BMW M2 クーペに試乗|BMW
BMW M2 Coupe|ビー・エム・ダブリュー M2 クーペ
BMW M2 クーペに試乗
4人乗れるポルシェ718ケイマンが欲しい人に
2016年5月に日本に導入されたコンパクトFRスポーツカー、BMW「M2 クーペ」。Mモデルのランナップ中、もっともコンパクトな同車に試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
目がさめるようなドライブの楽しさを味わわせてくれる
BMWはスポーティセダンのブランドである。そう信じてきたファンが快哉を叫びたくなるモデルが、「M2クーペ」だ。全長4,475mmの比較的コンパクトな2ドアボディに、272kW(370ps)の3リッター直列6気筒エンジンを搭載。目がさめるようなドライブの楽しさを味わわせてくれる。
2016年5月に日本発売されたM2クーペ。スタイリッシュな2ドアクーペである2シリーズ クーペには「220iクーペ」と「M240クーペ」がラインナップされている。そこにイメージ的には連なるが、スポーティさにおいて群を抜くスペシャルなモデルだ。
2,979ccの直列6気筒エンジンはM240クーペと基本的に同じだが、パワーが22kW上がっている。数値もさることながらなにより構成パーツが異なり、M2クーペ用に最適化されているのだ。
M2 クーペとM240iクーペの違いを簡単にいうと、前者は「激しい加減速を行うサーキット走行においても最高のパフォーマンスを発揮」(BMWジャパン)するために開発されているとなる。エンジンやサスペンションが別物。数値の違いをはるかに超えた仕上がりなのだ。
具体的には、低フリクションのトップリングを組み込んだピストン、「M4 クーペ」と共用のクランクシャフトのメイン ベアリングやスパーク プラグ。さらにサーキット走行を前提に設計されたエンジン冷却ラジエターとトランスミッション オイルクーラー、オイルサンプ カバーとサクション オイルポンプの採用もM2クーペ専用だ。
サスペンション システムもM2 クーペ用パーツで構成される。フロントでは、コントロール アーム、ホイール キャリア、アクスル キャリアが軽量アルミニウム製に。スチール製に比べ約5kgの軽量化という。いっぽうリアは、コントロール アームとホイール キャリアすべてが鍛造アルミニウム製だ。スチール製に比べ約3kgの軽量化。
これらによって「優れた剛性とバネ下重量の軽量化を実現」(BMWのプレスリリース)と謳われる。
もうひとつ見逃せないのが「アクティブ M ディファレンシャル」だ。左右後輪にパワー配分する差動装置を積極的にコントロール。具体的には電子制御式多板クラッチによりリアの左右ホイール間のロッキングファクターを0から100パーセントまで自在に調整する。
例えば旋回時に内輪の接地性が悪くなり外輪へもトルク伝達が妨げられるような事態になることを回避できる。車速、アクセル開度、ホイールの回転速度、ヨーレートなどがパラメーター。システムの介入が必要となる運転状況を前もって察知する。あらゆる走行状況において最適なエンジンパワーを路面に伝達することが可能という。
走らせた印象はとにかく驚くほどだ。
BMW M2 Coupe|ビー・エム・ダブリュー M2 クーペ
BMW M2 クーペに試乗
4人乗れるポルシェ718ケイマンが欲しい人に (2)
クルマが速く走りたがってむずむずしている
M2 クーペに乗りこむと印象的には“ふつうのモデルよりスポーティに仕上げているな”ぐらいの感想である。バケットタイプのシートに太い革巻きステアリング ホイールはレーシーだが、そう目新しいものではない。
ところがエンジンをかけてギア(僕が乗ったのはツインクラッチのマニュアル2ペダル車)をDレンジに入れたとたん“これは違う”と感じる。コンピューター制御のオートマチック クラッチでありながらレーシング クラッチのようにつながりの鋭さを感じさせ、軽くアクセルペダルを踏んだだけでクルマはぽんっと強い力で背中から押されたように前に出ようとするのだ。
1,400rpmという低回転域から465Nmもの大トルクを発生する設定なのでパワフルなのはよく分かるが、なによりクルマが速く走りたがってむずむずしているような印象を与えられる。これが無上に楽しい。エンジンからの音も排気音も、すべてがそんな素晴らしい活気を感じさせてくれる。
手前に引いてアップ、奥に押してダウンというレーシングカーと同様のパターンを持つ7段のツインクラッチギアボックスは、M240iクーペには設定のないM2 クーペ専用。BMWのパフォーマンス部門であるM社がチューニングしているだけあって、すぱっと瞬時にエンジンと駆動系がつながる感覚はみごとだ。
2016年10月には6段マニュアル変速機仕様も追加された。まだ未体験なのでなんとも言えないが、趣味の問題を別にするとツインクラッチタイプのほうがより速く走れるはずである。加減速時のダイレクト感もたいしたものなのだ。
最高出力がしぼりだされる6,500rpmをめざして引っ張ってから奥に押すと瞬間にギアが切り替わる。ギア比が近接しているスポーティな設定のため回転が大きく落ちることなく、6気筒エンジンからの力は途切れずあふれるように出てくるという素晴らしさだ。
Mモデル専用の球形グリップを持つシフトレバーの隣りに設けられたのが「ドライビング パフォーマンス コントロール」。ボタンでスポーツモードを選ぶと、パワフルで活気溢れる6気筒エンジンがまずあって、駆動系とシャシーとサスペンションがそのまわりに構築されているという(印象)M2クーペの醍醐味をよりダイレクトに感じられる。
M240iクーペ (8段ATで627万円)に対してM2 クーペ(793万円)は高価である。しかし自動運転技術や電気自動車に関する記事が毎日のように新聞紙上にまで掲載される昨今にあって、クルマ好きとして最後に守ってほしい砦のような存在として輝いている。4人乗れるポルシェ「718ケイマン」が欲しかったらM2クーペがいいかもしれないと僕は思うのだ。
BMW M2 Coupe|ビー・エム・ダブリュー M2 クーペ
ボディサイズ|全長 4,468 × 全幅 1,854 × 全高1,410 mm
ホイールベース|2,693 mm
トレッド前/後|1,579 / 1,601 mm
重量|1,520 kg
エンジン|2,979cc 直列6気筒DOHC ターボ
最高出力|272 kW(370 ps)/6,500rpm
最大トルク|465 Nm(47.4 kgm)/1,400-5,560 rpm
(オーバーブースト時)500 Nm(51.0 kgm)/1,450-4,750 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(M DCT)
駆動方式|FR
ブレーキ前|φ380mm コンパウンド ベンチレーテッド ディスク
ブレーキ後|φ370mm コンパウンド ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前|ダブル ジョイント スプリング ストラット
サスペンション 後|5リンク
タイヤ 前/後|245/35R19 / 265/35R19
0-100km/h加速|4.3 秒
最高速度|250km/h
最低地上高|123 mm
ハンドル|右
価格|793万円
BMWカスタマー・インタラクション・センター
0120-269-437(平日9:00-19:00、土日祝9:00-18:00)