新型クアトロポルテ × ふたりの意見(九島辰也 篇)|Maserati
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2015年1月9日

新型クアトロポルテ × ふたりの意見(九島辰也 篇)|Maserati

Maserati Quattroporte S|マセラティ クアトロポルテ S

今年で設立100周年のマセラティ

新型クアトロポルテ × ふたりの意見(九島辰也 篇)

2013年、マセラティのプレミアムスポーツサルーン「クアトロポルテ」は、1963年の初代モデル登場から50年目の節目を迎えた。そして今年、創業者アルフィエーリ・マセラティによって、イタリア・ボローニャに誕生したマセラティは設立100周年を迎える。いつの時代も人々を魅了し続けるマセラティ。小川フミオ氏と九島辰也氏、ふたりのジャーナリストが新型クアトロポルテを試乗し語らい、その本質に迫る。今回は九島辰也氏 篇。
(小川フミオ篇はこちら)

Text by KUSHIMA Tatsuya Photographs by ARAKAWA Masayuki

乗ってからどんどん好きになっていく

今年の「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」はすごかった。ある意味マセラティ一色ともいえなくない。エントリーされたクルマは各年代やジャンルでカテゴライズされるが、マセラティに関しては100周年を讃えるとともに敬意を込めて “マセラティ”なるカテゴリーが設けられた。

そしてそこには、一生に一度お目にかかれるかかかれないシロモノが顔を連ねる。このクラスの賞を受けたV8エンジンを2基搭載する1929年型「V4スポーツ」は滅多に拝めるものではないし、オート&デザイントロフィーを獲得した53年型「A6GCS」もそうだ。ベスト・オブ・ショーに輝いたのは1956年型マセラティ450S。1956~57年にかけてモデナで9台のみ生産された2シーターのレーシングカーである……。

MASERATI V4 SPORT(1929)

MASERATI 450 S(1956)

さてクアトロポルテである。単純に「4つのドア」を意味するイタリア語を用いたこのクルマだが、その歴史は長く、もはや伝統的なモデルといえる。先代は日本でも大ヒットしただけに、諸兄の中にも多くのユーザーがいらっしゃるだろう。ワタシのまわりにもザッと片手ぐらいのクアトロポルテオーナーがいる。

彼らがよく口にするのは、乗ってからどんどん好きになっていくということ。そのスタイリングに惚れて買っても後悔させないクルマだそうだ。実際にガレージに納める人のセリフだけに説得力がある。

撮影で久々にステアリングを握ったのはそこから進化した現行型。先代のテイストを継承しながらも最新の技術にスイッチしている。が、走り出すとすぐにそんなオーナーズボイスが頭に浮かんだ。エンジンをかけゆっくり走り出しひとつ目の角を曲がるときには、マセラティの魅力に惹き付けられている自分がいた。思わずほほが緩む瞬間だ。

2003年にデビューした先代(5代目)クアトロポルテ、そのスポーツ Gt Sバージョン

Maserati Quattroporte S|マセラティ クアトロポルテ S

今年で設立100周年のマセラティ

新型クアトロポルテ × ふたりの意見(九島辰也 篇) (2)

カーガイのハートをワシ掴み

こいつは5メートルを超える堂々としたボディが特徴だ。当然キャビンは広く、ラグジュアリーサルーンとしてのテイストが濃い。言い方を変えれば、先代よりもひとつ格が上がったとも言えなくない。これまで以上に存在感が強まったのはご覧のとおりである。

特にリアシート居住性はクラストップレベル。レッグスペースもヘッドクリアランスも申し分ない。プライベートカーとしてはもちろんカンパニーカーとしてのニーズにもしっかり応えている。

ただ、それだけにとどまらないのがマセラティ。前述したように角をひとつ曲がるだけでも彼らの意図するクルマつくりを感じる。創業から100年。マセラティがつくりつづけているのはまぎれもなくスポーツカーである。

個人的に気に入っているのはスポーティなアクセラレーションと高速コーナーでのロードホールディング。ショーファーカー的にゆったりも走れるが、その気になればかなりアグレッシブな走りが可能だ。アクセルレスポンスの素早さ、沈み込むような加速感、それらは“走り”を知っているメーカーじゃないと再現できないクルマの挙動だ。

“再現”という言葉を使ったのは、彼らがレースフィールドを熟知していることをさす。マセラティは100年間のおよそ半分をレーストラックで培ってきた。この事実は不変である。

というようにクアトロポルテの魅力を再考してみた。一度では言い表せないほどの個性が注がれている。先日もミラノに行ったら多くのクアトロポルテを見た。なるほど、東京の高層ビル街もそうだが、レンガや石の建造物にもこのスタイリングがマッチするわけか。

そこでフッとコンコルソ・デレガンツァのことを思い出した。こいつもまた、数十年後のカーショーで注目されるかもしれない。マセラティのデザインはいつの時代も新鮮であり、その走りは過去もいまもカーガイのハートをワシ掴みにしていることを強く感じた。

小川フミオ氏篇はこちら

KUSHIMA Tatsuya|九島辰也
1964年生まれ。外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV/ヨーロピアンSUV&WAGON(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィン、ゴルフといったライフスタイル分野のコラムなどを執筆する。

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Maserati Quattroporte S|マセラティ クアトロポルテ S
ボディサイズ|全長 5,270 × 全幅 1,950 × 全高 1,470 mm
ホイールベース|3,170 mm
トレッド 前/後|1,635 / 1,645 mm
トランク容量(VDA値)|530 リットル
重量|1,860 kg
エンジン|2,979 cc 60度 V型6気筒 直噴DOHC ターボ
圧縮比|9.7 : 1
ボア×ストローク|86.5×84.5 mm
最高出力| 301 kW(410 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|550 Nm/ 1,750-5,000 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/40R19 / 275/40R19
最高速度|285 km/h
0-100km/h加速|5.1 秒
燃費(欧州値)|10.4 ℓ/100km
CO2排出量|242 g/km
価格|1,195万円

マセラティ コールセンター
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