フェラーリ FF 雪上アタック|Ferrari
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2014年12月4日

フェラーリ FF 雪上アタック|Ferrari

Ferrari FF|フェラーリ FF

ほかのフェラーリでは絶対に味わえない

フェラーリ FF 雪上アタック

ジュネーブモーターショー公開され、話題をさらった、フェラーリのフラッグシップスーパーカー「ラ・フェラーリ」がジャパンプレミアを果たした。

Text by YAMAZAKI Motohiro

フルサイズの2+2モデル

「FF」とは、「フェラーリ フォー」を意味する称号であるから、それをあえて、フェラーリ 「フェラーリ FF」と表記する必要はないのだそうだ。ちなみに先日開催されたジュネーブショーでは、499台が限定生産される新型スペチアーレに、「ラ フェラーリ」というネーミングが掲げられているが、こちらも事情はおなじである。

FFが誕生したのは2011年のジュネーブショーでのこと。つまりそのデビューからは、約2年という時間が経過していることになるが、今回はFFの実力を、改めてスノーロードで体験することができたので、それを報告しよう。まずは復習の意味もかねて、簡単にFFの構成と、オンロードでの走りを紹介する。

Ferrari  FF|フェラーリ FF

Ferrari  FF|フェラーリ FF

FFは、確かにそれまでの「612スカリエッティ」の市場を受け継ぐモデルだが、この両車には直接の関連性はないというのが個人的な印象だ。612スカリエッティは1960年に誕生した「250GTE2+2」以降、フェラーリのラインナップに継承されてきた、フルサイズの2+2モデル。ボディをクーペスタイルとするのも、またその伝統的手法のひとつだ。

たいしてフェラーリは、FFをフル4シーターのハッチバックモデルとして誕生させているから、感覚的にはFFのスタイルからは、流麗な造形というよりも、むしろその機能性が強く印象に残る。つまり612スカリエッティとFFの両車は、そもそもそれを生み出すためのコンセプトがことなっているのだ。したがってFFは、真の意味では612スカリエッティの後継車ではない。

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フェラーリ FF 雪上アタック(2)

「4RM」と呼ばれる4WDシステム

いっぽうで、アルミニウム製のスペースフレームを核とし、フェラーリ伝統のV型12気筒エンジンをフロントミッドシップするという基本設計そのものは、612スカリエッティのそれから変化はなかった。「F140EB型」と呼ばれる、6,262cc仕様の65度V型12気筒エンジンは、最高出力が660ps。

前後重量配分を最適化するために、リアに搭載されるトランスミッションはデュアルクラッチ式の7段タイプ。ここまではこれまでのフェラーリには常識的なエンジニアリングといえた部分だが、FFのメカニズムにはさらなる驚きが隠されていたのだ。

それが「4RM」と呼ばれる4WDシステムで、フェラーリは前輪を駆動するためのトルクを、V型12気筒エンジンの前部から直接取り出し、さらに2段ギアボックス「PTU」を組み合わせるシステムを考案してきた。

ちなみにこの2段ギアボックスは、7段DCTが1速と2速にある時、そして3速と4速にある時の各々でレシオを変化させるが、5速以降ではそれは機能せず、FFの駆動方式はRWDとなる。ちなみにFFの「フォー」とは、前で触れたフル4シーターのキャビンデザインであり、そしてこの4WDの駆動方式をともに意味している。

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フェラーリ FF 雪上アタック(3)

FF最大の美点

オンロードでのFFは、圧倒的なスタビリティを見せる。このFFにつづいて誕生した、12気筒2シーターの「F12ベルリネッタ」では、フェラーリはさらに740psもの最高出力を、おなじ排気量から発揮させることに成功しているが、個人的にはこのパワーをRWDで受け止めるのは、最新の電子制御デバイスなしには不可能であったのではないかと考えている。

それは逆に考えれば、660psのパワーを、1速から4速までにおいては4輪から路面に伝達させることが可能なFFの方に、ロードモデルとしてより大きな魅力を感じるという意味である、と理解していただいてもかまわない。

