シトロエン DS3カブリオに試乗|Citroen
Citroen DS3 Cabrio |シトロエン DS3 カブリオ
オープントップのDS3 カブリオに試乗
2009年に登場し、全世界で20万台という好調な売り上げをみせる、シトロエン「DS3」に解放感あふれるオープンモデル「DS3 カブリオ」が登場。軽快なフットワークをもつオープンカーに、島下泰久氏が試乗した。
Text by SHIMASHITA Yasuhisa
閉めた状態でもおしゃれ
昨年のパリサロン
でデビューしたシトロエン「DS3 カブリオ」は、ハッチバックとおなじBピラーやCピラー、ルーフの枠組みを残したまま、純粋なルーフからリアウインドウに至る部分のみが開閉するタイプのオープンカーだ。
閉じた状態では、前や横からはDS3とほぼ見わけがつかず、シャークフィンと呼ばれる特徴的なBピラーもそのまま。ちがいがわかるのはリアから眺めたときで、リアウインドウが左右に少し狭くなっている。そして当然、ソフトトップとされているルーフも識別点となる。
このルーフは電動開閉式。ルーフ前端に置かれたスイッチを押すと、まずはこのルーフ部分のみが折り畳まれながらひらく。いわゆるキャンバストップと大きくことなるのは、スイッチをさらに押すとさらに後方、リアインドウ部分まで大きく開け放つことができることだ。風の巻き込みを防ぐ手動式のウインドディフレクターも、当然備わる。
このソフトトップルーフは、ボディ色とコーディネートできる3色が設定されている。用意されているのは黒、そして青、更にDSモノグラムと呼ばれる、DSのロゴマークを反復させた柄付きの個性的なパターンである。
閉めている時にはハッチバックとほとんどかわらないと書いたが、これなら一目瞭然のアピール度を手にできる。閉めた状態でこれだけシャレたムードを醸し出せるオープンカーというのは、そうはないはずだ。
そのほか、外観でカブリオだとわかるのは、日本では先に限定車の「Ultra Marine」
に使われた3Dリアコンビネーションランプ。その表情は独特で、おもわず色々な角度から覗き込みたくなってしまう。
Citroen DS3 Cabrio |シトロエン DS3 カブリオ
オープントップのDS3 カブリオに試乗(2)
重量増はほんのわずか
そもそもDS3は、街を走る姿を見掛けるだけで、おもわずハッとさせられるぐらい強い存在感を誇っている。このカブリオは、まさにそれに輪をかけて、目線を釘付けにするほどの強いアピール力をもっているのだ。
このボディ形状のおかげでオープン化にともなう剛性ダウンは少なく、ボディ補強は最小限で済んでいる。車両重量の増加分はたったの25kg。そのうちソフトトップが約5~6kg、補強が約11~12kg、そしてフロア後方下部につけられたダイナミックダンパーと呼ばれるアイテムが2つで約8kgという内訳となる。
このダイナミックダンパーとは、簡単に言えばバネの先に錘を吊るしたもの。揺れによって車両の振動をうち消す。ハッチバックとのボディ剛性のちがいによる乗り心地の変化を、これで吸収しているのだ。
試乗車のパワートレインは、シトロエンでは馴染みの最高出力156psを発生する1.6リッター直噴ターボエンジンと6段マニュアルギアボックスの組みあわせである。もともと力には余裕があるだけに、この程度の重量増など体感することは不可能。実に力強く、軽快に走る。
重さだけじゃない。オープン化にともなうネガそのものを、ほとんど感じさせないのだ。ボディはとてもしっかりしていて、ブルブル、ワナワナとした印象を伝えることは皆無。乗り心地は快適そのものだし、ステアリングフィールにも曖昧なところは無い。
総じて、デビュー当初のDS3ハッチバックよりも洗練されているようにすら感じられたのは、効果的な補強や件のダイナミックダンパーの効果はもちろん、あらゆる部分で登場当初より熟成が進んでいるからだろう。
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オープントップのDS3 カブリオに試乗(3)
いっそ全部開けると快適
静粛性にも驚かされた。まずはトップを閉めた状態で走りだしたのだが、この時の室内にはザワついた感覚などは微塵もなく、オープンカーであることをしばし忘れるほどだった。
