ルノー ルーテシア R.S.に試乗|Renault
CAR / IMPRESSION
2014年12月29日

ルノー ルーテシア R.S.に試乗|Renault

Renault Lutecia Renault Sport|ルノー ルーテシア ルノー スポール

最新ルノーのホットハッチ

ルノー ルーテシア R.S.に試乗

ルノー新世代モデルの先鋒として登場した新型「ルーテシア(本国名、クリオ)」。そのルーテシアに、F1をはじめルノーのモータースポーツを手掛けるルノー スポールがイチからエンジニアリングをほどこしたモデルが「ルーテシア R.S.」だ。最高出力200psを発揮する2リッターターボエンジン、デュアルクラッチトランスミッションなど、最新の装備を得たルノーのホットハッチを塩見智氏がためす。

Text By SHIOMI SatoshiPhotographs by ARAKAWA Masayuki

もっと走れとけしかけてくるクルマ

まず言いたいのは、「ルーテシア ルノー スポール」は、言ってみればドS的性格をもつクルマだ。空いた山道を走らせていると、クルマのほうで、もっと踏め、もっと踏めとあおってくる。ずーっと「お前、そんなもんだっけ?」と言われつづけているかのよう。

自分の中のM気質をはっきりと自覚している僕にとってはたまらない一台だ。いやそんな安っぽい表現は失礼だ。車両のあらゆる部分がスポーツ走行を呼びかけてくる。“エコカー減税を適用されないクルマはクルマにあらず”といった感のあるいまの日本において、こうしたモデルをアフォーダブルな価格で出してくれるルノーに、まず喝采をおくりたい。

さて、ルーテシア ルノー スポールは、ノーマルのルーテシアをチューニングしてスポーティに仕立てているわけだが、まずルックスは、フロントグリルのF1を想起させるブレード、リアスポイラー、ツインエグゾーストパイプとその周りのディフューザーなどが専用に備わる。ホイールはノーマルより1-2インチ大きい。

いっぽう、インテリアはステアリングコラムにパドルが備わり、フロントシートがバケット形状のものとなる程度で、必要最小限の変更にとどまる。

エンジンは、ノーマルの1.2リッター直列4気筒DOHCターボから1.6リッター直列4気筒DOHCターボへ。最高出力はノーマルにくらべ80ps増しの200ps/6,000rpm、最大トルクは5.1kgm増しの24.5kgm/1,750rpmを誇る。トランスミッションはノーマル同様、6段デュアルクラッチ トランスミッション。ファイナルを含めギア比はそのままで、特に増強せずともルノー スポールのパワーを受け止めることができるそうだ。

最大のライバルのライバルとなるのはプジョー「208 GTi」だろう。最高出力はおなじ、最大トルクは3kgmほど208 GTiの勝ち(発生回転数は最高出力、最大トルクともにおなじ)。208 GTiはMTのみで、ルーテシアはデュアルクラッチのみというコントラストが面白い。この点と208 GTiは3ドアのみ、ルーテシア ルノー スポールは5ドアのみという点が、選ぶ際の決め手になりそうだ。どっちを選んでも後悔しないということは請け合う。

Renault Lutecia Renault Sport|ルノー ルーテシア ルノー スポール

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ルノー ルーテシア R.S.に試乗 (2)

ルノー スポールは半端なターボをつくらない

先代のルーテシア ルノー スポールは2リッターの自然吸気エンジンを7,100rpmまでまわすことで同程度の最高出力を得ていて、それはそれはスイートなエンジンだった。が、近頃はエンジンを7,000rpm以上まわすことは効率の面から量販車では事実上ご法度なので、新型では他社のスポーツモデル同様、過給器を付けることで太いトルクを稼ぐ方法がとられた。

“ルノー スポールは半端なターボをつくらない”というのは、ルノー「5 ターボ」から、あるいは70年代後半のF1におけるルノーからつづく伝統であり、新型ルーテシアにも受け継がれている。ピークパワーというよりも、トルクの出方や排気音の演出など、そこへ至る過程がドラマティックなのだ。また、少々逆説的な話だが、マニュアル変速時にエンジンの回転がリミットに当たるとビーッという警告音が鳴って、それがとても耳に障る音で、だからこそドライバーは盛り上がる。僕はそうだった。

やはりキレた走りでおなじみの「メガーヌ ルノー スポール」を見ればわかる通り、足まわりこそルノー スポールが最も得意なところというか、やりたい放題やっちゃうところ。

