PORSCHE 911|ポルシェ 911 試乗(前編)
Car
2015年4月22日

PORSCHE 911|ポルシェ 911 試乗(前編)

PORSCHE 911|ポルシェ 911

タイトコーナーでPDKにあやまりました

1980年代のレーシングカーに端を発するデュアルクラッチトランスミッション、PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)を搭載した新型911シリーズに試乗。その真価をたしかめた。

文=瀧 昌史写真=小川義文

なんでもできて刺激に満ちているのに合法的なクルマ

ポルシェはスゴイ。47歳にもなって純朴な青少年のような感想で恐縮ですが、ホントにそう思いました。何がスゴイかといえばもちろん911で、どこらへんがスゴイかといえば、なんでもできて刺激に満ちているのに合法的なクルマである点です。

私はクルマや、それを使った旅についての文章を書くことをなりわいとしていて、所有しているのはドイツ製ワゴンだけど、比較的フランス車が好みでというクルマ好きとしては中道左派なんですが、新しい911(997のフェイズ2)にはクラクラしてしまいました。まず、脊髄の芯からシビれたのは、PDKと略されるポルシェ・ドッペルクップルング。先にアウディ(Audi )、フォルクスワーゲン(Volkswagen)に導入されたDSGの高トルク対応ポルシェ版2ペダル7ATです。

今回デビューした新型では、PDKや直噴化された新エンジンの採用のほか、フロントやリアまわりの意匠も変更を受けた。ホイールについても新デザインを採用。

7段PDK搭載モデルには、ステアリングホイールにシフト用のパドルが備わる。パドルを親指で押すとシフトアップ、人差し指で手前に引くとシフトダウンできる。

エンジンパフォーマンスを堪能するには、もはやMTよりも上

なにもせずに走り出せば、まるでハーレーダビッドソンのビッグツインでツーリングに出かけたかのように、低回転高トルクを生かしたハイギアードモードで優雅に平和にあっという間に7速へ。ところがセンターコンソールにあるシフトプログラムボタンで「SPORTS PLUS」をチョイスしてアクセルペダルを踏み込むや、世界は一変。加速という名の腰を蹴るような小爆発が起こり、下り坂のタイトコーナーへのフルブレーキングではフォッ、フォフォーン!!!とヒール&トゥ風ダブルクラッチまで決められてしまい「あ、すみません」と思わずあやまりたくなりました。

あきらかに私より、クルマの処理能力が上。しかも、さも私がそういう操作をしているかのように主人をたてる謙虚さもあり、PDKは薩摩おごじょのようでもあります。ハードなドライブとなれば、プログラムもそれに合わせて高度に変化。自分のからだを賭けて挑むグランツーリズモのようでもあり、高回転になればなるほど鼓動がドライになる水平対向6気筒エンジンのパフォーマンスを堪能するには、MTよりもPDKがもはや上。少なくともMTは、趣味のギアボックスとなることでしょう。

一般的なAT車とかわらないPDKのシフトノブ。右側にコツンとたおすとマニュアルモードとなる。パドルのほかにシフトノブでも変速が可能。

PDKは911の購入動機になり得る

開放感あふれるタルガのインテリア。クーペなみのボディ剛性を確保
しつつ、オープンエアドライブの楽しみを味わわせてくれる。

このPDKという新しいダブルクラッチ式のトランスミッションのため、というのは911の購入動機として正しいと思いました。以前、スペインのさるサーキットでルマン24時間レース優勝ドライバー、デレック・ベルが駆る2座仕様のルマン・カーの助手席に乗せてもらい、そのシフトワークに驚いたことがありますが、自分でドライブしながらギアだけ彼にやってもらっているような妙味をPDKは備えているからです。さて、それでは次回は各論を。果たして911の本命は? カレラかカレラ4か、カレラSなのか、それともカレラ4Sなのか? 試乗しながら、煩悩の渦に飛び込みたいと思います。

ポルシェ ジャパン
http://www.porsche.com/japan/

BRAND HISTORY
ドイツを代表するスポーツカーブランドとして世界中の腕利きから圧倒的な支持を得ているのがPORSCHE(ポルシェ)である。はじまりは1931年。20代の頃から自動車エンジニアとして頭角をあらわした奇才・フェルディナンド・ポルシェは、ダイムラー社の技術部長を経験したあと、ドイツのシュトゥットガルトに「ポルシェ設計事務所」を設立して独立。以後、自動車メーカーからさまざまなクルマの開発を託されることになる。なかでも有名なのが、ドイツの「国民車」としてモータリゼーションに大きく貢献した「フォルクスワーゲン・ビートル」だ。

自動車メーカーとして、自らの名を初めて冠したのは、1948年に登場した「356」であった。それからポルシェは「911」「924」「928」といったスポーツカーを世に送り出すとともに、モータースポーツに力を注ぐ。たとえば、世界でもっとも苛酷なレースといわれるルマン24時間で16回の優勝を手に入れたほか、F1でもエンジンサプライヤーとして3度のシリーズ優勝に貢献するなど、輝かしい戦績を収めたのだった。その技術力と走りへのこだわりがいまなお彼らの製品に息づいているのはいうまでもない。

現在は、デビューから45年が経ったいまでもスポーツカーのトップランナーとして高い評価を得る「911」をはじめ、オープンスポーツの「ボクスター」、ボクスターのクーペ版の「ケイマン」、そして、プレミアムスポーツSUVの「カイエン」と、ラインナップすべてが高い人気を誇る。

           
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