ではトップを開けたらどうか。まずルーフ部分だけを開けて走らせた場合には、風は室内にそれなりに巻き込んできた。ウインドディフレクターを立てても、額の辺りには風が当たらなくなるが、髪は乱れる。そしてなにより気になったのは、頭上を撫でて室内後方に入り込んだ風が、頭の後方で結構なこもり音を発することか。
この第一印象をもとにシトロエン DS3の商品企画マネージャー、エティエンヌ・ムナン氏に話を聞いてみた。すると、いっそリアウインドウ部分まで全部開けてしまったほうが快適だとのこと。
早速ためしてみると、なるほどこうすると風が室内にこもらず後方に抜けてしまうから音環境は爽快になるし、室内への風の巻き込みもかえって少ないようで、ディフレクターは立てなくても良くなる。高速道路では100km/hオーバーの領域もためしたが、風は気持ち良く、また助手席との会話に困ることもなかった。これは気持ちがいい。
オープンで走るなら、ルーフはこの状態にするのがベスト。ただし、リアウインドウの部分が折り畳まれたソフトトップでほとんど塞がって、後方視界は限定されるから、そこだけは注意が必要だ。調子に乗って飛ばしていると、後方から接近する車両があっても見逃しかねない。
また、後席に人を乗せる場合は、開けるのはルーフ部分だけにしてディフレクターを立てた方が間違いない。じゃなければ、特に高速域では、ちょうど顔のあたりに巻き込んだ風が吹き込むことにってしまうはずだ。
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オープントップのDS3 カブリオに試乗(4)
DS3本来の美点を犠牲にしないオープンカー
正直言って、見た目から想像していたよりはるかに気持ちの良い走りで、すっかり気に入ってしまった。何しろDS3本来の美点を犠牲とせずに、様々なかたちで楽しめるオープンカーならではのよろこびや更なるスタイリッシュさなどが純粋にプラスになっているのだから。
唯一、荷室の開口部が、機内持ち込みサイズのスーツケースがギリギリというぐらい小さいことが、実用上は難点と言える。しかし荷室の容量自体は後席使用時でも245リットルと小さくないし、ちょっと面倒だが、後席を倒した状態なら大きな荷物は前席バックレストを前に倒せば積み込める。それぐらいは大きな問題ではないと言ってしまおう。
もし自分でDS3を購入候補とするなら、絶対にカブリオをえらぶ。もちろん誰かに勧める時も同様だ。
日本での発売開始は夏頃。ボディカラーとトップの組みあわせは決まっていて、ルージュルビ(赤)とジョーヌペガス(黄)にはブラック、ブランバンキーズ(白)にはブルー、そしてノアールペルラネラ(黒)にはDSモノグラムのルーフという、計4パターンが設定されるという。
惜しいのは、パワートレインが今回試乗したのと同じ、1.6リッター直噴ターボ+6段MTしか設定されないこと。個人的にはともかく、世間一般的にはやはりAT仕様があった方が広がりを期待できるはずだ。もっとも、オトコはともかくイマドキの女性ならば、このクルマが心にササッたならば、AT限定を解除してでも、MTを手に入れるかもしれないとおもえるぐらいの魅力が、そこにはある。
そこにあるだけで間違いなく、景色を華やかに彩ってくれるだろう、シトロエン DS3 カブリオ。はやく見慣れた街で出会ってみたい。
Citroen DS3 Cabrio|シトロエン DS3 カブリオ
ボディサイズ|全長3,948×全幅1,715×全高1,452mm
ホイールベース|2,464 mm
トレッド 前/後|1,465 / 1,455 mm
トランク容量|245 リットル
重量|1,619 kg
エンジン|1,598cc 直列4気筒 DOHC ターボ
圧縮比|11 : 1
ボア×ストローク|77×85.8 mm
最高出力| 115kW(156ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240Nm/ 1,400-4,000 rpm
トランスミッション|6段マニュアル
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソン・ストラット
サスペンション 後|トーションビーム
タイヤ|205/45R17
最高速度|212 km/h
燃料タンク容量|50 ℓ