装備だ)はずだが、足裏にいっさいの振動を感じない。バイブレーションや、足まわりに起因するハーシュネスの対策は万全だと感心する。

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圧倒的な空間

「量産車として世界最高の静粛性」とメルセデスが胸を張るだけあって、ノイズは足もとからも窓まわりからも頭上のルーフからもタイヤハウスからも聞こえてこない。これなら後席をショファーポジションといって、助手席シートバックを折りたたむようにするとともに、みずからのシートをうんと寝かせたポジションにして休息するのも快適そうだ。

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また、ゲストを空港まで迎えにいき、商談をするのもよさそうだ。移動中に自社のポートフォリオや、ビジネスの案件にまつわるデータをモニター画面で説明するのにも、声のボリュウムをことさら上げる必要はない。

アームレストに仕込まれた収納スペースには、ドイツの銀食器メーカー、ロッベ&ベルキング社のシルバーコーティングされたシャンパングラスが収まっている。シャンパンクーラーの存在の確認を失念してしまったが、なんだか楽しい演出だ。

S 600 ロングも飛行機のようなセンターコンソールを設けたリアシートが魅力的だが、くらべると、やはりスペースは圧倒的な差がある。もし知人からメルセデス・マイバッハ Sクラスの後席に招かれたS 600 ロングのオーナーがいたら、即刻買い換えを検討するかもしれない。

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ライバルはベントレー、ロールズ

さきにも触れたように、このクルマには335kW/455psの4.7リッターV8(のちに4MATICも追加)と、390kW/530ps の6.0リッターV12という2種類のパワープラントが用意されている。日本には両方入ってくるらしい。

しかしショファードリブンのクルマで、なぜ2種類のエンジンが必要なのだろう。極端なことをいえば、2リッター4気筒だっていいような気もする。その質問をプロダクトストラテジーを担当するヨハネス・ライフェンラト氏に投げかけると、にやりと笑って「事実としてはそうでしょうが、こういうクルマのオーナーは“もっともいいものに乗っている”というイメージを大事にするのですよ」と答えてくれた。

たしかにイメージ的には、気筒数が多ければ多いほど高級という古来の価値観はいまだに世界中で健在だ。「このクルマは運転していて楽しいですよ」というショファー会社の米国人ドライバーは教えてくれたが、自分で操縦するとそのとおりだった。

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1,900rpmから830Nmもの最大トルクを発生するV12のおかげで、メルセデス・マイバッハ Sクラスは意外なほどパワフル。ステアリングの入力に対する車体の反応は速く、サンタマリアのワイン畑を縫うようなワインディングロードを走るのも、楽しさを感じるほどだ。

日本では3,000万円を切る価格だそうだ。ライバルはベントレー「フライングスパー」(2,415万円)あたりだろうか。ブランド的にはロールスロイスもマイバッハの競合で、「ゴースト シリーズII」(3,132万円)だろうか。

メルセデス・マイバッハ Sクラスのライフェンラト氏は、「このクルマにはレーダーセーフティパッケージ、マジックボディコントロール、ナイトビューアシストなど、安全と快適のためのパッケージが充実しています。バリューフォーマネーの点でもライバルとは一線を画します」と誇らしげに語っていた。

           
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