TOYOTA SAI|トヨタ・サイ(前編)|プリウスでは満足しない上級志向の顧客へ
TOYOTA SAI|トヨタ・サイ(前編)
プリウスでは満足しない上級志向の顧客へ
一時は18万台のバックオーダーを抱えるなど、空前の大ヒットを記録したトヨタ・プリウスだが、トヨタはその上位に位置するハイブリッドカーも用意していた。12月7日に発売となったSAI(サイ)に自動車ジャーナリスト、小川フミオが試乗した。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
取り回しのしやすい軽快感
高級感のあるハイブリッド車。それがトヨタ自動車が2009年12月7日に発売したSAI(サイ)だ。車型がセダンで、かつ高級感をもたせているのが特徴。レクサスHS250hとシャシーを共用しながら、トヨタ独自の味付け。インテリアなどはまったくあたらしいデザインが採用されている。
SAIは「才に満ちた先進性と彩を放つ上質感」からとった車名といい、環境性能にくわえ、走りと作りのよさで、従来のトヨタ・ハイブリッドモデルに満足しない上級志向の顧客へのアピールをはかったクルマだ。エンジンは2.4リッターのガソリンにTHS Ⅱと呼ばれるトヨタのハイブリッドシステムを組み合わせている。グレードは16インチタイヤで乗り心地重視の「S」(338万円~)と、18インチタイヤでよりスポーティな「G」(380万円~)の2タイプが用意される。
SAIは7月14日に既発のレクサスのハイブリッドセダンHS250hと、シャシーをはじめエンジン、トランスミッションなどを共用するBいっぽう、サスペンションの設定、スタイリング、室内デザインなどは独自のコンセプトに基づいており、HS250hと比較して全長で95mm短く4605mmとなる。おもにトランクが短くなったせいだ。かつ、「大きなちがいは“軽さ”」と開発者は言う。ハンドルの重さを較べてもレクサスHS250hより軽めの設定。「取り回しのしやすい軽快感」を狙ったためとトヨタでは説明する。
エコプラスチックでCO2排出量を抑制
SAIのエンジンは2.4リッター直列4気筒で、吸気バルブを閉じるタイミングを遅らせることで高効率化と低燃費化をはかれるアトキンソンサイクルを、プリウスやレクサスHS250hと同様に採用している。トヨタ独自の方式に従ってリダクションギアを介してエンジンと組み合わされる電気モーターは単体で143ps、システム全体として190psの最高出力となる。プリウスなどと同様に、電気モーターのみで走行する「EVドライブモード」なども装備される。
もうひとつ、SAIにおいて環境面から特筆すべきは、「エコプラスチック」を室内表面積60%に採用している点。トウモロコシのコーンスターチなど植物由来の原料と石油由来の原料を複合化技術によって合成樹脂化、それを天井、ピラーガーニッシュ、サンバイザーなど多くの部位に使用している。この新素材の採用によって「CO2排出量の抑制と石油資源の使用量削減」をはかったとメーカーではしている。
さまざまな面で環境適合をはかったとされるSAIは、同時にスポーティな走りを追求したことも訴求ポイント。エンジニアは、ハイブリッド車ではどうしても高くなりがちなロールセンターを下げ、コーナリングのよさを追求したという。軽くした、とトヨタではいうが、従来のトヨタ車に較べれば重さを感じるハンドルも、低速域から高速域まで欧州車を思わせる適度な重さを維持しつづけるようしつけられている。ハイブリッドは燃費、メーカーが「コンベ」(コンベンショナル=従来式の意)と呼ぶガソリン車はハンドリング、といった図式を切り崩し、いいところを融合させようという試みとみることもできる。