ボルボ S60 ポールスター プロトタイプに試乗|Volvo
Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター
力強く輝く北極星
ボルボ S60 ポールスター プロトタイプに試乗
最高出力500psを超す「S60 ポールスター コンセプト」を皮切りに、今年の春には市販を予告、12月にプロダクションモデルが発表された「S60 / V60 ポールスター」。このあたらしいモデルラインについて知るために、モータージャーナリスト九島辰也氏が、スウェーデンにあるポールスター本社をたずねた。そこで、くわしい説明と市販モデルのプロトタイプへの試乗、さらには500psを誇るコンセプトモデルの同乗をつうじて得られた、“ポールスター”とは何なのかをリポートする。
Text by KUSHIMA Tatsuya
ボルボの変革はポールスターにあり
ご存知のように「XC60」以降、ボルボは新世代へと突入した。つづく「S60」「V60」、そして「V40」と、どれもスポーティなスタイリングと走りをまとっている。それまで安全が前面に押し出されていたボルボにとって、これは大きな変革ともいえるだろう。
では、いったいボルボになにが起きているのか。その鍵を握るのは“ポールスター”に他ならない。
ポールスターはボルボがリリースした「ポールスター パフォーマンス パッケージ」の生みの親だ。それは専用プログラムをインストールしてパワーアップをはかるもので、昨年はT6エンジン、今年はT4エンジン搭載車に導入された。前者は329ps 、後者は200psにスープアップされる。
しかも、今年4月にはエンジンのROMチューンだけでなく、「S60 ポールスター」というコンプリートカーも発表した。オーリンズ製の専用ダンパー、ブレンボ製ブレーキ、リアウィング、ディフューザー云々で武装されたスタイリングはなかなかのレーシーさ。
お得意のエンジンチューンも大きなタービンと新型インタークーラー、レーシングエキゾーストで350psを実現した。もっというと、ハルデックス製4WDシステムも手を入れ、さらにローンチコントロールも装備している。これまでの四角いバッチだけのアピールとは大ちがいだ。
そしてこのたび、ついにスウェーデンにあるポールスター本社を訪れた。ボルボ公認のチューニング会社があきらかになったのだ。
Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター
力強く輝く北極星
ボルボ S60 ポールスター プロトタイプに試乗(2)
レースフィールド出身
ひとことでいうと、彼らはレーシングチームであった。公式なパートナーであるボルボからクルマを供給され、それをレーシングカーに改造、シリーズ戦に参戦している。つまり、コンストラクターでもある。具体的にはスウェーデンでおこなわれるツーリングカー選手権にエントリー、今年チャンピオンに輝いた。相棒は500馬力オーバーの「S60」である。
通称STCCと呼ばれるこのレースは英国のBTCCのレギュレーションを参考におこなわれる。シリーズ戦は全12戦で、8カ所のサーキットが使われるそうだ。じつはスウェーデンはレースの盛んな国で、日本のようにポルシェカップも開催される。厳しい環境から開催期間は5月から9月と短いが、けっこう熱いバトルが繰り広げられるらしい。
そんな環境で活躍するポールスターだが、もちろんはじめからボルボとパートナーシップを結んでいたわけではない。レースをはじめた1996年当初はBTCCで走っていたボルボ「850」を買ってきて自国のレースに出場していたプライベーターだった。その後、「S40」や初代「S60」、「C30」で頭角をあらわす。結果、今日に至り、とうとうコンプリートカーまで出すようになったのだ。前述した「S60 ポールスター」はまずはオーストラリアで先行発売され、12月に発表されたプロダクションモデルは、日本も導入先としてアナウンスされている。
ではでは、ポールスター初のコンプリートカーはどうなのか。じつはSTCCにも使われたサーキットでそのステアリングを握ることができた。
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ボルボ S60 ポールスター プロトタイプに試乗(3)
限界域を高めながらも、快適な乗り心地はキープ
まずもって感心したのはエンジン音。これボルボ?ってくらいのレーシーなエキゾーストノートが響きわたる。とくに4,000回転くらいからの変調はいい感じで、おもわず回転域の上の方を使いたくなるほどだ。
そしてその加速なのだが、ここではボルボらしい広範囲のトルクバンドがグイグイとクルマを前へ押し出す。350psの醍醐味をかんじるのはここだ。ただ、あまりのトルクの太さに、細かいシフトチェンジはかえって邪魔になる。この辺は個性でもあるので速く走らせるには少々慣れが必要だろう。
乗り心地は極端に足が固くなることなく、細かいピッチングは気にならない。コーナーではロールもそこそこあることから、限界域を高めながら快適な乗り心地はキープされたといえそうだ。このほかでは、ブレンボのキャリパーがセットされたブレーキパワーが印象に残った。たぶんそのキャパシティはもっと上のエンジンにも対応できるだろう。
といった感じのポールスターのコンプリートカー。「R-DESIGN」もいいが、こちらも気になる。実際にステアリングを握ったことで日本導入への期待は高まった。
と、同時に、こうしたパートナーの存在がいまのボルボの走りにつながっていることを実感した。現行モデルはもちろんだが、この分だと今後発表されるであろうモデルもそうとう期待できそうだ。ポールスターの今後も期待したい。
Volvo S60 Polestar|ボルボ S60 ポールスター
Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター
重量|(S60)1,752 kg (V60)1,822 kg
エンジン|2,953cc 直列6気筒 DOHC 24バルブ ツインスクロールターボ
最高出力| 257kW(350ps)/ 5,700 rpm
最大トルク|500Nm/ 2,800-4,750 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(パドルシフト付き)
駆動方式|4WD
ブレーキ 前|ベンチレーテッド ディスク(φ371x32mm ブレンボ製)
ブレーキ 後|ベンチレーテッド ディスク(φ302x22mm)
タイヤ 前/後|245/35R20
0-100km/h加速|4.9 秒
最高速度|250km/h(リミッター作動)