技術と文化の両面からF1を支えるピレリ|PIRELLI
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2015年4月3日

技術と文化の両面からF1を支えるピレリ|PIRELLI

PIRELLI|ピレリ
F1黎明期からつづくパートナーシップ

技術と文化の両面からF1を支えるピレリ

初戦オーストラリアGPから最終戦ブラジルGPまで、今シーズンも全19戦に渡り開催された世界最高峰のモータースポーツ「Formula One」。F1を純然たる競技として、またテクノロジーの発展の場として黎明期から支えつづけてきたピレリは、そのいっぽうで、エンターテイメントとしての魅力も高めてきた。1950年からつづく長いF1の歴史の中で、ピレリが果たしてきたその役割とは──

Text by AKIZUKI Shinichiro(OPENERS)

1950年からつづくピレリとF1の関係

世界最高峰のモータースポーツ「Formula One」。1950年にスタートし半世紀以上もの歴史を持つこのグランプリは、今シーズンも全19戦を開催。初戦オーストラリアGPを皮切りに最終戦ブラジルGPまで、約9カ月間に及ぶ熾烈な争いが繰り広げられた。


日本へは第15戦として、10月11日~13日の3日間にわたりF1サーカスが上陸。その舞台となった鈴鹿サーキットは、本田技研工業の創始者、故本田宗一郎氏によって造られた日本初のレーシングサーキットとして知れるだけでなく、スリリングかつチャレンジングなレイアウトを持つコースとして、多くのドライバーから愛される世界屈指の名門コースだ。

現在のF1マシンは、2.4リッターの自然吸気V型8気筒エンジンに、運動エネルギー回生システムである「KERS」を搭載することで、最高出力は約700-750psものパワーを発揮。それでいながら車両重量は600-700kgと超軽量なボディを持つ。重量1kg当たりの馬力で比べると、実に一般的な乗用車の6倍以上にもなる強大なパワー。それだけに、マシンの足下を支えるタイヤも相応のスペックが必要になることは明らかだ。

イタリアのタイヤメーカー「ピレリ」は、F1世界選手権が開催された1950年の当初から参入する公式サプライヤーのひとつ。フェラーリをはじめ、アルファロメオ、マセラティといった名だたるワークスチームのサポートをおこなってきた。2011年からスタートしたタイヤ供給は、同社にとってF1活動第四期目。参戦200勝目にして撤退した1991年から、20年ぶりの復活である。

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タイヤのマネージメントこそが勝敗を握る

ピレリが鈴鹿でのレースのために用意したタイヤは、4種類あるドライタイヤの中でもっとも硬い組み合わせである「P Zeroオレンジ・ハード(プライム)」と「P Zeroホワイト・ミディアム(オプション)」のふたつ。このタイヤが選ばれた目的は、130Rやスプーンなどの高速コーナーでの高い負荷に対応するため。


この130Rと呼ばれるターン15は、7速、310km/hで駆け抜けるシーズン中で最速のコーナー。マシンは、3.1Gの横方向の荷重を受けながら、最大の空力ダウンフォースを得ながら走行をおこなう。このため鈴鹿でのレースは、タイヤにとってシーズン中でもっとも厳しい動作状況が課されるという。

故にマシンが適正にセットアップされていないと、高レベルの負荷によってタイヤにブリスターが発生する可能性がある。このブリスターとは、特にタイヤのショルダー部が局所的に発熱しすぎて沸騰し、タイヤ表面が膨れ上がったり気泡ができたりする現象のこと。トレッドの最高温度は110度にも達し、左フロントタイヤがもっとも酷使される。これができるとタイヤの性能が極端に悪化。グリップはなくなり、もちろんタイムも落ちる。現代のF1にでは、タイヤのマネージメントこそが勝敗を握っているといっても過言ではない。

1回のレースで各ドライバーには、プライム6セットと、オプション5セットが供給され、予選と決勝では各3セットのみが使用可能となっている。決勝では、「P Zeroオレンジ・ハード(プライム)」と「P Zeroホワイト・ミディアム(オプション)」両スペックの使用義務がある。


この“オレンジ”や“ホワイト”といったタイヤの名称は、レースをよりエキサイティングにするための色分けであり、走行中のマシンがいまどのタイヤを装着しているのか、観客が視覚的にすぐ判断できるようにとほどこされたもの。タイヤの進化はもちろん、エンターテイメントの面でもF1は日々進化しているのだ。

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ピレリが果たしてきたその役割

F1を観戦する上で、もうひとつ忘れてならないのが「パドッククラブ」の存在だ。これはF1の醍醐味をもっとも味わえる場所として、ピットの真上にあるホスピタリティラウンジに設置された特別な観戦ルーム。鈴鹿サーキットでは、フェラーリ、マクラーレン、メルセデス、ロータスなど各チームが専用のルームを完備。当然、オフィシャルタイヤサプライヤーであるピレリのラウンジも用意されいる。今回OPENERS編集部は特別にお邪魔させていただいた。

ホームストレートを300km/hで疾走するマシン、目の前で繰り広げられる緊迫のピットワーク。F1GPが開催されるたび各国のVIPが集うこの場所は、もちろん日本でもそのステイタス性の高さは別格だ。室内ラウンジだけでなく、テラス席も利用することが可能で、食事やお酒を楽しみながら、観戦スタイルに合わせた大迫力のF1サウンドが楽しめる。

決勝当日はレース直前にもかかわらず、ラウンジにはロータスのドライバー、キミ・ライコネン氏とロマン・グロージャン氏の2名がサプライズゲストとして登場。突然現れた来客に、ファンは総立ち。滞在時間にしてみればわずか十数分だが、こんな演出もパドッククラブならではといえる。くわえて、レースがスタートするやいなや、つい数時間前に会ったばかりのロマン・グロージャン氏がトップを快走するのだから、これで盛り上がらないはずがない。

地上波での放送が終了し、また日本メーカー、日本人ドライバー不在の影響もあって、近年日本での人気に陰りが見えはじめていることは事実だ。

だが2014年、F1はあらたな時代へと突入する。V6ターボエンジンの採用を筆頭に、かつてないほどの大規模なレギュレーションの変更がおこなわれ、また2015年、ホンダはマクラーレンとともにエンジンサプライヤーとしてF1の舞台に復活することがすでに決定している。かつての名コンビの復活にはやくも胸躍らせているファンも少なくないはずだ。

F1という世界最高峰のモータースポーツを、純然たる競技として、またテクノロジーの発展の場として黎明期から支えつづけてきたピレリは、そのいっぽうで、エンターテイメントとしての魅力も高めてきた。1950年からつづく長いF1の歴史の中で、ピレリが果たしてきたその役割は計り知れない。その躍進は止まることなく、今後も私たちの生活を、技術と文化の両面から潤してくれることだろう。

ピレリタイヤ
http://www.pirelli.com/

           
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