新型GSに試乗|LEXUS
LEXUS GS|レクサスGS
快適性とスポーツ性を両立
新型GSに試乗
「セカンドステージに入ったレクサスの頭出しモデル」というレクサスの新型GSに試乗した。セカンドステージとは、静粛性と乗り心地のよさという従来からの価値にくわえて、走りのよさを追求したことが謳われる。
Text by OGAWA Fumio
Photograhs by TAKAHASHI Nobuhiro
新世代のデザインアイデンティティを採用
新型GSは、500万円を超える4ドアセダンで、レクサスブランドにおいては、LSとISのあいだを埋めるモデル。メルセデスベンツ、アウディ、BMWといった欧州の高級ブランドと真っ向からぶつかるモデルでもある。フロントマスクはスピンドルグリルと呼ばれる新世代のデザインアイデンティティをまっさきに与えられている。果たして、操縦しての楽しさを味わわせてくれるモデルに仕上がっていた。
レスサスGSについてはOPENERSでも既報ずみなので、ここでは概要に触れるだけにとどめる。ラインナップは大きくいって、ガソリンとハイブリッドの2種類。ガソリンエンジン搭載モデルは、3.5リッターV6のGS350シリーズと、2.5リッターV6を新採用したGS250シリーズ。ハイブリッドはGS450hで、こちらは3月から生産開始となるためまだ試乗車は用意されていなかった。
今回のGSについて「セカンドステージ」とレクサスが大々的に謳うだけあって、操縦性の大幅な向上がはかられたのが注目に値する。電子制御によるサスペンションなどが用意されたことにくわえ、コーナリング時に後輪にも舵角を与える「LDH(レクサス ダイナミック ハンドリング システム)」が一部車種に採用された。レクサスによると「後輪ステアシステムは以前から存在したが、今回は、前輪と後輪を統合制御している点で、LDHは画期的」となる。
LEXUS GS|レクサスGS
快適性とスポーツ性を両立
新型GSに試乗(2)
さらに洗練がはかられたインテリア
試乗したのはGS350バージョンL(670万円~)とGS250 Iパッケージ。まずGS350は、234kW(318ps)の最高出力と、260Nm/3800rpmの最大トルクを発揮する3.5リッターV6筒内直接噴射ユニットを搭載し、6段オートマチックギアボックスを介して後輪を駆動する。バージョンLは快適性を追求したGSのラインナップ中でも中核をなすモデルだ。
ボディサイズは「(日本の路上での使い勝手を考えて)ミリ単位で切り詰めた」と開発を指揮した金城善彦チーフエンジニアは言うが、それでも4850mmの全長に対して1840mmの全幅という余裕あるものだ。いっぽう室内空間は「外形サイズの最小化と室内スペースの最大化」というように、おとな4人でも充分余裕あるものだ。
運転席はセカンドステージのレクサスが謳われるとおり、従来のラインナップとは一線を画し、12.3インチの液晶ディスプレイをはじめ、さまざまな種類のウッドが選べる木目パネルの存在感の拡大や、手縫いステッチが強調されたダッシュボードや革巻きハンドルなど、従来よりさらに洗練がはかられている印象が強い。運転席に腰をおろし、試乗したGS350バージョンLに装着されていた、ウッドとレザーのコンビネーションによるハンドルを握ると、着座姿勢などとともに、しっくりとくるかんじが強い。
ただしレザーシートはやたら厚みがあり、ウッドを使い日本的な軽妙さを演出しようという方向性を感じるのに対して、やや違和感を禁じ得ないのも事実。パンチング加工がしてあったり微視的に観ると芸の細やかさがあるレザー張りだが、それでもおおづかみの印象としては新鮮味に欠けるきらいがある。むずかしいだろうが、日本的な価値観をここにも反映できるようになると、欧米のライバルとまたちがう輝きを放つことができるようになるだろう。
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新型GSに試乗(3)
みごとなフラットライド感
GS350バージョンLのドライビングには、強く印象に残るものがあった。大きな部分はサスペンションの設定が寄与している。高周波、つまり細い段差をみごとにこなしたかと思うと、そのいっぽうでコーナーの進入ではロールもせずハンドルの舵角に忠実に、ドライバーの意図どおりのラインをなぞって走ることが可能。
GS350バージョンLに標準装備される、ダンパーの減衰力を電子的にコントロールする「AVS」システムの制御をより緻密にしたことが大きく貢献しているのでは、とレクサスのエンジニアではしている。9段階に分けられた減衰力を、路面からの入力に合わせて瞬間的に最適制御し、硬すぎもせずフワフワでもなく、みごとなフラットライド感が実現されている。
ハンドルを切ったときの、角速度、つまり切るときの速度や操舵角もパラメターにくわえられており、それがスポーティな操縦感覚を実現している。乗り心地は快適で、かつスポーティ。レクサスが「(スポーティさも採り入れた)セカンドステージの頭出しモデル」と謳うのはこのことかと、感心した。
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新型GSに試乗(4)
ダウンサイジング傾向へのレクサスの回答
GSが気持ちいいのは、サスペンションのおかげばかりでない。エンジンは2000rpmあたりまではトルクがあまり太くないが、そこを超えるとレッドゾーンまでもりもりと力を出す。6段オートマチックトランスミッションのシフト管理もこの気持ちよさの理由のひとつだ。コーナーでは自動的にギアを落とすなど、トルクバンドを有効に使い、それとは知られないまま、あらゆる場面で力強い走りができるようになっている。
158kWの最高出力を持つGS250 Iパッケージ(550万円)は、ドイツ車を中心に世界的な潮流ともいえるダウンサイジング傾向へのレクサスなりの回答ということだ。でも、GS350と比較しても、大筋の印象に変化はない。ドライバーはまことに気持ちのよいハンドリングと、自然なロールをともなうコーナリングを楽しむことができる。
GS250 Iパッケージには、さきに触れたダンパーの減衰力を4輪独立で自動制御するAVSシステムは備わっていない。そのため、路面の突き上げなどはGS350バージョンLに対してやや大きいように思うが、それでも、充分すぎるみごとなセッティングで、これで満足いく乗り味が実現されている。
GSには、4つの走行モードがダイヤルで選べるようになっている。「エコ」、「ノーマル」、「スポーツS」、「スポーツS+」で、「エコ」はシフトタイミングをふくめて燃費重視の運転をするためのモード、いっぽう「スポーツS」では、エンジンのレスポンスがよくなり、すべての回転域においてたっぷりしたトルクにのっかった、気持ちのよい加速を味わえる。「スポーツS+」ではステアリング比も変わる。
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新型GSに試乗(5)
新型のキャラクターを作り上げたレクサスマイスター
新型GSは、たしかに、コンフォートとファンが、電子制御技術をうまく使って、両立したモデルだった。もちろん、電子制御の設定には、方向づけがなにより大事で、それがクルマの「味」ともいえるキャラクターを生み出す。
GSの背後には、レクサスマイスターという肩書きを持つ開発担当者、伊藤好章チーフエキスパートの存在が大きい、とレクサスでは説明する。試乗会会場で出合った技術者のひとりは、「多いときは一日に500kmもテストコースを走って、新しいGSのキャラクターを作りあげていったのが伊藤さん。このクルマの乗り味は、すべて伊藤さんの努力の賜物」と話してくれた。
その伊藤好章チーフエキスパートは、「GSはグランドツーリング セダンの略であるように、キャラクターをスポーツに振り切ったモデルではありません」と語り、Fスポーツなどスポーツ性を強調したモデルも設定されてはいるものの、新型のキャラクターの本質は、快適性とスポーツ性の両立にあるとするのだった。