フロントミドシップに517psを誇るV12エンジン

DBSヴォランテは、６リッターV12気筒搭載のDBSをベースに開発され、電動ソフトトップを与えられたモデル。サブネーム「ヴォランテ」は「自由に動きまわる」を意味し、過去のアストン・マーティンのオープンモデルに時として採用されてきた伝統的な名称だ。

DBSヴォランテは全長4721mmのボディのフロント、前車軸よりやや後方の、いわゆるフロントミドシップに、517psを誇るV12エンジンを搭載。トランスミッションとリアディファレンシャルギアと一体型のトランスアクスル方式を採用している。６段マニュアル、あるいはアストンでは「タッチトロニック２」と呼称する６段オートマチックが選べる。

シャシーの基本構造は他のアストンのモデルと同様、アルミニウムを基本に、これを特殊な技術で接着したもの。「スポット溶接より強度が出るのがメリット」とは生産を担当するマネジャーの弁だ。現在ロータスに買収されたハイドロアルミナム社が開発したこの技術は、軽量かつ高剛性の車体を実現するものとして、スポーツカー、アストン・マーティンには欠かせないものとなっている。

ジムで一流のトレーナーをつけたアスリートのよう

シャシーはアルミとカーボンファイバーのコンポジット。ボディも、ボンネット、トランクリッド、フロントフェンダーがカーボンファイバー製。たっぷりお金がかけられているのが、高級スポーツカー、アストン・マーティンの特長でもある。ただし、たとえば車体塗装は「サーフェスペール」なる特許技術を導入してカーボンファイバーの織目模様が見えないように気を配っているところなぞ、さらに贅たくだ。いずれにしても、低い車高、攻撃的なルックス、張り出したタイヤフェンダーなど、まるでジムで一流のトレーナーをつけたアスリートのように、力強いシェイプを構成している。

スタイリングのコンセプトはなにか。デザインダイレクター、マレック・ライヒマンに訊ねた。

「ひとことでいうと、タフガイ。ただし、ディナージャケットを着たタフガイ。そんなイメージを抱きながらDBSヴォランテをデザインしました」

Ｖ12バンティッジやDBSクーペを手がけてきたデザイナーはそう答えてくれた。彼はイアン・カラム、ヘンリク・フィスカーの後任として、現在は「ラピード」や「Ｉ-77」といったこれから発表されるニューモデルも手がけている。

優雅なドライブを楽しむことも可能

ついに実物に接したアストン・マーティンのニューモデル、DBSヴォランテはいかなるスポーツカーか。ロンドンからクルマで1時間半ほど走ったコッツウォルズの田園地帯を中心にドライブする機会を得た。

「時速30マイルまでなら操作可能で、14秒で完全に折りたたむことができます」とアストンのエンジニアが言うソフトトップ。フルオープンのスポーツカーを作ることにかけては、どの国より長い歴史をもつ英国だけあって、たたずまいも美しいし、コクピットからの眺めも視野が開けて気持ちがいい。DBSヴォランテではトップ開閉操作のボタンを長押しするだけで、４枚のサイドウィンドウの開け閉めも行える。

セダンベースのオープンモデルは、風を受けて前方に跳ね返す後席のシートバックが運転席から離れているので風の巻き込みが少なく感じるが、前席のすぐ後ろに小さなシートをもつ２＋２のDBSヴォランテでは、それなりに風を感じながらのオープンエアドライブとなる。それがいやなひとは、前席の背後に風の巻き込みを抑えるウィンドストップを装着すれば、かなり落ち着いた走行が楽しめる。

ではDBSヴォランテは優雅なドライブを楽しむためのクルマか、というと、もちろんそれも可能だ。道路からの振動はよく抑えられているし、13スピーカーのバング＆オルフセン製「BeoSound DBS」なるオーディオシステムも完備されているので、ゆったりした気分で走るのも悪くない。

アストンマーティン・アジアパシフィック
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