中村史郎氏にインフィニティのデザイン戦略を聞く|Infiniti
CAR / FEATURES
2016年2月16日

中村史郎氏にインフィニティのデザイン戦略を聞く|Infiniti

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中村史郎氏にインフィニティのデザイン戦略を聞く

日本らしさも積極的に取り入れていきたい

1月の北米国際オートショーにて来場者の視線を集めたのが、レクサスとインフィニティという日本のメーカーがワールドプレミアした2台の2ドアクーペだった。ここでは、エモーショナルなスタイリングが印象的なインフィニティ「Q60」(日本名=スカイラインクーペ)のデザインを取りまとめた中村史郎氏(日産自動車専務執行役員)に、インフィニティのデザイン戦略について聞いた。

Text by KUSHIMA Tatsuya

注目を集めたレクサスとインフィニティの2ドアクーペ

毎年年始に開催される北米国際オートショー(NAIAS)、通称デトロイトモーターショー。かつて“ビッグ3”と呼ばれたアメリカのカーメーカーのお膝元で開かれるショーは派手な演出で有名だったことでも知られる。

が、それも今は昔。リーマンショック以降それらは一切省かれ、過美なところは一切なくなった。そして今年も、その流れでショーは行われた。

INFINITI Q60|インフィニティ Q60

INFINITI Q60と日産自動車CEO カルロス・ゴーン氏

INFINITI Q60|インフィニティ Q60

日産自動車専務執行役員中村史郎氏

そんな背景の中でも目立っていたのは日本のメーカーだ。特に、北米をメインマーケットとするレクサスとインフィニティが注目を集めていた。ともに発表したのは市販型の2ドアクーペ。レクサス「LC500」とインフィニティ「Q60」だ。クーペという趣向性の高いモデルをデビューさせたことからも、この2ブランドの勢いがうかがい知れるであろう。

ということで、今回はインフィニティ、いや日産を含めグループ全体のデザインセクションを率いる日産自動車専務執行役員、中村史郎氏にインフィニティの現在、そして未来について聞いた。

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日本らしさも積極的に取り入れていきたい (2)

インフィニティが掲げるDesign to Win(デザイン トゥ ウィン)とは

「今回のQ60のデザインはいかがだったでしょうか? これは振り返ると2009年に発表したインフィニティ「エッセンス」に立ち返ります。エッセンスはその後出てくるモデルを示唆するものであり、社内的なコンセンサスをとるにも重要なものとなりました」。中村氏はまずそう切り出した。

エッセンスとは2009年3月のジュネーブモーターショーで発表された高級スポーツクーペのコンセプトカー。ロングノーズ+ショートデッキのFRパッケージを表現したものである。エンジンは3.7リッターV6ツインターボ+モーターで、システム合計600psを発揮するとアナウンスされた。

INFINITI Q60|インフィニティ Q60

INFINITI Q60|インフィニティ Q60

「そのエッセンスのデザインから「Q50(スカイライン)」、「Q30」へと続いています。これから出るQX系もそうです。エッセンスで提案したデザインの方向性は、この世代のモデルサイクルすべてに踏襲されることになります。ですが、これはデザインだけで完成されたものではありません。ショーカーはカーボンファイバーでつくるから一台だけつくればいい。が、それを生産車としての土俵に上げられるようになったことが重要なのです。」

中村氏の言いたいことはこうだ。現在インフィニティは日本の栃木工場のほか、英国サザーランド、アメリカのテネシー、中国で生産されている。だが、製品としてのクオリティコントロールはバラバラであってはいけない。そこで栃木をマザー工場とし、その精度を各工場に反映させ、レベルを統一しようというものだ。日本の工場の精度の高さはずば抜けて高いと言い切る。

「優れたクルマはエモーショナルなデザインと品質、それと走りが伴わなくてはなりません。我々が掲げたのはDesign to Win(デザイン トゥ ウィン)。デザインの初期段階からエンジニアにも参加してもらい。さまざまな可能性を引き出していきます」

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日本らしさも積極的に取り入れていきたい (3)

ドイツのプレミアムブランドとの違い

2009年のエッセンスからインフィニティのデザインが新世代に入ったことを強調する中村氏。とはいえ、そもそもインフィニティは新しいブランド。誕生はレクサスと同じ1989年で、メルセデスやBMW、アウディといったドイツのプレミアムブランドとは歴史の厚みが違う。ではその違いはどうなのだろう。

INFINITI Q60|インフィニティ Q60

INFINITI Q60|インフィニティ Q60

「ドイツメーカーは長い歴史の中で、多くの顧客を獲得しています。販売面でのメリットは大きいですが、それにはデメリットもあります。つまり、自由度が低いということです。デザインひとつとってもこうあるべきという無言の圧力があります。インフィニティはここ10年、15年でブランドアイデンティティをつくりあげてきました。その点で、自由度は高いですね。それはインフィニティだけでなく、レクサス、韓国車にといっても強味となるでしょう。デザインの自由さという面では、日本らしさも積極的に取り入れていきたいと思っています。仏像の目の強さをヘッドライトに取り入れたりしたら面白いと思います」

インフィニティの今と未来を多弁に語ってくれた中村氏。Q60には近未来のインフィニティデザインのヒントがありそうだ。そしてQ60ののち、コンパクトSUVの「QX30」、「Q50スポーツセダン」、そして「QX60クロスオーバー」なども追加され、ターゲットが拡大されるのは必至。その意味では今後の展開が期待される。もしかしたらそのストラテジーに「日本導入」なんてワードも入っているかもしれない――

           
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