7代目ゴルフ最強の「ゴルフR」に試乗|Volkswagen
Volkswagen Golf R|フォルクスワーゲン ゴルフ R
どんな使い道にもこたえてくれるオールマイティな一台
7代目ゴルフ最強の「ゴルフR」に試乗
7代目「ゴルフ」に、シリーズ最強となる「ゴルフR」が登場した。エンジニアリングを担当したのは、WRCなどレースの舞台で活躍する「フォルクスワーゲン R GmbH.」。コンパクトなボディに280psものハイパワーと、4WDシステムを組み合わせたこの新型には、フォルクスワーゲンの、もうひとつのちからが凝縮されている。小川フミオ氏が試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by NAITO Takahito
280psと4WDシステムの組み合わせ
Rの名をもつ、ゴルフの最高峰、フォルクスワーゲン「ゴルフR」(510万円)が登場した。フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンが、2014年2月20日から発売開始した新型は、先代より25馬力高められた280psのハイパワーに、4WDシステムが組み合わされている。
ゴルフRは、シャシー、サスペンション、エンジン、それにドライブトレインが専用にチューニングされた特別なモデル。レースの頭文字をほうふつさせるサブネームは、特別なモデル開発を担当するフォルクスワーゲンR GmbH.に由来していると説明される。走らせるたのしみと、特別な内外装と、高い安全性と、環境適合性とを、高い次元でバランスさせた仕上がりになっている。
新型ゴルフRは、7代目ゴルフシリーズと同様のMQBと呼ばれる新世代のプラットフォームをもつ。構成を簡単に説明すると、ターボチャージャーをそなえた2リッター4気筒エンジンに、多板湿式クラッチをつかう4WDシステムが組み合わされている。エンジンは「随所にモータースポーツ用エンジンに匹敵するチューニングをおこなっています」とフォルスクワーゲン(以下VW)が説明するように、ハイパワーのための徹底したチューニングがほどこされている。
排気バルブ、バルブシート、バルブスプリングを含むシリンダーヘッド、ピストン、高圧インジェクター、ターボチャージャーなどは、今回、あらたに設計あるいは設計の変更がほどこされたものだ。結果、排気量はおなじでも、先代より最高出力は24psアップして280psに、最大トルクは50Nm増えて380Nmになっている。
燃費の面では、アイドリングストップ機構であるStart/Stopシステムの採用と、ブレーキエネルギー回生システムからなるブルーモーションテクノロジーの採用がある。これにより燃費は、先代の12.4km/ℓ(10・15モード)から14.4km/ℓ(JC08モード)へと向上したとVWではしている。2つのモードでは後者のほうがより現実的な計測方法を採るので、数字以上に燃費は向上しているとみてよいだろう。
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すべてがドライバーの監督下にある
「4MOTION」の名を継承する4輪駆動システムは、ハルデックスの第5世代が採用された。電子油圧制御式オイルポンプで多板クラッチの接続圧力を制御することで、前後輪へのトルク配分をおこなう。
高速道路巡航など低負荷の路面では前輪のみ駆動して燃料消費を抑えるいっぽう、コントロールユニットに内蔵されたドライビングステイタス認識システムは、ホイールスピードやステアリングアングルなどを分析して最適な前後のトルク配分をおこなう準備が、つねにおこなわれていると説明される。
加速時のアクセルペダルの踏み込み量に応じて後輪をどれだけのちからで駆動するか判断したり、カーブを曲がるときに、外側や内側に軌跡がふくらんだりしないように左右輪のトルク配分を瞬時に変化させる。これらもコンピューターをつかって最適制御されている。
電子制御ディファレンシャルロック(EDS)と、高速コーナリング時に内側のホイールにブレーキをかけるXDSといった装備が、つねに最適な力を前後左右4つの車輪に分配されるよう働いている。結果、280psという数値から期待できるパワフルな走りを、自然な運転感覚でたのしめるようになっている。
先述のフォルクスワーゲンR GmbHが手がけたという座り心地のいいシートにからだをあずけて、走り出した瞬間から、ゴルフRの魅力は、雷に打たれたように、手と足という末端の感覚器官から瞬時に心に届く。
1,800rpmから380Nmもの最大トルクを発生しはじめるエンジンは、力強く車体を押し出す。そのとき、やや重めの設定のステアリングホイールには路面の状況が繊細な感覚で伝わってくる。すべてがドライバーの監督下にある。そんなすばらしい気分がいっきに襲ってくるのだ。