「われわれは最小限のボディロール、飛び抜けた直進性やコーナリング性能、応答性に優れたハンドリング、そして高い快適性といった万能性を求めるドライバーがホットハッチに期待するであろうすべての要素を取り入れたかった」とチーフシャシーダイナミクスエンジニアのフィリップ・メリメ氏は語る、とプレスリリースは語る。

実際には、高い快適性というのは言葉のあやで、ノーマルにくらべ、はっきりと高いボディ剛性を感じさせ、メガーヌ ルノー スポールほどではないにせよ、サスペンションは締め上げられている。とはいえ入力に応じてきちんと動くし、タイヤもハイグリップだが(テスト車はダンロップSPスポーツマックス)、幅が205cmとノーマルの上級グレードとおなじ太さにとどめられているため、街場のチューニングカーのように、パワーアップのほぼすべてを極太タイヤでなんとかしてますといった無理やり感はない。きちんとコストをかけてボディとシャシー全体でパワーを受け止めている印象だ。

Renault Lutecia Renault Sport|ルノー ルーテシア ルノー スポール

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ルノー ルーテシア R.S.に試乗 (3)

シャシー カップとシャシー スポール

箱根ターンパイクの大観山から小田原に向けてスタート。コーナーでめっぽう速い。わずかな操舵にもクルマが即座に反応してくれるし、曲がった路面でもうねった路面でもLSD代わりの電子制御デフがトラクション抜けを許さない。フロントブレーキはノーマルより径が増し、リアはドラムからディスクに換えられていて、ま、ほとんどはフロントのおかげだろうが、よく止まる。

センターコンソールに「R.S.ドライブスイッチ」というのがあって「ノーマル」「スポーツ」「レース」という3つの走行プログラムを選ぶことができる。ノーマルは街乗り用。変速スピードは0.2秒。スポーツを選ぶとアイドリング回転数が250rpm上がって1,000rpmとなり、アクセルレスポンスも向上し、横滑り防止装置の介入が遅くなる。変速スピードは0.17秒。レースはシフトレバーを倒してマニュアル変速とした時のみに選択可能で、変速スピードは0.15秒となる。

ただし、この点はこのクルマで唯一気に入らないのだが、レースモードでは横滑り防止装置が否応なく解除される。レースモードといったって、実際にトラックでのレースを想定しているわけじゃなく、レース気分モードのはずだ。解除できてもよいが、生かしておくこともできるようにしてほしい。

ほかのホットハッチにないルノー スポールならではの特徴として、シャシー カップとシャシー スポールという2種類の仕様を選ぶことができる。カップはスポールよりもスプリングレートがフロントで27パーセント、リアで20パーセント高く、ステアリングがよりクイックになる。スプリングのちがいから全高が3mm低い。ホイールがカップは18インチ、スポールは17インチ。価格はカップが317万8,000円で、スポールは208GTi(308万円)とほぼおなじ307万5,000円。

ここまで書いた走りの印象はカップでのもの。

あとから乗ったスポーツはほんの少し、でも明確に文化的な乗り味となる。買うとなったら迷うにちがいないが、基本的には「どうせルノー スポールを買うんならカップでしょ」と言いたい。価格差は10万円だし、スポールだって途端に快適になるわけじゃないから。

ワインディングロードでよりオーガズムに達することができるのはカップだ。ただし、ほかでオーガズムを得られる人、要するに恋人や家族をもつひとはスポールのほうがよいかもしれない。もちろん、カップを買った人を孤独と決めつけるものではない。もう一台持ってるんだよね、きっと。

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Renault Lutecia Renault Sport|ルノー ルーテシア ルノー スポール
ボディサイズ|全長 4,105 × 全幅 1,750 × 全高 1,435 mm
ホイールベース|2,600 mm
トレッド 前/後|1,505 / 1,500 mm
重量|1,280 kg
エンジン|1,618cc 直列4気筒 ターボチャージャー付き
ボア×ストローク|79.7 × 81.1 mm
圧縮比|9.5
最高出力| 147 kW(200 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240 Nm(24.5 kgm)/ 1,750 rpm
トランスミッション|6段デュアルクラッチ(EDC)
駆動方式|FF
サスペンション(前)|マクファーソン/コイル
サスペンション(後)|トレーリングアーム/コイル
タイヤ 前/後|(シャシースポール)205/45R17 (シャシーカップ)205/40R18
ブレーキ(前/後)|ベンチレーテッドディスク / ディスク
0-100km/h加速|6.7 秒
価格|(シャシースポール)307万5,000円 (シャシーカップ)317万8,000円

ルノーコール
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