トヨタの最新コンパクトSUV「C-HR」のプロトタイプに試乗|Toyota
CAR / IMPRESSION
2016年11月23日

トヨタの最新コンパクトSUV「C-HR」のプロトタイプに試乗|Toyota

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

トヨタの最新コンパクトSUVのプロトタイプに試乗

スポーティなクーペを操縦しているような気分

2014年にコンセプトカーとして登場し、今年にはプロダクションモデルが発表されたトヨタ「C-HR」。プリウスと共通の新プラットフォームTNGAを採用したこのコンパクトSUVは、どのようなクルマなのか。ハイブリッド、ガソリン両モデルのプロトタイプに試乗する機会を得た、小川フミオ氏のリポート。

Text by OGAWA Fumio

スタイリングのキャラクターは強烈

トヨタ自動車が欧州市場を中心に大々的に展開する予定というスタイリッシュなコンパクトSUV、トヨタ「C-HR」。そのプロトタイプを試乗する機会にめぐまれた。前後フェンダーが大きく張り出すように見せたスタイリングで、とりわけプロファイル(側面)ではエッジが強調され、新しさを強く感じる。

日本で販売されるトヨタC-HRは大きくいって2モデル構成になる予定。1.2リッターのガソリンエンジンモデルと、1.8リッターエンジンを用いたハイブリッドモデルだ。前者は4WDで後者は前輪駆動である。欧州では2リッターガソリンエンジンも予定されているが、「ディーゼルエンジンは搭載しない」(開発担当者)という。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

ハイブリッド車は1797ccエンジン(72kW/98psと142Nm)に電気モーター(53kW/72psと163Nm)を組み合わせている

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

ハイブリッド車の加速は鋭い

「若者層を積極的に取り込みたい」(伊澤和彦プロジェクトチーフデザイナー)というだけあって、スタイリングのキャラクターは強烈だ。写真よりも太陽光線による陰影とともに見ることで、フェンダーの張り出し感やボディの薄さといった特徴が際立つ。

全高に対して車輪のハイト(高さ)を「44.5パーセント」にまで高めているのもC-HRの個性になっている。「車輪が大きいほうがカッコいいと思われる」(伊澤プロジェクトチーフデザイナー)というコンセプトの背景には、欧州で人気が衰えていない日産「ジューク」や同「キャシュカイ」を相手にしたターゲット戦略がある。

試乗すると、走りのほうもなかなかのもので、たんにスタイルだけが売り物のニューモデルではないと分かる。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

トヨタの最新コンパクトSUVのプロトタイプに試乗

スポーティなクーペを操縦しているような気分 (2)

新世代のプラットフォーム「TNGA」第2弾

トヨタC-HRにはいくつも注目点がある。一つはグローバルマーケットで販売されるモデルであること。トルコ工場で生産されて50カ国へと輸出される計画だ。もう一つはTNGA(トヨタ ニュー グローバル アーキテクチャー)という新世代のプラットフォームを使った第2弾であること(第1弾は現在のプリウス)。そしてさらに走りのよさも注目点に加えていいと思う。

プリウスと基本的には同じシャシーを使うものの、サスペンションは「基本のジオメトリーから見直しました」(サスペンション開発担当者)という。それによってサスペンションが所期の性能を充分に発揮できるようにできたそうだ。さらにザックスのダンパーや太径のスタビライザーの採用、ブッシュ類では徹底した形状の見直しと、手がかけられている。「プリウスでは操縦安定性と乗り心地を重視して開発しましたが、C-HRでの開発目標はそこにスポーティさを加えました」(同)ということだ。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

フロントはバンパーからフェンダーへのふくらみの一体感が特徴的

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

リアの造詣はけっこうエモーショナル

はたしてC-HRは気持ちのいい走りを体験させてくれた。ステアリングホイールを切ったときの反応はスムーズで、車体の動きはもたつくことなくきれいに曲がっていく。ステアリングホイールは握りが適度に細く、かつ手にしっとりとなじむ感触が印象的だ。僕の好みにぴったり合う。すべての相乗効果でまるでスポーティなクーペを操縦しているような気分すら味わえる。SUVなので着座位置はそれなりに高めだけれど、それゆえ今までにあまり味わったことのない新鮮な驚きだった。

乗り心地とスポーティさの両立というなかなか困難な課題を上手にこなしてサスペンションが開発されている感じだ。シャシーの剛性感は高く不正路面を走ってもいやな振動はない。上手に入力をこなしてステアリングホイールへのキックバックもうまく処理している。ここでもタイヤからステアリングラックまですべてが協調して性能を発揮しているのだ。

走りには意外な驚きがあった。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

トヨタの最新コンパクトSUVのプロトタイプに試乗

スポーティなクーペを操縦しているような気分 (3)

日本発売は2016年末を予定

トヨタC-HRは1.2リッターエンジン車と、1.8リッターのハイブリッドの2本立てであることは先に触れたとおり。1.2リッターはターボチャージャーを備えて85kW(116ps)の最高出力と185Nmの最大トルクを発生。無段変速機と前輪駆動を主体とした4WDシステムが組み合わされている。

この1.2リッター車、期待以上によく走った。走り出しこそ車体の重さをやや感じるものの、スピードに乗ってしまえば追い越しなどの中間加速もけっこう速い。ターボチャージャーが装着されているが、トランスミッションとの協調制御がていねいで加速していくときにターボがついてこられずパワーが落ち込むような感じはなかった。そこにも感心した。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

スポーティ性を強めたクルマといっても、エンジンのフィールだけは素早い回転の上がり下がりを楽しむようなスポーツカー的なところはない。ハンドリングが主で、動力源は従と、しっかり割り切った感じである。欧州仕様の2リッターだとまったく違う印象になるはずで、それに興味が湧いたのも事実だ。

ハイブリッドモデルは、トルクもたっぷりある。プラグインではないので電気モーターからエンジンへの移行は早めで、両方のパワートレインがまめに補い合う感じである。アクセルペダルを踏むこんだときのトルクの立ち上がりは速く、加速感は1.2リッターのはるかに上を行く。いっぽうでエネルギー回生機構を持ったブレーキはペダルを踏み込んだときの立ち上がりがやや早すぎで、足の踏む力で効きを調整していくような楽しさはない。こちらはハイブリッドモデルの少々がっかりする点である。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

インテリアは乗用車的でシートはファブリックと合成皮革を使ったコンビの2種類が用意される

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

内装は「アウディの質感を研究した」(デザイナー)というが、あいにくそこまでは追いついていない。パワーウィンドウを操作したときに「ガタッ」とサッシまわりから音が聞こえたりするとこのクルマの価格というものを意識させられてしまう。シートの作りや先に書いたステアリングホイールの感触やペダルの踏む角度の自然さなど、ていねいな仕事で質感が大きく向上している部分と、アウディにはまだ追いついていない部分とが共存している感じはある。

やや細かいが気になるものの一つが後席ドアのアウターハンドル。形状がいまひとつ全体のフォルムになじんでいないのだ。室内騒音のレベルが高めでエンジン音がよくないのもやや気になる点である。

トヨタC-HRの日本発売は「2016年末」(トヨタ自動車)とのことなので価格は未定だが、もし価格をもう少し上乗せしてもさらに質感が上がれば、僕はいいと思う。乗り味のクオリティからすれば充分にプレミアム感があるからだ。

           
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