ASTON MARTIN DBS VOLANTE|アストン・マーティン DBS ヴォランテ 海外試乗(後編)
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2015年3月9日

ASTON MARTIN DBS VOLANTE|アストン・マーティン DBS ヴォランテ 海外試乗(後編)

ASTON MARTIN DBS VOLANTE|アストン・マーティン DBS ヴォランテ

海外試乗(後編)

優雅にもスポーティにも

アストン・マーティンのフラッグシップモデル「DBS」にフルオープンの「DBS ヴォランテ」が追加された。英国で開かれたジャーナリスト向け試乗会から報告する。

文=小川フミオ写真=アストンマーティン・アジアパシフィック

最高速は307km/h、0-100km/h加速は4.3秒

前回でものべたとおり、DBSヴォランテは優雅なドライブを楽しめるスポーツカーに仕上がっている。しかしいっぽう、6リッターV12エンジンは517馬力の最高出力と570Nmの最大トルクという驚異的なパワーをもち、メーカー発表の最高速は307km/hに達し、静止から100km/hまで加速するのにたったの4.3秒しかかからない。いったん、アクセルを踏み込めば、4000rpmで独特の甲高いエグゾーストノイズが響き、サーキットでも走行可能なスポーツカーという側面を見せる。

ダンパーの減衰力を5段階、走行状況に応じて調整することで、乗り心地とハンドリング特性を瞬時に切り換える「アダプティブダンピングシステム」が備わっているのも特徴。ドライバーが積極的にスポーティなドライビングを楽しみたいと望みエンジンを回し、車速が上がるに応じてハンドルを切る速度が速くなれば、足回りも硬めになる。操縦している身としては、ややもすると、それと気づかず、コンフォタブルからスポーティへと「別の顔」を見せたDBSヴォランテをそのまま「どんな状況でも気持ちがいい、すばらしいスポーツカー!」と称讃することになっても不思議ではない。

ASTON MARTIN DBS VOLANTE|アストン・マーティン DBS ヴォランテ|02

ASTON MARTIN DBS VOLANTE|アストン・マーティン DBS ヴォランテ|03

フルオープンとは思えないボディ剛性

サーキット走行などをふくめて腕におぼえがあるドライバーのためには、もっともハードな設定である「トラック」(サーキットのこと)が選べるようになっている。ダイナミックトラクションコントロールシステムが解除でき、限界での駆動力が確保できる。このあたりは、ルマン24時間で今年総合4位に入賞し、またニュルブルクリング24時間レースにも積極的に参戦しているアストン・マーティンならではだろう。もっともこのモードを好むひとはよりボディ剛性が高いクーペを選択したほうが賢明かもしれない。

ボディ剛性はクーペの75パーセントが確保されているという。アストン・マーティンは、太いトルクチューブをボディ中央にもち、それが車体の捻れ剛性を高める設計でも知られているが、かつ、DBSヴォランテでは前後のサスペンションとエンジンを受けもつサブフレームを、ブッシュなど介さず直接シャシーにボルト留めすることで、より高い剛性を実現している。あまり状態がよくない道をとばすとき、高速でモーターウェイを走るとき、ともにフルオープンのクルマとは思えないほど、ボディはしっかりしていたのが印象的だ。

トランスミッションはMTとAT

DBSヴォランテのマニュアルシフトは正確。ゲート感が明確だし、ギアのヘッドとシャフトの重量バランスも最適で、軽く押すと吸い込まれるようにシフトできる気持ちよさ。クラッチも容量がたっぷりあって、つなぐとき神経質になることはない。個人的にはドライブを楽しみたくてこのクルマを買うならマニュアルを選択したい。いっぽう市場では主流というオートマチックだが、DBSヴォランテはトルコン式を継承する。いま多く出てきているDCT(デュアルクラッチテクノロジー=ポルシェのPDKなど)を採用する予定はないのだろうか。

「もちろん検討はしていますが、重量の面では現在のタッチトロニックのほうが有利です」と話すのは、製品開発総責任者のイアン・ミナーズだ。「それにシフトの時間もDCTは意外にかかる。現在ではタッチトロニックのほうが、スポーティなドライブができると思っています」とのことだ。たしかにタッチトロニックで、スポーティさが減じられているような印象はないので、ミナーズが言うように、洗練度があがっていれば、いたずらに「流行」を追う必要もないということかもしれない。

ビスポークのスーツのように

インテリアの居心地はよく、立体的な造型のシートはからだにぴったりくる。スカットルが低すぎて不安な気持ちになることなく、適度な守られ感もある。かつ幌を閉めるとぐっと静粛性が上がる。オーディオにはセンサーがつけられていて、オープン状態とクローズ状態のどちらかを自動的に判断して、音量などを調整してくれる。まるで優秀な執事のようだ。

車体色や幌色をはじめ、シートの素材やカラー、ダッシュボードの素材やカラー……内外ともに好きな色を注文可能。工場ではこれらを、熟練工が管理して、ビスポークのスーツのような1台を仕上げている。自分のためのクルマ。それがアストン・マーティンの真骨頂だ。

ディナージャケットを着たタフガイ、とデザイナーがこのDBSヴォランテを評したが、まさにそのとおりの印象だ。優雅に使うこともできるし、ガンガン走りを楽しむこともできる。アストン・マーティンのような年産5000台規模の少量生産メーカーで、ここまで懐の深いスポーツカーづくりができるのは大したものだとあらためて感心させられた。

日本での価格などは現時点では未定。追ってご報告します。

アストン・マーティン DBS ヴォランテ
ボディ|全長4721×全幅1905×全高1280mm ホイールベース 2740mm
車両重量|1810kg(参考値)
エンジン|5935ccV型12気筒DOHC
最高出力|517ps/6500rpm
最大トルク|570Nm/5750rpm
駆動方式|FR
トランスミッション|AT/MT

アストンマーティン・アジアパシフィック
Tel. 03-5404-8697
http://www.astonmartin.com/jp

           
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