ルノー ルーテシア R.S. トロフィーに試乗|RENAULT
CAR / IMPRESSION
2016年1月6日

ルノー ルーテシア R.S. トロフィーに試乗|RENAULT

Renault Lutecia Renault Sport Trophy
ルノー ルーテシア ルノー・スポール トロフィー

ルノー ルーテシア R.S. トロフィーに試乗

最新ホットハッチの最高峰

「ルーテシア」のルノー スポール モデルで、日本市場においてこれまで最もスポーティだった「シャシー カップ」に代わり新たに導入された「トロフィー」。シャシー カップよりもさらに高いレベルのチューニングが施された同モデルに、モータージャーナリスト大谷達也氏が試乗した。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

「シャシー スポール」と「トロフィー」の2モデルで幅広いニーズに対応

これはルノーに限らず輸入車メーカーの多くにいえる傾向ながら、日本は他国に比べて販売台数全体に対するスポーツモデルの比率がとりわけ高い市場として知られている。このため、たとえばメルセデスの日本における販売台数は世界全体で見たときに5位だけれど、AMGに限っていえば3位に躍進する、というようなことが往々にして起きる。つまり、日本人はハイパフォーマンスカー好きなのだ。

同じことはルノーについてもいえる。ルノーの日本での販売台数は5,000台弱。世界全体では270万台も販売している大メーカーにとって、誠に申し訳ないけれど5,000台はとるに足らない数字だ。けれども、ルノー スポールに限っていえば、その販売台数は992台で、これまた世界第3位にあたるという。それにしても、ルノー スポールが用意されているのは「メガーヌ」と「ルーテシア」だけなのに、そのルノー スポール モデルだけで日本の販売台数の1/5を占めてしまうとは、これまた驚きのデータだといえる。ちなみに、ルノー スポール モデルがルノー全体に占める割合をグローバルに見ると、わずか5パーセントでしかないそうだ。

RENAULT LUTECIA RENAULT SPORT TROPHY|ルノー ルーテシア ルノー・スポール トロフィー

RENAULT LUTECIA RENAULT SPORT TROPHY|ルノー ルーテシア ルノー・スポール トロフィー

そんな“ルノー スポール好き”の日本人だから、モデル選びも世界標準とは少し違ってくる。実は、「ルーテシア(海外ではクリオ)」のルノー スポールといっても、チューニングのレベルに応じて「シャシー スポール」「シャシー カップ」「トロフィー」と3段階が用意されており、この順にチューニングのレベルは高くなっていく。で、よその国であればいちばんソフトなスポールが売れ筋なのに、これまでスポールとカップの2種類を用意していた日本では圧倒的にカップのほうが好評を博してきたという。つまり、ここにも日本人のスポーツモデル好きの傾向が現れているのである。

こうした市場の動向を受けて、ルノー ジャポンはカップよりもさらにハードなトロフィーの導入を決定。今後はスポールとトロフィーの二本立てとする方針を固めた。ちなみに、通常トロフィーは限定販売されるだけで、カタログモデル化されるのは今回が初であると同時に、日本だけの特別な対応だとか。また、カップとトロフィーの二本立てではなくスポールとトロフィーの組み合わせとしたのは、はっきりと性格の異なる2モデルを導入することで幅広いニーズに応えることが狙いだったようだ。

Renault Lutecia Renault Sport Trophy
ルノー ルーテシア ルノー スポール トロフィー

ルノー ルーテシア R.S. トロフィーに試乗

最新ホットハッチの最高峰 (2)

エンジンは「シャシー スポール」比で+20psと+20Nm

こうして登場することになった「ルーテシア ルノー スポール トロフィー」には、その名にふさわしいいくつもの特別なチューニングが施されている。

まず、エンジンはブースト圧を0.2bar上げて2.0barとすることでスポール+20psと+20Nmの220ps/260Nmを獲得。車高をフロントで20mm、リアで10mm下げるとともにスプリングを40パーセントも硬くしたほか、ローンチコントロールやマルチシフトダウン(シフトダウンのパドルを引いたまま減速すると、車速にあわせて自動的にシフトダウンしてくれる機能)などの専用デバイスを盛り込んでいる

なかでもシャシー性能にこだわるルノー スポールらしい特別装備といえるのがハイドリック コンプレッション コントロール(HCC)と呼ばれるシステム。これはダンパー内に組み込まれたもので、バンプストップラバーに当たる直前の減衰力を、本来のダンパーとは別に設けられたダンパーの一種でコントロール。減衰力をプログレッシブに制御することで日常領域の乗り心地を改善するとともに、バンプストップラバーに当たる直前の極限的なハンドリングをマイルドな特性に改めるデバイスと考えられる。

