ロールス・ロイス ドーンにケープタウンで試乗|Rolls-Royce
CAR / IMPRESSION
2016年5月10日

ロールス・ロイス ドーンにケープタウンで試乗|Rolls-Royce

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

ロールス・ロイス ドーンにケープタウンで試乗

走らせてこんなに面白いロールスなんてそうそうない

「レイス」をベースとし、ロールス・ロイスにおいて「ファントム ドロップヘッド クーペ」につづく第2のコンバーチブルモデルとなる「ドーン」に、南アフリカはケープタウンで試乗した。

Text by OGAWA Fumio

ユーザーの若返りをはかったモデル

ロールス・ロイスのニューモデル、ドーンがいよいよ発売された。日本でも納車は第二四半期(4月〜6月)というだけあって、期待が高まる。なにしろ、「スタイリッシュで現代的な最高級4シーターコンバーチブル」とメーカー自身が標榜する、ぜいたくで美しいクルマである。

世界中のジャーナリスト向けの試乗会は、2016年3月に南アフリカのケープタウンで開催された。アフリカ大陸のほぼ南の端っこに位置し、近くに喜望峰がある。17世紀に東インド会社のオランダ人が、補給基地を設計したのが街のはじまりといわれる。

ケープタウンは南アフリカで初めて白人が入植した場所であり、街のつくりもどことなく西欧のリゾートを思わせる。実際、このところワインツーリズムに力を入れていて、多くのワイナリーがモダンなテイスティングルーム併設のレストランや宿泊施設を作るなどして、観光客を惹きつけているようだ。

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

「ドーンに似合うイメージの(試乗)場所をいろいろ探しました。カリフォルニア、オーストラリア、ドバイ……。太陽が明るくて開放的で、いい雰囲気のひとが集まる場所。それで見つけたのがケープタウンでした」

ケープタウンはステレンボッシュという場所にあるワイナリー経営のリゾートホテルを拠点とした、ドーンの試乗会。その舞台裏を、ほんの少しだけ、本国の広報担当者が話してくれたのだった。

ドーンは荘厳さと無縁のクルマ、らしい。明るくて開放的で、ドライブを楽しめる。そのために作られたといってもよい。ロールス・ロイスの言葉を借りると「ユーザーの若返りをはかったモデル」となる。全長5.3メートルの大型サイズの車体に、6.6リッターV12を搭載した後輪駆動。これだけでは荘厳なロールス・ロイスのイメージしか浮かばないかもしれないけれど、洒落たスタイルのフルオープン4人乗りは、乗る人間の気分を高揚させる力を持っていた。

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

ロールス・ロイス ドーンにケープタウンで試乗

走らせてこんなに面白いロールスなんてそうそうない(2)

80パーセントのボディパネルを新設計

ロールス・ロイス ドーンは、3110mmのホイールベースの上に、4人の大人のための余裕ある空間を持つボディを載せている。「ロールス・ロイスの伝統にしたがってハードトップは採用しません」と開発担当者が言うように、トップはソフトな幌タイプ。ただし6層におよぶ厚い構造で、閉めた状態で走るとその静粛性の高さは驚くほどだ。

面白いのは、オープンスタイルで、ロールス・ロイスは二つの、少しクラシカルなこだわりをみせている。ひとつはリアグラス。あえて最低限の大きさにとどめている。理由は「乗員のプライバシー」(開発担当者)という。もう一つは、オープンの状態で、後部座席から降りるとき、「立った姿勢で優雅に降りられるよう」(同)に前席がスライドして十分なスペースを作ることだ。

その話を聞くと、ハリウッドのスターを思い浮かべてしまう。街中ではお忍びっぽく後席に身を隠し、パーティ会場などで人々の前に姿を現すときは、思いっきり優雅できらびやかなスタイルで、といったイメージが湧くのだ。

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

幌は作動音を極力抑えられていて、ロールス・ロイスでは開閉中の動きを「サイレントバレー」と表現する。開くにしても閉じるにしても、要する時間は20秒ほどで、50km/hまでは操作が可能である。閉めたときのスタイルもかなり美しい。幌が側面までまわりこんだようだスタイルだからだ。サイドウィンドウの上下幅が抑えられていて、クーペのようにスタイリッシュなプロファイルなのだ。

ここで触れたように、ドーンの後席は、下手な大型セダンより広くて、しかも乗り心地がいい。ぶ厚いカーペットも路面からの振動をよく吸収してくれる。幌を閉めた場合、天井の高さは驚くばかりだ。外から見ていると、とてもスタイリッシュなのだが、乗員はなにひとつガマンしていないというパッケージングは見事だ。

「ロールス・ロイスのクルマづくりの哲学は、このぐらいでいいんじゃないか、という地点でとどまらないこと、完璧を目指さなくてはいけません」。ケープタウンでの試乗会で出合った開発担当者は、同社のポリシーを説明してくれた。

