レクサスのブランド思想に繋がる「YET(二律双生)」|Lexus
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レクサスのブランド思想に繋がる「YET(二律双生)」
レクサスが、今年も「ミラノ デザイン ウィーク」に出展した。10回目となる今回のテーマは「YET(二律双生)」。光の柱によるインスタレーションをはじめ、過去の出展内容をもとにした作品展示などを行うとともに、恒例の「レクサス デザイン アワード 2017」のプロトタイプも並べられた。今年も現地を訪れた小川フミオ氏のリポート。
Text by OGAWA Fumio
古典的でありながら最先端
「ミラノ デザイン ウィーク」が2017年4月4日から9日にかけて開催。そこでレクサスの展示が大きな話題を呼んでいた。
国際見本市会場を使う家具の見本市であるいわゆるミラノ・サローネと、市街地の各所で家具に限らずあらゆる“デザイン”がお披露目されるフオリ・サローネを総称してデザインウィーク。
興味深い出展は日本の企業にも多かった。なかでもユニークなコンセプトを大きなスケールで見せるという点でも、レクサスは一頭地を抜いていた感がある。
毎年、大胆な発想に基づいたインスタレーション(空間まで作品とする展示)を見せてくれるレクサス。2017年の主題は「YET」だった。
ミラノ中心部にある「トリエンナーレ・モダンアート美術館」を使った展示スペースは、中に足を踏み入れると真っ黒な空間に圧倒された。
そこに浮かびあがったのは、天井に届きそうな3本の光の柱。制作はネリ・オックスマン氏と、同氏がマサチューセッツ工科大学で仕事をしているメディテイテッド・マターグループ。
柱はガラス製で、細いチューブ状のものを巻いて有機的な造型を実現。ブロックで作り、それを15個積みかねて柱にしている。近くで観ても作りはじつに緻密。透過光が美しい。
コンセプトは「古典的でありながら最先端」。英題は「Ancient Yet Modern」となる。二つの形容詞を「YET」が結びつけている。
その面白さは、ガラスを使ったところにある。「ガラスは6000年前からおなじみの素材。でも造型には最新の技術を使っています」。オックスマン氏の説明だ。
細いガラスのチューブの製造はいわば古典的。クラフツマンシップによるものだ(作るのはかなり大変だったとか)。
いっぽう形状は3Dプリンターという最先端技術で決定。重ねて安定する断面形状。美しい透過光を作るフォルムもやはりコンピューターによる緻密な計算があったそうだ。
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今年で10回目の出展
ミラノ・デザインウィークでレクサスが展示を行ったトリエンナーレ。中心部とはいえ、多くのインスタレーションが集まるブレラ地区、トルトーナ地区、チンクエヴィーエ地区などからは少し距離を置く。
それでも多くの観客が訪れてネリ・オックスマン氏の光の柱を楽しんだ。とりわけ夜になってからの来場者の数は驚くほど多かったとのちにレクサスの関係者から聞いた。
トリエンナーレのあるセンピオーネ公園にはライブのための特設会場ができたりして、ここでもお祭り気分が盛り上がったためだろうか。
いずれにしてもレクサスの展示はそのひとたちの期待に十分応えていたと思える。オックスマン氏の光の柱に加えて、展示は多様だったからだ。
ひとつはレクサス・デザインアワードの受賞作の展示。そのさきには天井からの大きな垂れ幕が出現する。
「スタティック イェット ダイナミック(静的でありながら動的)」と題されている。この展示は躍るような光の投影に驚かされる。
その光は見ているうちにレクサス(UXコンセプト)として像を結び、クルマの画像が外に向かって走り出す。たしかに静と動が同居した作品である。
展示会場の最後には「レトロスペクティブ」といういっぷう変わったパネル展示。これまで9回のレクサスの展示を年ごとにまとめたものだ。
変わったと書いたけれど、面白い、と訂正したほうがいいかもしれない。(映画と同じく1秒)24コマで1つの展示が構成されている。歩きながら眺めるとパラパラ漫画のように画像が動くのを楽しめるのだ。
「レクサスがデザインウィークに初めて参加したとき、ほかには自動車メーカーはありませんでした」。LEXUS INTERNATIONALの澤良宏Presidentは会場で語ってくれた。
「やり続けてきたのは、新しいものを生み出す力という点で、建築やアートがライフスタイルブランドであるレクサスと相性がいいからです」
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レクサス デザイン アワード受賞作品も展示
2017年ミラノ デザイン ウィークでレクサスは第5回目になる「レクサス デザイン アワード」受賞作を展示。それは先に触れたとおり。さらにグランプリがこの場所で発表された。
「次世代のクリエイターを育成・支援し、より良い社会づくりを目指し(……)」。レクサスではこのような目標をかかげて、優れたデザインを一般公募してきた。
応募は63カ国から1,152作品。そこから8つのパネル展示と、4つのプロトタイプ制作のための受賞作が選ばれた。
プロトタイプを制作した受賞作にだけ簡単に触れておこう。1人は英国RCAで学ぶ中国のジア・ウー氏。提案は生野菜を使った楽器「プレイヤーフルート」。
2人目は米国のジェシカ・フーグラー氏。面によって異なる色をもつピースを作り、それをつなぎ合わせてラグ(一種の織物)を構成。ポイントはピースを回転させることで模様が変化するところだ。
3人目はソウルの梨花女子大出身のアーラン・ウォン氏。部屋を構成する要素がすべてパッキングされたキャリーオン(スーツケース)を提案。
4人目は「ピクセル」を提案した吉添裕人氏。小さな単位からなる構造体で、特徴は反対側の光が反射で見えるところにある。
緻密な計算と厳選された素材で作られたピクセルでつい立てのような構造体を組み上げる。反対型にひとが立てば、なんとなく、そのかたちが分かるし、服の色もそれなりに反映する。
「新しい時代の障子として考えました」。会場で吉添氏が語ってくれた言葉はインパクトがあった。この作品がグランプリを受賞したのである。
「“YET”というテーマのもと、創造力豊かな素晴らしいものでした」(デザイン評論家アリス・ホーソーン氏)と審査員の評価も高かったこれらの作品。共通しているのはどれも「YET」の思想を意識したものだということだ。
レクサスでは「YET」を「二律双生」としている。同ブランドのクルマの背景にある思想なのだという。
たとえば「高いドライビングパフォーマンスと責任ある環境性能の調和」(レクサス)。ここから新しい時代に向けて走り出すのがレクサスというのである。