TOYOTA SAI|トヨタ・サイ(後編)|プラス600ccのアドバンテージ
TOYOTA SAI|トヨタ・サイ(後編)
プラス600ccのアドバンテージ
一時は18万台のバックオーダーを抱えるなど、空前の大ヒットを記録したトヨタ・プリウスの上位に位置するハイブリッドカー、SAI(サイ)。後編では、主に試乗しての印象を中心にお送りする。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
お薦めグレードは「S」
運転してみると、SAIのよい点はプリウスよりエンジン排気量が600ccも多いぶん、トルクがたっぷりあって力強く、加速にもすぐれるところ。室内騒音もだいぶ低い。個人的にはけっこうコストダウンでがっかりだった3代目プリウスと比較すると、やはり価格差も大きいぶん出来のよさを感じる。それはハンドリングをふくめた乗り心地でもいえる。ただし、18インチタイヤ装着車「G」の乗り心地はめっぽう“硬い”。タイヤサイズが215/45と扁平率が低く、サイドウォールが硬いためだろう。路面に不整があると、大きな衝撃が伝わってくる。
いっぽう16インチタイヤの「S」は、乗り心地は快適。「16インチタイヤ装着車を標準車として開発した」とトヨタでは語るように、自然な感覚で、どこにも無理がない。個人的なお薦めは断然こちら。かつタイヤ径が2インチ小さいぶん、小回りも効いて、街中の取り回しのよさでも「G」よりすぐれる。
ハイブリッド独自の電気モーターによる加速感は俊敏な印象を受けるし、快適志向がやたら強い年配者向けのクルマではない。このようにバランス点をどこにとるかが、これからのハイブリッド選びの基準になりそうだ。ハイブリッドシステムによる環境適合性にくわえて、たとえばドライブの楽しみをとるか、4WDによる高機能性をとるか、そういうことだ。
シンプルで機能的なインテリア
SAI では、あたらしい意匠のダッシュボードも特徴だ。スイッチの数やクロームなどの加飾とよばれる飾りを極力減らしてシンプルさを強調。リモートタッチとよばれる、コンピュータのマウスのようなコントロールを設けて、そこにナビゲーション、オーディオ、エアコンなどの操作を集約。くわえてステアリングホイールボスのスイッチとで、従来のボタンによる操作の代わりをさせている。開発したエンジニアは「左手と(前方道路からの)視線の移動が少ないモニター画面で基本的な操作ができるようにした」と話し、いわゆるユニバーサルデザインの視点もここに活かされているということだ。
電気モーターを内蔵したリモートタッチの操作性のよさは、デザインこそちがえレクサスRXですでに実証ずみ。ポインターが吸い込まれるように動くので画面を注視する必要がないのも安全性の高さにつながっている。指先への操作反力は好みで5段階から選べる。ほかの分野の技術でもそれがよいものであれば自動車に取り込むという考え方は評価したい。
ちなみに今回は長距離の試乗の機会がなかったので、実際の燃費について書くことができない。メーカー発表値では10.15モードがリッター23km、コールドスタート時も測定にふくんだり、速度を10.15モードの70km/hから80km/hにひきあがるなど、より実際の使用条件に近いJC08モードでは 19.8kmとされている。これは参考までに。
TOYOTA SAI|トヨタ・サイ
ボディ|全長4,605×全幅1,770×全高1,495mm
エンジン|2,362cc 直列4気筒DOHC
最高出力|110kW[150ps〕/6,000rpm
最大トルク|187Nm[19.1kgm〕/4,400rpm
電動モーター|交流同期電動機
最高出力|105kW〔143ps〕
最大トルク|270Nm[27.5kgm〕
駆動方式|前輪駆動
トランスミッション|電気式無段変速
価格|338万円~