東京モーターショーに集結した、キーパーソンにインタビュー|BMW
BMW|ビー・エム・ダブリュー
コンパクトセグメント担当部長 ペーター・ヘンリッヒ氏
“駆け抜けるよろこび”が失われては、BMW車とは呼べない(1)
新型「7シリーズ」を発表したBMWジャパン。東京モーターショーのブースでも、目立つところに、全長5メートルを超えるボディをもつ、この最高級のセダンが飾られていた。いっぽう、売れ筋といえば、「X1」。同じ会場では、新型が熱い視線を浴びていた。インタビューしたのは、BMWにおいてコンパクトセグメントの担当部長を務めるペーター・ヘンリッヒ氏。新型X1をはじめ、前輪駆動プラットフォーム戦略を語ってもらった。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
現在のセールスには満足している
―― BMWのラインナップでコンパクトモデルが増えたのが印象的です。2015年は「2シリーズ・アクティブツアラー」と、同「グランツアラー」、それに2015年10月に日本発売開始された新型X1ですね。
いま、コンパクトカー・セグメントは大きくなっているのです。世界的に見てもっとも大きいといえます。今後も成長はつづくでしょう。BMWも、2004年に「1シリーズ」を投入して以来、注目しているマーケットです。実際、カブリオレやクーペといったバリエーションの手応えはいいですし、X1も上々の売れ行きでした。いまは、ドイツの競合他社がここに参入してきたので、我われとしては、あたらしい世代へと成長する時期だと判断して、ラインナップを拡充しました。
―― クルマにはアーキテクチャーという用語があって、基本骨格と訳したりします。コストがかかるものですが、ひとつ開発すると、それをベースに多車種が展開できるというメリットがありますね。フォルクスワーゲンなどは有名ですが、BMWでもついに前輪駆動のアーキテクチャーを展開するのですね。それにはどんなメリットがありますか。
X1と2シリーズ・アクティブツアラーの例でおわかりになるとおり、車種のバリエーションが豊かになるということです。新型X1のプログラムがあったから、実際に発表した順番は前後しましたが、2シリーズ・アクティブツアラーと同グランツアラーが生まれたのです。当初これらのMPV(マルチパーパスビークル)に市場はあるのか、わからなかったので、私たちにとっても冒険でしたが、はたして現在のセールスには満足しています。
BMWのラインナップが前輪駆動化することを気にする向きもあるようだ。はたして……?
BMW|ビー・エム・ダブリュー
コンパクトセグメント担当部長 ペーター・ヘンリッヒ氏
“駆け抜けるよろこび”が失われては、BMW車とは呼べない(2)
3シリーズが前輪駆動化されることはない
BMWにおいてコンパクトセグメントの担当部長を務めるペーター・ヘンリッヒ氏に聞く、コンパクトカー・セグメントにおけるBMWの戦略。
―― 今後、さらに前輪駆動車は増えていくのでしょうか。
さきに申しましたように、伸びている市場ですから、これからもさまざまなモデルを開発していく予定です。ただし、私たちの理解では、X1は前輪駆動ではありません。たしかに日本をふくめてベーシックモデルには前輪駆動仕様が設定されていますが、核になるのは、xDrive(エックスドライブ)と呼ぶ4WDシステムを搭載したモデルです。
―― 3シリーズが将来的に前輪駆動化する可能性もありますか。
それはありません。明言できます。私たちとしては、それぞれの駆動方式には適切なパワーがあると考えています。前輪駆動車に大トルクのエンジンは合いません。操縦性からいえば、それはやはり後輪駆動、あるいは後輪駆動ベースの4WDに向いているのです。くわえて、エンジンのフィールやステアリングやサスペンションなども開発にあたって重要な要素です。なにはともあれ、単純にどの車輪を回せば効率的かという問題ではないのです。
―― プラグインハイブリッド(PHV)やEVの未来はどう考えていますか。
環境対策として有効な駆動方式だと考えています。実際にこの(東京モーター)ショーでも、“e”とつけたPHVを何台も展示しましたし。これは避けて通ることのできないクルマの”未来“と考えています。内燃機と電気モーターの組み合わせで後輪を駆動し、付加的に別の電気モーターで前輪を駆動するようなシステムは、今後パワフルなモデルで現実のものとなっていくかもしれません。
―― BMWはスポーティなセダンとクーペに基本的に特化したブランドだと考えていましたが、SAV(スポーツアクティビティビークル)やMPVが増えているなど、幅広いモデルバリエーションをもつことになるのでしょうか。
いたずらにラインナップ拡充を狙っているわけではありません。私たちがもっとも重要と考えているのは、いわゆる“BMWらしさ”を、すべての製品の核にすることです。わが社のスローガンになっている“駆け抜けるよろこび”が失われては、BMW車とは呼べない。それを肝に銘じて開発に携わっています。その意味でも、X1、2シリーズ・アクティブツアラー、同グランツアラーは、BMWらしいモデルに仕上がったと自負しています。