ポールスター パフォーマンス パッケージ装着のボルボS60に試乗|Volvo
CAR / IMPRESSION
2014年12月8日

ポールスター パフォーマンス パッケージ装着のボルボS60に試乗|Volvo

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|
ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

オフィシャルのパワーアップ チューニング

ポールスター パフォーマンス パッケージ装着のボルボS60に試乗

ボルボは近年、スポーティイメージを前面に押し出す戦略を強めている。7月にリポートしたヨットレース「VOLVO OCEAN RACE」もその一環であり、今回の「ポールスター パッケージ」の発売も然り。このオプションがめずらしいのは、購入後の車両にも装着でき、オフィシャルであるがゆえに、保証上なんら影響を受けないという点であろう。数字上わずかに馬力をアップさせる、コンピューターチューンではあるが、「S60 AWD T-6 R-DESIGN」に装着し、箱根の山道を試乗した大谷達也氏は明らかなちがいとベース車両の素性の良さを感じたという。

Text by OTANI Tatsuya
Photographs by ARAKAWA Masayuki

ボルボのレース活動

穏やかなスカンジナヴィアン デザインと揺るぎない安全性を誇るボルボといえば、プレミアムブランドのなかでは肉食系というよりも癒やし系に近い存在だろう。だから、ボルボとレース活動といわれても、あまりピンとこないかもしれない。

ところが、ボルボは昔からツーリングカーレースに熱心で、1985年には当時隆盛をほこっていたヨーロッパ ツーリングカー選手権(ETC)でボルボ「240ターボ」に乗るドライバーがチャンピオンを獲得。さらに、この年と翌年の11月に富士スピードウェイで開催されたインターTECに出場し、2年連続でBMWを下して優勝している。

この頃活躍した「240」は真四角なスタイルをしていたため、当時はいくぶんの親しみもこめて「空飛ぶレンガ」などと呼ばれていた。いまや懐かしいエピソードである。

ボルボは現在も積極的にモータースポーツ活動をおこなっていて、2012年はスウェーデンではじまったTTAレーシング エリート リーグと呼ばれるシリーズでドライバー、チーム、マニュファクチュアラーの3冠を達成している。TTAシリーズについては、日本ではあまり知られていないとおもうので少し紹介しておくと、シリーズ オーガナイザーが供給したシャシーにメーカーがボディを被せたレーシングカーで競われ、初年度となる2012年はボルボ、サーブ、BMW、シトロエンの4メーカーが計16台を投入。スウェーデン国内のサーキットで全8戦を開催し、タイトルを争った。

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

このTTAに参戦するボルボのワークスチームが“ポールスター・レーシング”である。彼らは2011年の世界ツーリングカー選手権(WTCC)に挑み、鈴鹿サーキットでおこなわれたレースに出走、フル参戦初年度にもかかわらず第2レースでは5位に食い込む健闘をしめした。世界でもトップクラスの技術力を有するツーリングカー レースチームといっていい。

1996年に設立されたポールスターは、これまでボルボのレース活動を中心に請け負ってきたが、2011年にはボルボ ロードカーのパフォーマンスを向上させるチューニングキットを開発。ドイツ、北米、南米、中国などで発売して好評を博した。それが、ここに紹介する「ポールスター パフォーマンス パッケージ」である。

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|
ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

オフィシャルのパワーアップ チューニング

ポールスター パフォーマンス パッケージ装着のボルボS60に試乗(2)

不安にさせるほどの速さ

端的にいえば、これはボルボ T6エンジン(型式名 B6304T)用のROMチューンキットだが、最大の特徴はボルボの正規ディーラーで購入と装着ができ、装着後も引きつづき車両の新車保証が適用される点にある。それだけ信頼性が確認された製品といえる。

今回は、このポールスター パフォーマンス パッケージを装着した「S60 T6 AWD R-DESIGN」に箱根ターンパイクで試乗した。

乗りはじめてまず気づくのは、その圧倒的なパワーである。ポールスター パフォーマンス パッケージはエンジンマネージメントのプログラムを変更するだけで、ハードウェア面はオリジナルと変わらないため、パフォーマンスの向上代は最高出力で25ps、最大トルクで40Nmと、それほど大きくない(いずれの値もメーカーが公表する“目安”)。

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

したがって、そのすべてがパフォーマンス パッケージの装着によるものではないのだが、「あれ? S60 T6ってこんなにパワフルだったっけ?」と狐につままれたような気分になるくらい、ダイナミックな走りを見せてくれるのだ。特に、7,000rpmのレブリミットを目指してタコメーターの針が駆け上がっていく様は圧巻のひとこと。別に車体が不安定な状況に陥っているわけでもないのに、なんとなくドライバーを不安にさせるほどの速さだった。

しかも、回転フィールがスムーズで好ましい。そもそもボルボのT6モデルは直列6気筒ユニットを横置きしている。つまり、エンジン自体はストレート6なのだから、回転バランスがいいのは当然のこと。おかげで、バイブレーションが小さく、スムーズでレスポンスのいいエンジンフィーリングを味わうことができる。

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|
ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

オフィシャルのパワーアップ チューニング

ポールスター パフォーマンス パッケージ装着のボルボS60に試乗(3)

S60のシャシーの良さが浮かびあがる

現行のS60といえば、そのシャシー性能の高さで定評があるが、今回試乗した範囲では、向上したパフォーマンスに余裕を持って対応しているとは言い切れず、もう少しスプリングとダンパーを締め上げたいとのおもいに駆られた。

いや、基本となるシャシー性能がここまでしっかり仕上がっていなかったら、ただの危ないチューニングカーになっていただろう。裏を返せば、スプリングとダンパーの変更だけで、他の部分には手をくわえなくてもバランスがとれると予感させるほど、今回試乗したS60は1台のクルマとしてのまとまりがよかったのである。

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

ポールスター パフォーマンス パッケージの価格は工賃込みで20万円。11月5日に発売したところ、わずか3週間ほどで100セットの注文が入るほどセールスは好調という。現在のボルボ オーナーにとって待望の製品だったことの証だろう。なお、ポールスター パフォーマンス パッケージはS60だけでなく、2011年モデル以降のT6モデルであればV60、XC60、V70、XC70、S80のいずれにも装着できるそうだ。

spec

Volvo S60 AWD R-Design Polestar Performance package|
ボルボ S60 AWD Rデザイン ポールスター パフォーマンス パッケージ

ボディサイズ|全長 4,630×全幅 1,865×全高 1,480 mm
ホイールベース|2,775 mm
トレッド 前/後|1,580 / 1,575 mm
重量|1,770 kg
エンジン|2,953cc 直列6気筒 DOHC 24バルブ ターボ
最高出力| 242kW(329ps)/ 5,400-6,500 rpm
最大トルク|480Nm(48.9kgm)/ 3,000-3,600 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(ギアトロニック)
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|235/40R18
燃費(JC08モード)|8.5 km/ℓ
CO2排出量|30 g/km
価格|619万円(車両本体価格 599万円+ポールスター パフォーマンス パッケージ 20万円)
※「最高出力」「最大トルク」以外はベースモデルの値。

           
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