PORSCHE 911|ポルシェ 911 試乗(後編)
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2015年4月22日

PORSCHE 911|ポルシェ 911 試乗(後編)

ポルシェ 911|NEW PORSCHE 911 試乗(後編)

ベストチョイスはカレラクーペのPDK

ポルシェが誇る最新のトランスミッション、PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)を搭載した最新911シリーズに一気乗り。そのベストモデルを探った。

文=瀧 昌史写真=小川義文

いちばん気持ちいいのはカレラS

新しい911カレラはクーペとタルガ、カブリオレというボディバリエーションをもち、それぞれにクーペとカブリオレではRR(リアエンジン・リアドライブ)と4WDが選択可能(タルガは4WDのみ)。そして3.6ℓエンジンと、3.8ℓエンジンの「S」も選べます。クーペでいえば911カレラ、911カレラS、911カレラ4、911カレラ4Sがラインナップされており、それぞれで6MTとダブルクラッチ式トランスミッションたるPDKが選べます。たとえ、ボディはクーペでいこう! と決めたとて、色やハンドル位置やオプションにいたる前の基本的なセレクトで8通りもあるわけですから、迷います。まあ、迷うのも贅たくな楽しみ、なのですが。

いちばん気持ちがいいのは、911カレラSに間違いありません。RRの911はナイフのようにシャープで、Sともなれば一段刃先が研ぎ澄まされているかのよう。RRをナイフとするならば、4(WD)はよく切れるハサミといえるでしょう。確実性と安全性が格段に増しますが、トレースラインは少しだけ太く(粗く)なる傾向にあります。でも4のほうが実用性は高く、たとえば通勤や別荘との頻繁な往復に使うのであれば、4で間違いありません。ひとりで乗ることが多いのであればSもまた有効でしょう。

新型911カレラ4Sカブリオレのインテリア。ツートーンカラーレザーインテリアは60万8000円のオプションとなる。

タルガ4Sのラゲッジコンパートメント。容量はRRモデルが135リッターなのにたいし、四駆モデルは105リッターとなる。

よき父親像と両立できるキャラ

じゃあお前は何を選ぶ? と聞かれたら、私は911カレラクーペのPDKと答えそうな気がします。非日常的なドライブを満喫でき、乗り心地もいい。速くて、ラク。研ぎ澄まされたナイフに男心をわしづかみにされるより、我が手に馴染みそうな道具を捜してしまうのは、貧乏性ゆえでしょうか? でも911の本懐はそのあたりのバランスの妙にある気がします。

妙なたとえかも知れませんが、私立中学に通う娘が遅刻しそうになったので、通勤ルートをちょっと曲げてクルマで送ってあげることになったとします。911ならば校門の前まで乗りつけてもOKではないかと。スパルタンなスポーツカーとしては例外的に、911はよき父親像と両立できるキャラを携えています。そこらへんの懐深さを911の魅力とするならば、もっともベーシックな“カレラクーペのPDK”が、一層の輝きを帯びて見えます。

写真は新型911タルガ4S(1681万円)。最高速度295km/h、0-100km/h加速4.7秒を誇る。

お金や時間をかけて丹念に仕立てられたクルマ

新型911カレラのリアビュー。自動車評論家である瀧 昌史氏がシリーズのなかでもっともリコメンドするモデル。

911がデビューしたのは45年前のIAAフランクフルトショーでのこと。いまやポルシェはフォルクスワーゲン(VW)、アウディ(Audi)を完全子会社化し、将来的にはグループの持ち株比率を74%まで高め、トヨタを凌駕したいとしています。こんどの911がお金や時間をかけて丹念に仕立てられていることは、ポルシェ好きでなくてもクルマ好きならば、一目で理解できることでしょう。我が世の春を迎えたポルシェのコアモデルがクルマとしてはもちろん、911としても旬にあることは、間違いなさそうです。

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ポルシェ911カレラ(PDK)

ボディ|全長4435×全幅1810×前高1310mm
ホイールベース|1310mm
車両重量|1490kg(6MTは1460kg)
エンジン|3.6リッター水平対向6気筒DOHC
最高出力|254kW[345ps]/6500rpm
最大トルク|390Nm/4400rpm
駆動方式|RR
トランスミッション|7段PDK
価格|1237万円

ポルシェ ジャパン
http://www.porsche.com/japan/

BRAND HISTORY
ドイツを代表するスポーツカーブランドとして世界中の腕利きから圧倒的な支持を得ているのがPORSCHE(ポルシェ)である。はじまりは1931年。20代の頃から自動車エンジニアとして頭角をあらわした奇才・フェルディナンド・ポルシェは、ダイムラー社の技術部長を経験したあと、ドイツのシュトゥットガルトに「ポルシェ設計事務所」を設立して独立。以後、自動車メーカーからさまざまなクルマの開発を託されることになる。なかでも有名なのが、ドイツの「国民車」としてモータリゼーションに大きく貢献した「フォルクスワーゲン・ビートル」だ。

自動車メーカーとして、自らの名を初めて冠したのは、1948年に登場した「356」であった。それからポルシェは「911」「924」「928」といったスポーツカーを世に送り出すとともに、モータースポーツに力を注ぐ。たとえば、世界でもっとも苛酷なレースといわれるルマン24時間で16回の優勝を手に入れたほか、F1でもエンジンサプライヤーとして3度のシリーズ優勝に貢献するなど、輝かしい戦績を収めたのだった。その技術力と走りへのこだわりがいまなお彼らの製品に息づいているのはいうまでもない。

現在は、デビューから45年が経ったいまでもスポーツカーのトップランナーとして高い評価を得る「911」をはじめ、オープンスポーツの「ボクスター」、ボクスターのクーペ版の「ケイマン」、そして、プレミアムスポーツSUVの「カイエン」と、ラインナップすべてが高い人気を誇る。

           
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