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

スタイリングに関しても同様で、同社のデザインディレクターを務めるジャイルズ・テイラーによると、「高度に現代的で、4座のスーパーラグジュリードロップヘッド(オープンカーのこと)を実現するために、80パーセントのボディパネルを新設計しています。決してレイスのドロップヘッド版ではありません」となる。

スタイル的にはアグレッシブなイメージをやや強調するため、伝統的なアイコンとなっているパルテノングリルは45mm後ろに下げ、同時にその上に据えられたフライングレディのマスコットは15度ほど前傾させたそうだ。一目でロールス・ロイスのファミリーとわかるスタイルだが、細心の注意でもって新世代のモデルとして作りあげられているのである。

走らせてこんなに面白いロールス・ロイスなんてそうそうないだろう。

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

ロールス・ロイス ドーンにケープタウンで試乗

走らせてこんなに面白いロールスなんてそうそうない(3)

コーナーではしっかり踏ん張るサスペンション

ケープタウンの道は、とてもよい。運転好きだったら、いちどはここでドライブすることを勧めたいほどだ。舗装は日本と比較にならないぐらい整備されていて、路面は徹底的になめらかである。道幅は広くて、カーブが連続する山岳路でも、美しい光景が展開する海岸線でも、ロールス・ロイス ドーンのドライブに、これほどふさわしい舞台はないと思ったほどだ。

走りはスムーズそのもの。ツインターボの6.6リッターV12気筒エンジンは1500rpmから780Nmのトルクを出し始める設定だけあって、走り出しからしてなんのストレスも感じない。回転を上げていってもターボラグのようなトルクの切れ目を感じることもない。エンジンルームからの音は極力抑えられていて、これも伝統を意識させる。ドーン(夜明け)なのだから無音でなくてはいけないのだろう。

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

エアサスペンションとアクティブロールバーを使ってのエンジニアのゴールは「マジックカーペットライド」だと説明される。魔法のじゅうたんに乗っているかのように、路面からの干渉をいっさい受けない快適な乗り心地が目指されているのだ。たしかに、走り出しての第一印象は、なんて静かでフラットな乗り心地のクルマなんだろうというものだった。ランフラットタイヤ装着だが、そのデメリットは前輪のホイールハウスからの音の侵入ぐらいだ。その音もわずかなのだけれど。オープン走行時、ねじれもいっさい感じられない。

速度を上げていくと、ドライバーとしては気分がどんどん昂揚する。低速域ではややダルに感じられたステアリングだが、パワーアシスト量が抑えられるのだろう、重さは増すが、いっぽうでレスポンスは向上する感じだ。サスペンションシステムは、クーペとして先行発売されたレイスと基本設計を同じくするエアタイプだが、味つけは200kgほど重量が重くなるドーン専用だ。コーナーではしっかり踏ん張り、姿勢を安定させてくれる。次のコーナーへは瞬発力よく突っ込んでいくこともできる。むしろそういう運転で真価が発揮されるようなキャラクターだと感じられた。

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン

2640kgの車体を静止から100km/hまで加速させるのに要する時間は4.9秒というのも、スペックシートで見たときは「ほんとかな」と半信半疑だった。しかし一度乗ってみると、それぐらいダッシュ力のあるクルマであることがよく分かるのだった。アクセルペダルの踏み込み量に対しての加速性は独自のマッピングが採用されていて、中間加速領域では30パーセント反応が早くなるように設定されているという。ドーンをしてロールス・ロイスは「ブレバディア」Boulevardierと呼ぶ。つまり街中で使う、かつての言葉でいうとタウンコーチの位置づけだろうか。しかし明らかに、速度を上げたドライビングを楽しむクルマなのだ。

自動運転に関する装備はほぼ採用されていない。それもロールス・ロイスのポリシーだと説明された。ドーンでは、アダプティブクルーズコントロール、アクティブヘッドランプ、車線逸脱警告システムぐらいしか見当たらない。むしろ強調されるのは、変速ショックがいっさいない8段オートマチック変速機のシフトスケジュールに、GPSからの情報による制御が組み込まれていることだ。「サテライト・エイデッド・トランスミッション」は、カーブの手前で適切なギアに落とすなど、ブレーキペダルにあまり頼らない運転ができるようになっている。

080507_eac_spec
Rolls-Royce Dawn|ロールス・ロイス ドーン
ボディサイズ│全長 5,295×全幅 1,945× 全高 1,500mm
ホイールベース│3,110mm
車両重量(DIN値)|2,640kg
エンジン│6.6リッター V型12気筒 ツインターボ
最高出力│420 kW(570 ps)/5,250rpm
最大トルク│780 Nm/ 1,500-5,000rpm
トランスミッション│8段AT
駆動方式|FR
0-100km/h加速|4.9 秒
最高速度|250 km/h(リミッター作動)
トランク容量|244-295 ℓ
価格|3,740万円から

           
Photo Gallery