古典車と過ごす優雅な週末|Chantilly Art & Elegance Richard Mille
Chantilly Art & Elegance Richard Mille
シャンティ・アート&エレガンス・リシャール・ミル
古典車と過ごす優雅な週末
今年で4回目を迎えた「アート&エレガンス」は、夏に欧米各地で開催されるヒストリックカーの祭典を締めくくるイベントとして近年注目を集めている。クルマに美食、そしてアートを組み合わせた、洒落たエンターテインメントの模様を大矢アキオ氏がレポートする。
Photographs by Akio Lorenzo OYA/ Mari OYAText by Akio Lorenzo OYA
コンクールシーズンを締めくくる夢の祭典
欧州や米国でヒストリックカーを愛する紳士淑女の社交場といえばコンクール・デレガンスである。
欧州では毎年5月イタリアで開催される「コンコルソ・ヴィラ・デステ」をスタートに、夏の間各地で催される。
そうしたシーズンのエピローグを飾るイベントとして近年にわかに注目されているのが「アート&エレガンス」だ。第4回の今年は、2017年9月9日と10日に開催された。
ストーリーはフランス屈指の古典車イベント「ルマン・クラシック」のオーガナイザーであるパトリック・ペーター氏が、世界的実業家アーガー・ハーン氏の子息、ラーヒム・アーガー・ハーン氏と意気投合したことに始まる。
そしてハーン財団が所有するパリ北郊のシャンティイ城こそ、理想の古典車コンクール会場であるという結論に達した。
クルマに美食、そしてアートを組み合わせた、夢の祭典である。
ちなみにホイップクリームの異名である「クレーム・シャンティイ」の語源となったのは、グルメの貴族が集ったことで知られるこの城である。
スポンサーには新進にしてラグジュアリーウォッチ界で強い存在感を示すリシャール・ミル、後援にはフランス文化・通信省――と、フルコースディナーのメニュー同様の満腹感を与える名前が連なる。一角にはパブロ・ピカソとフランシス・ベーコンの絵画展も設けられた。
審査員48名のリストも華やかだ。かつてフェラーリF1チーム監督として一時代を築いたジャン・トッド、俳優ジャン-ポール・ベルモンドの子息でレーシングドライバーでもあるポール・ベルモンド、そして「ピンク・フロイド」のドラマー、ニック・メイソンと、欧州自動車界のVIPが名を連ねた。
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古典車と過ごす優雅な週末 (2)
威容を誇るパリならではの光景
エントリーリストに並んだ車両は82台に及んだ。
最古は「電気自動車の1世紀」のカテゴリーに参加した1899年「ジャメ・コンタント」。もっとも若いものは「ル・マン24時間レースのオープンタイプフェラーリ」に出た1997年フェラーリ「333P」だった。
ちなみに、カテゴリー数は16で、ヴィラ・デステの8カテゴリーからすると2倍である。
さらに、2月パリで開催される「レトロモビル」ショーにたびたび展示されてきたプジョーやルノーの企業コレクションも混じっている。
そのため、硬派なエンスージアスト視点からすれば、少々ポピュリズムに傾いているのでは? という声が出るきらいがある。
しかしながら、ブガッティの中でも至宝とされる「57S」だけでも4台、フェラーリが26台が出展された会場の風景は、「威容」という言葉がふさわしい。欧州で特に富が集まるパリでなければ実現し得ない光景である。
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古典車と過ごす優雅な週末 (3)
趣向を凝らしたショーも魅力
またコンセプトカーとオートクチュールのモデルによるパレード、フランス随一の競走馬育成地であることを象徴する馬術ショーなど優雅なアトラクションは、古典車と同様の拍手をもってビジターに迎えられた。
圧巻だったのは、歴代フランス大統領公用車のパレードである。保管を担当しているDSの歴史部門「DSエリタージュ」によれば、ド・ゴール時代のものから常に可動状態を維持しているという。
その中の1台で名ボディ製作工房「アンリ・シャプロン」による1968年シトロエンDS21プレジダンシエルは、ド・ゴールおよびポンピドー両大統領に愛用されたものだ。
全長は6.53メートル。ときの米国大統領専用車リンカーンよりも長かったという。フランス人のプライドをくすぐるスペックだ。
ところでこの「アート&エレガンス」は、ビジターにもドレスコードが課せられている。内容はというと「一般的に優雅さとは、やや控えめなものを指しますが、均衡さえとれていれば少々の奇抜さも許されます」という、かなり遠回しなニュアンスだ。
さらに今年はときおり小雨に見舞われる肌寒い天気となり、たびたびコートやブルゾンを羽織る必要があった。
しかし多くの来場者たちは、普段よりもちょっと洒落たムードで、古城での週末イベントを愉しんだ。
さらにドレスアップしたい向きには、庭園内のテントに、帽子店やメイクアップスタジオが出張設営されている。
ビジターも風景の一部になれる、洒落た初秋のエンターテインメント。オーガナイザーによると今年は1万6,300人の来場者に恵まれた。新たなかたちのコンクール・デレガンスが、静かに定着しつつある。