新型レクサスESに試乗|Lexus
Lexus ES|レクサスES
ドライバーズカーとしての魅力を高めた新世代のセダン
1989年のレクサス誕生とともにデビューし、累計販売台数が218万台に達するレクサスのコアモデル「ES」。日本にも初めて導入されるその最新モデルは、LC、LSに続くレクサスの変革を具現するモデルとして、全方位的な進化を遂げていた。
Text by YAMAGUCHI Koichi
LC、LSに継ぐレクサスの変革を具現するモデルの第3弾
カントリーミュージックをはじめとする音楽の街として知られるテネシー州第2の都市、ナッシュビル。大小のレコーディングスタジオが数多存在し、市内の目抜き通りに足を運べば、カントリーミュージックのみならず、ジャズやロック、そしてブルースやゴスペルなど、さまざまなミュージックの生演奏がライブハウスから鳴り響く。そんなアメリカにおける“音楽の聖地”は、近年、全米で最も大きな変貌を遂げていると街でもあるのだそうだ。
多くの企業が進出し、高層ビルが相次いで建設され、ビジュアルアートをテーマとする美術館や才能豊かなシェフのレストランなど、音楽以外のコンテンツも話題を集めている。そんな“変革”する街で、レクサスのミディアムセダン「ES」の試乗会が開催された。
日本発のラグジュアリーブランドとしてレクサスが産声を上げた1989年、フラッグシップモデルの「LS」とともにデビューしたES。これまで日本に導入されることはなかったが、累計販売台数が218万台に達するレクサスのコアモデルだ。その最新型である今回のモデルは、世界90カ国で販売される予定だという。ご存じの方もいるかと思うが、ESはかつて日本市場では「ウィンダム」の名でリリースされていたことがある。新型では初めてESの名で日本に導入され、欧州デビューも果たすのだそうだ。
新型ESの最大の特徴は、LC、LSに継ぐレクサスの変革を具現する第3弾のモデルであるということ。開発総責任者である榊原康裕チーフエンジニアによると、新型ESを開発するにあたり、2点に重きを置いて開発したという。すなわち、新世代のLC、LSを引き継ぐべく、デザインと走りをエモーショナルなものに変革すること。そして、ESの原点といえる人を中心に考えた上質な快適性を、さらに進化させること。
Lexus ES|レクサスES
ドライバーズカーとしての魅力を高めた新世代のセダン(2)
日本に導入されるのはハイブリッドモデルのみ
試乗会場となるホテル前にずらりと並べられた新型ESは、たしかにエモーショナルという形容がふさわしいスタイリングが印象的だった。全長4,975×全幅1,865×全高1,445mmのボディは、ワイド&ローのスポーティなプロポーションをベースに、シャープな造形のスピンドルグリルや低いボンネットフード、後輪駆動のスポーツカーのようにグラマラスなリアのフェンダーまわり、さらにリアに向かって弧を描くルーフラインなど、セダンとしてのエレガンスを湛えながらも、4ドアクーペのような流麗なフォルムを手に入れていたからだ。このワイド&ローのプロポーションを実現させる鍵となったのが、「GA-K」という新世代のプラットフォームなのだそうだ。
プロジェクトチーフデザイナー、梶野泰生さんはESのエクステリアデザインについて、「エレガントさをさらに進化させながら、スポーティさも追求し、新世代のESらしさを目指しました」と語った。実車を目の当たりにして、梶野さんの狙いが具現されていると思った。
レクサスの担当者によると、ESは90カ国で販売されるグローバルカーであるがゆえ、マーケットによっては主にショーファーカーとしてのニーズに応える必要があるとのことだが、エクステリアデザインは極めてパーソナルな雰囲気に満ちている。全長5メートルを大きく越えるボディもあって、よりショーファーカーとしての印象が強いLSと、うまく棲み分けができているといえるだろう。
日本に導入されるのは2.5リッター4気筒ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドモデルの「ES300h」のみ。「Ultra Luxury」と、ESでは初となる「F Sport」という2つのモデルが設定される。まず前者に試乗した。
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ドライバーズカーとしての魅力を高めた新世代のセダン(3)
