Lexus International President 福市得雄氏にインタビュー|Lexus
Lexus|レクサス
Lexus International President 福市得雄氏にインタビュー
常に人間が中心にあるべき
1月に開催された北米自動車ショーにおいて新型「LS」を発表したレクサス。なにかとSUVがもてはやされる昨今において、レクサスはセダンをどう位置づけているのだろうか。そして、先進的安全技術や自動運転が注目されるなか、今後レクサスはいかなるクルマをつくっていくのか。同ブランドを率いるLexus International Presidentの福市得雄氏にインタビューした。
Photographs by ARAKAWA MasayukiText by OGAWA Fumio
スピンドルグリルは自然に出来上がった輪郭
1月にデトロイトで開催されたばかりの北米自動車ショーで、新型「LS」が公開されて話題になっているレクサス。日本でも「IS」をはじめとする既存車種のテコ入れで魅力が増すなど2017年は話題性がたっぷりだ。
大型ラグジュアリークーペの「LC」や、販売絶好調の「RX」や「NX」というSUV系もレクサスブランドを構成する重要なカテゴリー。昨今のトレンドでもある。でもやはり魅力的なセダンを作ってくれてこそファンとしては嬉しいもの。
マイナーチェンジで走りの質を高めたと謳われる「IS」の試乗会を舞台に、Lexus Internationalの福市得雄プレジデントにレクサスセダンについて、今後のありかたを含めて語ってもらったインタビューをお送りする。
――今回プレスリリースで「レクサスの走りを象徴するFRスポーツセダン」を謳うISのマイナーチェンジがあり、北米自動車ショーでは5代目になる新型LSの発表もありました。米国や日本ではSUVがトレンドの感もありますが、セダンに対する思い入れは?
「セダンかSUVかという選択はないのではないかと思っています。セダンにはSUVでは味わえないスポーティな操縦性の可能性があります」
――SUVもポルシェ「マカン」などはスポーツセダン顔負けの走りをしますが。
「スタイリング的な魅力も忘れてはならないと思います。ポルシェの例でいうと「パナメーラ」。私はこのクルマはSUVにはない魅力的な内容を持っていると思います。もちろん走りを含めてです」
――LEXUSも同じですか。
「はい。低重心によるスポーティなハンドリングという点ではSUVよりセダンに分があると思いますし、大胆なスタイリングコンセプトもセダンには未知の可能性があるのではないでしょうか。パナメーラはそこをうまく掘り起こしたモデルです」
――新しさを作っていくなかでレクサスを象徴しているスピンドルグリルの扱いはどうなっていくでしょうか。
「スピンドルグリルは空力的に造型された車体のとんがっている部分を結んで孔を空けたとでもいうべき、自然に出来あがった輪郭なのです。他社との差別化しか考えていなかったら説得力のない造型になってしまいますが、この考え方でいけばて古くならないと思っています」
FCV(燃料電池車)が増えたりする未来にLEXUSはどう対応していくのだろう。
Lexus|レクサス
Lexus International President 福市得雄氏にインタビュー
常に人間が中心にあるべき (2)
シド・ミードが描いたようなクルマが理想型
Lexus Internationalの福市得雄プレジデントへのインタビュー。先進的安全技術や自動運転がクローズアップされている今、従来の高級という概念が薄れてきているともいえる。レクサスの考える“高級”とはいかなるものだろう。
――レクサスが考える高級とはいかなるものでしょうか。
「うちにはトヨタブランドとレクサスブランドとがあります。前者は比較的安価で品質のいいものを提供しようという方針でクルマを作っています。カバーするジャンルは多岐にわたります。いっぽうレクサスはさまざまな高級車に乗り継いできた方が次に乗るクルマという位置づけでしょうか」
――つまり既存の高級車の総決算的な存在であるということでしょうか。
「デザイン、走り、品質、販売店の対応など評価基準が高い方々のお眼鏡にかなうクルマづくりを心がけています」
――ジャーナリストとしてはレクサスのライバルをドイツ車と考えてしまいがちですが。
「ラグジュアリーセグメントではやはり強いですからね。でもたとえばメルセデス・ベンツはトラックからコンパクトカーまであらゆる分野を手がけています。その意味ではドイツではアウディが我われに近いかもしれません」
――LEXUSが独自性を出していくとしたらどんな方向性でしょうか。
「ダウンサイジング化で排気量が小さくなれば、本来ならクルマのプロポーションやパッケージングが変わります。エンジンルームという言い方だって古くなるでしょう」
――新型LSではFCV(燃料電池モデル)も話題に上がっていますが。
「主市場のひとつ米カリフォルニア州のLEV(低排出ガス)規制はレクサスにとって重要です。そのため流れとしては電化もFCVも考えています。いまはまだ水素タンクも大きいですが、将来はコンパクト化もありえます。開発を続けていくことが重要です」
――スタイリングもそうなると変わりますか。
「高級セダンのイメージをパナメーラが変えてくれました。従来のかたちにあまりこだわらず、スタイリングに新しさと、少しの遊びを入れていけたら、より魅力的になるだろうなと思っています」
――理想型がありますか。
「米国のシド・ミード(もとフォードのデザイナーで1979年の画集「センチネル」で表現した未来的な世界観が世界中に影響を与えた)が描いたようなクルマです(笑)」
――映画「ブレードランナー」(1982年)の車両デザインもミードですね。
「ああいうクルマが欲しいです。重心位置をうんと低くしたセダンで、乗り降りは多少大変かもしれませんが、乗ったら素晴らしい走りが体験できるというのが、ひとつの理想です」
――自動運転にポジティブですか?
「どっちか一方というのではないと思っています。高速道路では自動運転で、街中では自分の思い通りにとか、選べるのがいいでしょう。なにはともあれ常に人間が中心にあるべき、というのがレクサスの考えです」
福市得雄|FUKUICHI Tokuo
Lexus International President
1951年生まれ。多摩美術大学美術学部卒。1974年、トヨタ自動車工業(当時)入社。デザイン部部長、デザイン統括部部長を経て、2011年トヨタ自動車常務役員就任。同年デザイン本部本部長就任。Lexus International Executive Vice Presidentを務めたあと、2016年にLexus International Co.のPresidentに。先進技術開発カンパニー先行デザイン担当を兼任しながら現在にいたる。