ランボルギーニ ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズ|Lamborghini
総勢50台もの猛牛が、創立50周年を祝うパレードランで盛り上げる
ランボルギーニ ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズ
富士スピードウェイで開催されたランボルギーニと、パートナーである高級時計メーカーのブランパンが共催する「ランボルギーニ・ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズ」の第4ラウンド、ここでは、ジェントルマンドライバーたちの熱戦が2日間にわたって繰り広げられ、同時にランボルギーニ50周年を祝うべく、全国からレアなランボルギーニが50台も集まり、華やかなパレードランを行ったのだ。
Text by SAKURAI Kenichi
スタートは、いまから5年前となる2009年
ご存知のように2013年は、イタリアのスーパーカーメーカー、ランボルギーニの創立50周年にあたるメモリアルイヤーであった。イタリアで50周年記念イベントも催されたほか、少数限定生産のスペシャルモデル「ヴェネーノ」やそのオープン版となる「ヴェネーノ ロードスター」も発表した。そして、全世界のランボルギーニ ファンも、各国で歴史の節目となるこの年を記憶に刻むべく、さまざまなイベントをおこなったのだ。
2013年9月20日(土)から22日(日)に富士スピードウェイで開催されたランボルギーニと、パートナーである高級時計メーカーのブランパンが共催する「ランボルギーニ・ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズ」の第4ラウンドも、その記念すべき華やかセレブレーションの場となった。
ランボルギーニ ブランパン スーパートロフェオは、ランボルギーニ「ガヤルド」をもちいたワンメイクレース。スタートは、いまから5年前となる2009年。マニュファクチュールとしても名高い高級時計メーカーの「ブランパン」をパートナーに、イタリア・モンツァや英国・シルバーストーン、ドイツ・ホッケンハイムなど、欧州グランプリコースで、熱戦を繰り広げてきた。
日本では、昨年より「ランボルギーニ ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズ」としてレースを開催している。レースにはプロドライバーだけでなく、おおくのジェントルマンドライバー(アマチュアドライバー)も参戦。世界有数のスーパーカーコレクターや、公道ではおもう存分ランボルギーニのポテンシャルを味わえないという理由から、このレースへの参戦を決めた猛牛使いたちも少なくない。
総勢50台もの猛牛が、創立50周年を祝うパレードランで盛り上げる
ランボルギーニ ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズ (2)
世界の舞台に迫るタイムで競う
ジェントルマンレースとはいえ、シリーズはアジア各国を転戦しながら一度のラウンドで2レースをおこなうという本格的なプログラムになっている。つまり、たんなるリッチマンたちのお遊びではないということだ。それは、レース車両「ブランパン・スーパートロフェオ」にもいえ、ピレリのコントロールタイヤを使用するワンメイクマシンながら、そのポテンシャルは高い。
たとえば今回の予選で、#63 Johnson Yaptonaga(インドネシア)/織戸学(日本)のペアが、1分43秒412のタイムたたき出したことでも、マシンの実力はじゅうぶんに理解できるはずだ。参考までに、予選トップタイムは、1分43秒121。このタイムは、WEC(FIA世界耐久選手権)のLMGTE Proクラスに参戦するポルシェ911RSR(997)がたたき出した2012年のレコードタイムに、わずか数秒の遅れでしかない。
つまり、WECを戦う上位マシンと、ほぼ同等のパフォーマンスをもっているということにほかならないのだ。
「ブランパン・スーパートロフェオ」では、ボディのカーボン化やポリカーボネートのウィンドスクリーンなどの使用により、市販のガヤルドにくらべ100kg以上マイナスの1,300kgに抑えた軽量なボディに、570psを発生するV10 エンジンを搭載。パワーウェイトレシオは、2.28kg/psである。
ちなみに2013年モデルは、前シーズンを戦ったマシンから空力性能を大幅に改善されている。
ランボルギーニ・ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズのコーディネーター、クリスチアーノ・インヴェルニ氏によると「(2012モデルにくらべ)20パーセントアップのダウンフォースを発生させることに成功し、GT3マシンなみのポテンシャルを得ている」と説明される。「セッティングによっては128kgfから160kgfまでのダウンフォースを発生可能で、これは通常のガヤルドの2~4倍にもあたる」というのだ。
50周年を祝う、猛牛たちのパレード
初日のレース前には、日本全国から集まった「アヴェンタドール」や「ガヤルド」「ムルシエラゴ」「ディアブロ」「クンタッチ(カウンタック)」といった50台ものランボルギーニが、グランプリコースをフルに使用した豪華なパレードランをおこない、来場者からの注目を集めた。なかにはCカーのシャシーにランボルギーニ「カウンタック クワトロバルボーレ」のV12エンジンを搭載した、世界に1台しか存在しないランボルギーニ「カウンタックQVX」の姿もあり、カメラにおさめる列が絶えなかった。