RENAULT LUTECIA RENAULT SPORT TROPHY|ルノー ルーテシア ルノー・スポール トロフィー

RENAULT LUTECIA RENAULT SPORT TROPHY|ルノー ルーテシア ルノー・スポール トロフィー

このHCCの効果なのかどうか、トロフィーの乗り心地はスポールに比べて決定的に硬すぎるということはない。確かにスプリングの硬さは感じられないわけではないけれど、個人的には、導入当初のスポールで見られた足回りのフリクション感が消えており、ソリッドでありながらもスムーズにサスペンションがストロークする印象が強かった。だから、嫌な感じが一切しないし、私だったら街乗りメインで使うにしてもスポールではなくトロフィーを選びたくなると思う。

こうした印象はワインディングロードに舞台を移してからも変わらなかった。いかにもルノーらしく、低速時は足回りがスムーズによく動いているのだが、コーナリングでペースを上げていってもしっかりとクルマの挙動を抑え込んでくれるので不安感を覚えない。しかも、ハードコーナリング中にギャップと遭遇してもタイヤはあくまでも路面を捉え続け、瞬間的にグリップが失われるようなことは滅多に起きない。これもドライバーに強い安心感を与える理由のひとつとなっている。

Renault Lutecia Renault Sport Trophy
ルノー ルーテシア ルノー・スポール トロフィー

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最新ホットハッチの最高峰 (3)

欠点らしい部分がほとんど見つからない

いっぽう、ハンドリングの印象は兄貴分の「メガーヌ ルノー スポール」に比べてはるかに軽快感が強く、ステアリング操作に対して俊敏に反応してくれる。正直、最初に飛び込んだコーナーでは、操舵初期のゲインが思ったよりも高かったために必要以上に大きなヨーモーメントが発生し、テールスライドを引き起こしてしまったくらい。ただし、軽くリアが滑った程度ではESCが介入することもなく、わずかなカウンターステアで難なく態勢を立て直すことができた。この辺の味付けは、いかにもスポーツドライビングがわかっているエンジニアが開発に関わっているような感じがして、嬉しくなってくる。

RENAULT LUTECIA RENAULT SPORT TROPHY|ルノー ルーテシア ルノー・スポール トロフィー

RENAULT LUTECIA RENAULT SPORT TROPHY|ルノー ルーテシア ルノー・スポール トロフィー

パワーアップを果たしたエンジンのレスポンスは良好で、出力特性に不自然な段差もなかった。220psのパワーは1,290kgの車重に十分以上のパフォーマンスを与えてくれる。例によって6段DCTのセミATのみとなるギアボックスは、シフトスピードが20パーセントほど速くなっているそうだが、それでも不快なショックを与えることもない。それ以上に、マニュアルギアボックスのようにシフトに意識を奪われなくて済むのがありがたい。500ps以上のスーパースポーツカーではもはや常識となっている2ペダル ドライビングが、Bセグメントでも常識にとなるのはおそらく時間の問題だろう。

というわけで、ルーテシア ルノー スポール トロフィー、短時間の試乗では欠点らしい部分はほとんど見つからなかった。敢えていえば、かつてのルノー スポールモデルのほうがサスペンションにストローク感があってコーナリングではさらに粘ったよなぁ、と思わなくもなかったけれど、最新のルーテシアは当時とは比べものにならないくらい軽快で俊敏で洗練されている。だから、差し引きゼロどころか、いまのほうがありがた味はずっと増えている。というわけで、最新ホットハッチの最高峰として強力にお勧めできる1台。しかも価格は329万5,000円なんだから、夢のような話だと思いませんか?

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Renault Lutecia Renault Sport Trophy
ルノー ルーテシア ルノー スポール トロフィー

ボディサイズ|全長 4,105 × 全幅 1,750× 全高1,435 mm
ホイールベース|2,600 mm
トレッド 前/後|1,505 / 1,500 mm
最低地上高|125 mm
重量|1,290 kg
エンジン|1,618 cc 直列4気筒 直噴DOHC+ターボチャージャー
最高出力| 162 kW(220 ps)/ 6,050 rpm
最大トルク|260 Nm(26.5 kgm)/ 2,000 rpm
トランスミッション|6段 デュアルクラッチ
駆動方式|FF
タイヤ 前/後|205/40R18
サスペンション 前/後|マクファーソン / トレーリングアーム
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
価格|329万5,000円

問い合わせ先

ルノー コール

0120-676-365(9:00-18:00、年中無休)

           
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