LSにも匹敵する優れた居住性
走り出してまず感銘を受けたのが圧倒的な静粛性で、なるほど、レクサスがESのコアバリューと謳う“上質な快適性”が、新型にも継承されていることが分かる。榊原チーフエンジニアによると、風洞実験によるボディ形状の検証や吸・遮音材の最適配置はもちろんのこと、走行時に発生する音の周波数帯を解析し、エンジンやオーディオのサウンドと調和して心地いいと感じられる空間づくりを行ったという。新型ESで初採用された空中ホイールも、“ホーン”というタイヤの共鳴音を抑えているのだそうだ。
乗り心地もすばらしい。ナッシュビルの市街地からハイウェイと路面や速度域が変っても乗り味は常になめらかで、陳腐な表現だが絨毯の上をすべるような上質感がある。「どんな路面でも快適に走れる懐の深さにこだわって開発を進めました」とは榊原チーフエンジニアの弁だが、確かに狙いは達成されていると思った。
優れた乗り心地には、世界初となるスイングバルブダンパーの採用が寄与しているという。これは、タウンスピードや高速道路での巡航時などダンパーへの入力スピードが低い際にも確実にダンピング効果を発揮するもので、街乗りや高速走行時のなめらかで上質な乗り味と、ワインディングロードなどでのしっかりロールを制御する走りを両立させている。
ドライバーや乗員が感じるクオリティ感は、もちろん走りによるものだけではない。シートやステアリングなど直接触れる部分のレザーの質感をはじめ、各所にあしらわれた精緻なステッチやドアトリムまで連続するようなインストルメントパネルの立体的な造形など、LSにも通じるレクサスならではのクラフツマンシップがあふれている。
印象的なのは、4ドアクーペのような流麗なボディにもかかわらず、広々と開放感のある室内空間が実現されていること。特に後席の足元スペースは、FFレイアウトの恩恵もあるのだろう、身長180cmの筆者が座ってもゆったりとしている。総じてLSにも匹敵する居住性を達成しているといっても過言ではない。
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ドライバーズカーとしての魅力を高めた新世代のセダン(4)
ワインディングでは水を得た魚のような「F Sport」
つづいて、榊原チーフエンジニアが「ESが変革したことの象徴」と語る「F Sport」に試乗した。こちらは19インチホイールが標準装備されるとともに、電子制御で減衰力を変化させるリニアソレノイド式AVSが組合わされ、よりスポーティなチューニングが施されたサスペンションが与えられている。
「Ultra Luxury」と較べるとステアリングにダイレクト感が増し、操舵にたいするレスポンスもいい。試乗コースには、国立公園の森の中を右へ左へと中速コーナーが続くワインディングロードが組み合わされていたのだが、そこでの走りはまさに水を得た魚のようだ。
そんなシチュエーションで、2.5リッター4気筒ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、常にエンジンとモーターを最適なかたちで協調させながら、アクセルペダルの操作に応じてリニアにパワーを提供してくれる。MTモードでは積極的にギアシフトを楽しむことも可能で、スポーツサルーンとして理想的なドライビングプレジャーを提供してくれるのだ。
静粛性や上質な乗り味という点では明らかに「Ultra Luxury」に軍配が上がるが、ドライバーズカーという側面では「F Sport」の魅力も捨てがたいと思った。
「着心地のいいシャツに袖を通したときや、お気に入りの時計をつけたときにときめきを感じることがあるように、ESとの日々の触れ合いのなかからときめきを感じていただきたい。これが今回目指したESの姿です」
試乗前のプレゼンテーションで榊原チーフエンジニアはそう語ったが、実際にESに試乗して、そのデザインから走りに至るまで一環して感じられる“いいモノ感”に、氏の狙いは充分に達成されていると思った。そして、LC、LSに続くレクサスの変革を具現する第3のモデルを目指したという点についても、同様であった。試乗の後、ホテルの前にたたずむESの姿が、変貌するナッシュビルのダイナミズムあふれる街なみに、すてきにマッチしているのが印象的だった。
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