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日本仕様はDCCを標準装備
新型ゴルフRの内装は、先代より控え目な印象だ。先代はレーシングカーをおもわせるバケットタイプのシートをそなえていたり、各所にレースとの関係をうかがわせる視覚的な演出がほどこされていた。
しかし新型は、シートはレザー張りのクッションの厚いタイプとなり、バックレストに控え目にRというアルファベットがエンボスで浮き上がっているのみだ。
その点ではやや拍子ぬけするものの、キャラクターがおとなしくなったわけではないのは、これまで触れたとおり。
先代も完成度が高いスポーティなモデルだったが、新型の、テールパイプを左右2本ずつ出したすごみあるリアビューは見かけ倒しでない。ドライバーの感覚と直結したような、一瞬のタメもないほど俊敏な加速と確実ですばやい減速。それに、自動車ジャーナリズムが「レールに乗ったような」と表現する、ブレなくカーブを曲がっていける、見事なハンドリング能力は、先代を超えるレベルに引き上げられているのだ。
日本仕様のゴルフRは、電子制御式サスペンションに熱心に取り組んでいるVWの志向を反映して、ダイナミックシャシーコントロール(DCC)を標準装備している。
「エコ」「ノーマル」「インディビデュアル」「コンフォート」、それに R専用の「レース」という5ついのモードが選択できる。レースモードは、ダンパーの減衰力が高められ、エンジンの応答とDSGのシフトポイントが上がる。
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レースモードを維持すればいい
ゴルフRで感心したのは、とりわけレースモードのできのよさだ。運転席から見えにくい(これは問題)位置にあるボタンでモード切替画面をモニターに呼び出し、そこから選択する。この二度手間がややわずらわしいが、ノーマルからレースに切り替えると、ギアが下がり、もっとも大きなトルクが得られるエンジン回転数を維持しようとする。
このレースモードは、加速も鋭くなり、カーブでの車体の傾きは抑えられ、運転を積極的にたのしみたいときに最適なのだが、いっぽうで、乗り心地が犠牲になるわけでもなく、市街地でもこのモードで充分だ。
燃費のために、エンジン、エアコン、そのほかの補機類などの作動が制限されるエコモードを選ぶなら、それを止めないが、ゴルフRのダイレクトな操縦感覚を堪能しようというなら、モード切り替えにわずらわされずレースモードを維持すればいい、とおもえた。
もうひとつ、大書きしておきたいのは、効きのよいブレーキだ。ブレーキピストンの直径は、フロントが60mmで、リヤは42mm、ブレーキディスクは、フロントが直径340×厚さ30mm、リヤは直径310×厚さ22mmとなっており、踏み込む力に応じて繊細に効く。これだけでも、ゴルフRには大きな価値があるとかんじられるほどだ。
ゴルフには「GTI」という、スポーティなモデルが伝統的に設定されているが、走りをたのしみたいなら、このゴルフRにとどめをさす。ゴルフRには、日本ではあまり知られていないが、WRCなどモータースポーツにも熱心に取り組んでいるフォルクスワーゲンの、もうひとつのちからが凝縮されている。GTI(369万円)より値は張るが、選ぶ価値があるとおもう。
スポーツカーはドライバーを鼓舞して、もっと速く走れ、というようなところがあるが、ゴルフRは、それほど雄弁ではない。
ドライバーへの語りかけは多くはないが、求めれば、求めただけを与えてくれるクルマだ。速く走りたければ、高い限界までドライバーを連れていってくれる。いっぽう、4枚のドアと高品質な内装に惹かれて子どもの送迎にこのモデルを買うお母さんにも違和感は与えないほど、操縦感覚は洗練されている。
真円に近いオールマイティぶりにおいては、アウディ「S3」(544万円)に近いとかんじられた。どちらを選ぶかはお財布の中身と、乗るひとの趣味にかかっているだろう。
Volkswagen Golf R|フォルクスワーゲン ゴルフ R
ボディ|全長 4,275 × 全幅 1,800 × 全高 1,465 mm
エンジン|1,984 cc 直列4気筒ターボ
最高出力| 206 kW(280 ps)/5,100-6,500 rpm
最大トルク|380 Nm(38.7 kgm)/1,800-5,100 rpm
トランスミッション| 6段オートマチック(DSG)
駆動方式|4WD
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ 前/後|225/40R18
ブレーキ 前|ベンチレーテッド ディスク φ340 mm x 30 mm
ブレーキ 後|ベンチレーテッド ディスク φ310 mm x 22 mm
燃費(JC08モード)|14.4 km/ℓ
ハンドル位置|右
価格|510万円
フォルクスワーゲン カスタマーセンター
0120-993-199