マニアックな自動車専門誌ぐらいでしかお目にかかれない、幻のカウンタックQVXの登場はサプライズだったが、最新モデルの展示やランボルギーニのデザインで設営されたオーナーラウンジなど、各国のランボルギーニ フリークたちが集う社交場としても、このレースの開催意義はおおきい。
ラグジュアリーなイメージのラウンジには、ランボルギーニの正規ディーラーとおなじ、バルセロナチェアが置かれ、開催パートナーである高級時計メーカー「ブランパン」のコレクションをディスプレイ。最新作が参加者たちの目をたのしませていた。いずれランボルギーニ オーナーたちの腕にも、この「ブランパン」の新作が巻かれるはずである。
総勢50台もの猛牛が、創立50周年を祝うパレードランで盛り上げる
ランボルギーニ ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズ (3)
ヴィンケルマン氏、日本について語る
今回のレースのために、アウトモビリ・ランボルギーニ代表兼CEOのステファン・ヴィンケルマン氏も来日しており、お話をうかがう機会を得た。インタビュー自体は2013年9月末のものなので、その点、若干ふるい話が混じっていることは御容赦いただきたい。
ヴェンケルマン氏は「日本は、ランボルギーニとってとても重要な国です。顧客のレベルが非常に高く、アジアマーケットをリードする存在であり、さらにアジアでのモータースポーツを展開するのにとても重要な基盤だとかんがえています。おおくのアジアの国がこれからクルマやレースをたのしむという過程にあるのにたいして、日本にはクルマをたのしむ歴史と土壌がすでにあり、欧州や北米とかわらないほどレースへの理解があります。
F1の開催国としても長い歴史をもっているのは、みなさんがご存知のとおりです。ランボルギーニが50周年をむかえたこの年に、グランプリコースである富士スピードウェイでわれわれのレースが開催できることは、この上ない歓びです。同時にわれわれが日本市場をいかに重要視しているのか、重ねて強調することができたはずです」と、語った。
創立からしばらく、ランボルギーニはレースを一切放棄していた時期があった。しかし50年の歴史の中で、ランボルギーニはディアブロでワンメイクレースをおこない、F1に参戦し、モータースポーツとの絆を深めてきた。いまやランボルギーニとサーキットは切っても切れない仲である。
「ランボルギーニのオーナーは、実用性や、なにかの必要に迫られてランボルギーニを購入しているわけではないでしょう。夢を実現したり、自身のパッションを表現するひとつとして手に入れているはずです。もちろん、スピードやドライビングの楽しみのために選ばれることも多いでしょう。ですからランボルギーニとモータースポーツは、切り離すことができないのです。
レースやサーキットのイベントを継続することで、未来のオーナーやファンにランボルギーニの世界観を味わっていただく機会をつくりたいとおもっています。SNSやウェブサイトとおなじように、リアルイベントにもちからを入れて充実させ、ランボルギーニのフルグリッドを完成させたいとおもっています」
総勢50台もの猛牛が、創立50周年を祝うパレードランで盛り上げる
ランボルギーニ ブランパン スーパートロフェオ アジアシリーズ (4)
ランボルギーニ、次の50年へ
来年にはガヤルドの後継モデルの発表が控え、スーパーSUVモデル「ウルス」の市販にむけての開発も急ピッチで進むランボルギーニ。スーパースポーツの世界につねに刺激をあたえる存在として、注目していきたい──と、まとめたいところだったが、気になることがひとつ。
「いまの時点でいつとは言えませんが、来年の早いタイミングでガヤルドの後継モデルをお見せいたします」という、アウトモビリ・ランボルギーニ代表兼CEOのステファン・ヴィンケルマン氏の言葉を信じれば、2014年3月のジュネーブ モーターショーの前後には、期待のニューモデルが登場するはずだ。(編集部注:ガヤルド後継の「ウラカン」は2013年12月に公表され、その一般向けお披露目は予想どおりジュネーブになると目される)
そうなると、このガヤルドをベースにした「ランボルギーニ・ブランパン スーパートロフェオ」は、来年以降どうなるのか。ふたたび、このレースのコーディネーター、クリスチアーノ・インヴェルニ氏に質問の矛先を向ける。
「じつは、次期モデルのレーシングバージョンは、すでにサンタアガタの社内で開発済みです。ニューモデルの登場とほぼ同時に、レーシングマシンもお見せできるかも知れません。新型登場後のスーパートロフェオ レースの最初の1年はガヤルドとの混走でおこない、翌シーズンには新型のワンメイクに切り替わるというタイムスケジュールを予定しています」
ガヤルドのレーシングマシン、スーパートロフェオは、ランボルギーニの依頼により、ドイツのライターエンジニアリングが開発をおこなった。これはすでにガヤルドの市販モデルがあったからだ。しかし、今回は市販前のモデルがベースで、レースで使用するマシンの切り替えをかんがえれば、市販車と同時にレーシングマシンを開発しなければならない。当然社外のレーシングコンストラクターには頼めないという事情にもなるほど、合点がいく。
「ランボルギーニ・ブランパン スーパートロフェオ」は、今後も継続され、ガヤルドとの混走からいずれ新型モデルでのワンメイクレースに切り替わる。あたらしいマシンの勇姿をサーキットで見ることができる日は、そう遠くはない。ますますこのレースに注目したくなったのは、私だけではないはずである。