LEXUS RX350 試乗(前編)|「ときめき」のための「やすらぎ」
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2015年4月20日

LEXUS RX350 試乗(前編)|「ときめき」のための「やすらぎ」

LEXUS RX350 試乗(前編)

「ときめき」のための「やすらぎ」

レクサスが放つ初のSUV、RXシリーズ。ハイブリッドモデルたるRX450hに先だってデビューしたRX300にさっそく
試乗した。

文=瀧 昌史写真=河野敦樹

主役はあくまでドライバー

レクサス初のSUV、RX350のステアリングホイールを握ってまず感じたのは「やすらぎ」でした。グレードは
「Version L Air suspension」で、アクティブコントロール式のAWD、つまり四駆仕様。

V6 3.5リッター・エンジンは粛々と回り、なめらかな6段ATと基本的にソフトなエアサスにより、アクセルペダルを深々と踏み込んだとてすべるように車速が増すのみ。2tに迫るボディをフル加速させてもアドレナリンフリー
で、たとえるなら交響楽が響くことなく、弦楽三重奏のボリュームが少々上がった程度。

そのまま道の継ぎ目を連続して乗り越えたとてステアリングホイールのしっとり感は変わらず、合流で多少強引に車線変更してもサスペンションはクラシックな革張りの大ぶりなソファーのように鷹揚でした。キャ
ビンに無音の室内楽が絶えず流されているかのようで、ああこれはレクサスだと実感した次第です。

和名ハリアーだった先代とのちがいは、よりアンダーステイトメント、つまり高級だけど控えめになったこ
と。このアンダーステイトメントは、シングルフレームグリルを採用する以前のアウディが好んで用いてい
たデザイン言語で、あくまで「高級だけど……」が前提です。

大胆な意匠のコックピットの造作や、随所に峰を走らせた独特のエクステリアデザインに一瞬目をくらませられますが、走り出せればなんら難解なことはありません。あるべきものはあるべき場所にあり、主役はあく
までドライバーです。そこで思い出されたのが旅館でした。

もてなしの国ニッポンならではの高級感

クールでデザインコンシャスなホテルもそれはそれで素敵です。ですが、たとえばニース、ハイホテルの
「up&down」という部屋は窓際、1ステップ高くなったところがトイレで間仕切りはシルクのカーテンのみだっ
たし、LAザ・スタンダードの「Wow!」という部屋のバスルームには巨大な足のオブジェ(ガエタノ・ペシェによるUP7という名のチェアでした)が鎮座していました。特別なステイが約束された特別な空間ですが、当然使いにくい。落ち着きません。

レクサスに旅館を感じるのは、クラッシィでありながら明快な居心地の良さと、一歩引いたサービスがワラ
ンティされているからです。レクサスのキーワードは「ときめき」と「やすらぎ」ですが、その2ワードは
並列ではなく、「ときめき」のための「やすらぎ」重視、ではないかと、RX350をドライブしながら感じまし
た。湯河原あたりの山間にある、こぢんまりとした料理旅館のように、都市生活とつかず離れずのいい距離感もRXはたたえています。

インテリアに多用されたセミアニリンという、よりきめ細かい原皮をセレクトし、より時間をかけてくり返
しなめすことで柔らかな風合いを携えた本革のタッチは、RX350のアンダーステイトメントなキャラクターに
とてもよく合っていて、今や世界的に受け入れられているFutonを感じさせます。

世界的な景況悪化により、クルマのラグジュアリーにおいてもダウンサイジングが迫られている今、レクサスのこういった高級感はもてなしの国ニッポン、という後ろ盾もあり、過剰に過ぎず、さりとて我慢を強いることもなく、いいポジションを得ている気がします。

つねに余裕を残す3.5リッターのV6エンジン

3.5リッターのV6エンジンは、最大トルクの9割以上を2,300rpmというごく低回転域から湧き出させるタイプ。最高出力の280PS(206kW)は6,200rpm、最大トルクの35.5kgf-m(348Nm)を4,700rpmで発生させますが、そこまで回さずとも必要にして充分な加速を得ることができ、つねに余裕を残しています。RX350においてこの2RG-FEと呼ばれるエンジンは脇役に徹しており、レスポンスの鋭さや、切れ味のいい吹け上がり、豪放磊落で図太いトルクを主張したりはしません。あくまでスタイリングや、室内の質感に重きが置かれており、その点もレクサス規格(ただしIS-Fを除のぞく)で統一されています。

スカットルやウエストラインが高く、レクサスに乗ると囲まれた感が強いのが通例でしたがRX350においては見晴らしも開放感もなかなか。ストレスフリーな運転のしやすさ、使い勝手の良さも、このクルマをさらに魅力的にしています。

恐ろしく厚手の超高級座布団のような乗り心地が、ハイスピードドライビングではやや緩慢に感じられることもありますが、それはネガというよりも個性だな、と今年47歳になる私は受け止とめました。このクルマ、じつは初のジェンダーフリーなレクサスになるのでは? 女性のレクサスユーザーが増えるそうだ、という予感については次回お話ししようと思います。

レクサスインフォメーションデスク  0800-500-5577
http://lexus.jp

BRAND HISTORY
トヨタがアメリカ市場において高級車ブランドLEXUS(レクサス)を立ち上げたのは1989年のこと。トヨタが誇る高い技術力と優れた品質、そして極上の顧客サービスにより、アメリカやドイツの高級車とは一線を画す新しい価値を提供しようというのが狙いであった。

同年9月、「LS400」(日本名セルシオ)と「ES250」(同カムリ)がアメリカ市場に投入されると、翌1990年2月には早くもLS400がベストインポートカーを獲得している。その後もレクサスの評価は高まるばかりで、ラインナップの拡大とともに、高級車ブランドとしてのポジションを確実にしていった。

アメリカでの成功を受けて、2004年にはヨーロッパ進出を果たしたレクサスは、同年5月、日本での事業展開を発表。翌2005年8月には、母国での高級車ビジネスをスタートさせた。開業当初は、「GS」(トヨタブランドのアリストの後継車)、「SC」(同ソアラ)、「IS」(同アルテッツァの後継車)と、フラッグシップの「LS」を欠くラインナップだったが、2006年9月には待望の新型LS、そして、2007年5月にはそのハイブリッド版の「LS600h/LS600hL」を投入することで、ラグジュアリーサルーン購買層の期待に応えている。

一方、2007年10月にスポーツモデル「IS F」を発表、また、2008年5月に行われたニュルブルクリンク24時間レースに開発中のスポーツクーペ「LF-A」を投入するなど、スポーツイメージの獲得に力を入れており、さらなる人気拡大が期待される。

           
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