VOLVO|ボルボC30|第9回 (前編)|「ボルボにしてはカッコよすぎる!?」
Car
2015年3月19日

VOLVO|ボルボC30|第9回 (前編)|「ボルボにしてはカッコよすぎる!?」

第9回 ボルボC30(前編)

「ボルボにしてはカッコよすぎる!?」

「ボルボといえばワゴン」、というイメージが定着しているわが国だが、セダンやSUV、そして今回紹介する新型「C30」のようなコンパクト・ハッチもある。
個性的なスタイリングをもつこのニューモデルに乗り、下野康史が感じたこととは……。

文=下野康史Photo by Volvo Cars

北欧ボルボはフォード・ファミリー

サッカーの三浦知良が、一時、クロアチアのザグレブでプレーしていたころ、たまたまボルボの試乗会があって、現地を訪れた。クロアチアの首都である。
夜、飛行機で入る予定が、濃霧による空港閉鎖で急遽、変更になり、お隣オーストリアのグラーツに降りてから、バスで国境を越えた。
陸路を揺られること300km、深夜、やっとのことでホテルに着く。

お湯の出が悪いシャワーをあきらめて、そのままベッドでうたた寝をすると、明け方、つけっぱなしにしていたイギリスのテレビ局「BBC」で、ボルボのニュースが流れていた。
クルマや工場の映像に、見覚えのある悪役顔の写真が重なる。いま思うとヤンキースのトーリ監督に似ていた米国フォードのジャック・ナッサー会長(当時)である。フォードが、いままさにボルボを買収したことを告げるニュースだった。
「ボルボ・カー・コーポレーションと……、そして、フォードを代表しまして……」。翌朝、プレス・コンファレンスの冒頭でスウェーデン人の広報マネージャーが苦笑しながらそう切り出した。

もちろん、ボルボのスタッフにとっても青天の霹靂だった。自動車メーカーの合併話はたいてい突然だが、よりによって国際プレス試乗会の最中にこんなことが起きたのは、あとにも先にもあのときだけである。
あれが1998年。以来、フォード傘下にあるボルボのブランニューモデルが「C30」である。

ベースとなった「S40」「V50」に通じるフロントマスク。

スポーツワゴン風プレミアム・ハッチ

正確にいうと、いまボルボが属しているのは、PAG(プレミア・オートモティブ・グループ)という、フォード・グループの高級車部門である。ほかにジャガー、ランドローバー、アストン・マーティンらの名門が名を連ねる。

しかし、現在、大リストラ敢行中のフォードは、2007年になってアストン・マーティンの売却を決定した。
さらには残りのPAGブランドも、果たしてこの先、どうなるかわからないのだが、とにかく、そういうなかで船出したのが新しいモデル、ボルボC30である。

コンパクトなセダン「S40」とワゴン「V50」の下に位置するスポーツワゴン風プレミアム・コンパクト・ハッチバック。C30を簡単に説明すると、そんなところだろうか。
ライバルは「フォルクスワーゲン・ゴルフ」「アウディA3」「BMW 1シリーズ」といった、いわゆるCセグメント・ハッチだが、なかでもC30の個性は際立っている。

全長4.2m。ラインナップ中最小のボディに4席を置くレイアウト。

ハッチバックというボディ型式から連想される所帯じみた雰囲気がまったくない。ショーモデルそのままの緊張感を放つグラスハッチのリアスタイルは、とくに魅力的だ。
ボルボにしてはカッコよすぎる、と感じる人もいるのではないか。

でも、ボルボの歴史を振り返ると、このデザインもナットクなのである。

           
Photo Gallery