Ferrari  FF|フェラーリ FF

Ferrari  FF|フェラーリ FF

もちろんFFの660psとて、一般的な水準から考えれば、ウエットな路面では安易なアクセル操作を躊躇させる数字だろう。トラクションコントロールやスタビリティデバイスが、常時FFの走りを監視し、最適な走行状況を作り上げている事情もF12と変わらない。だがパワーが控えめで、かつ4WDの駆動方式が実現することのメリットは想像以上に大きいのだ。

フェラーリの4WDにかんするコンセプトは、それが1速から4速までしか機能しないことからも想像できるように、必要時に前輪へとトルクを伝達することでスタビリティを確保するというものだ。FFのパフォーマンスを考えれば、本来ならばさらに高速域、つまり4速の速度域を超えた領域にこそ、4WD化によるスタビリティ向上は必要なのではないかという理論も成り立つが、実際のFFは、その最高速域においても、そのスタビリティに不安を感じさせることはない。

Ferrari  FF|フェラーリ FF

それは基本構造体であるアルミニウム製スペースフレームの強靭さ、あるいは磁性流体式の可変ダンパーを組み合わせるサスペンションのチューニング、そして卓越したエアロダイナミクスなどの相乗効果が生み出したFF最大の美点だ。

ワインディングではまた、前後で47:53とされた重量配分とともに重心の低さ、そして電子制御デファレンシャルの「E-Diff」と「4RM」の組み合わせによる、まさに4輪トルクベクタリングによる、自然で抜群の安定感を見せる走りを楽しむこともできるのである。

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フェラーリ FF 雪上アタック(4)

雪上での走破性

さて、今回のレポートの本題である、スノーロードでのFFの走りへと話を進めよう。長野県高峰高原の「アサマ2000スキー場」に特設されたテストコースは、FFの雪上での走破性を体験するには、まさにベストな環境だった。フェラーリでスキーリゾートへ、などというシチュエーションは、日本ではもちろん考えにくいものだろうし、FFにスタッドレスタイヤを装着することもまた珍しい。

特設されたコースはふたつ。ひとつは駐車場にスラロームや定常円旋回といったセクションを用意したもので、ここではシフトプログラムにリンクして、さまざまな電子制御プログラムの制御モードを変化させることが可能な、マネッティーノのポジションのちがいによる、FFの挙動を体験する。

スラローム

ローンチコントロール

ステアリング上のマネッティーノには、「アイス/スノー」、「ウエット」、「コンフォート」、「スポーツ」、「ESCオフ」という5つのポジションがあるが、アイス/スノーでは、FFはラフなアクセル操作を繰り返しても、まったくそれに反応することなく、パワーを明確に絞り込みながら、完全なトラクション重視の走りを披露する。

スタビリティデバイスのECSも、感覚的には常時それが機能しつづけるという印象だ。FFはスノーロードのような状況においても、ドライバーとパッセンジャーに精神的負担を感じさせない。

定常円旋回

Ferrari  FF|フェラーリ FF

ここからマネッティーノのモードを、ウエット、コンフォート、スポーツと変化させていくと、徐々にドライバーがFFをコントロールできる範囲は広くなる。どのモードでも印象的なのは、アクセル操作にたいしての反応が、自然なものに終始すること。定常円旋回では、ドライバーに姿勢制御の自由度がより多く与えられるスポーツが、扱いやすさという点ではもっとも魅力的という結果になった。

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フェラーリ FF 雪上アタック(5)

ライフスタイルとしてのFF

もちろん今回の特設コースでは、トランスミッションは5速以上を使うことはなかったから、必要時にはV型12気筒エンジンからの駆動力は、前輪にもきちんと伝達されるから、安心度は高い。

さらに先のESCオフは、完全にドライバーのオウンリスクモード。オンロードにおいてそれを使用する機会はほとんどないはずだが、このモードでもFFの姿勢変化はマイルドで、そして自然な印象を崩すことはなかった。

Ferrari  FF|フェラーリ FF

Ferrari  FF|フェラーリ FF

そしてもうひとつのテストコースは、コンパクトな林道を模したもの。FFの卓越した走破性は、ここでも好印象を与えてくれたが、もうひとつ気づいたのは、FFのハッチバックボディの見切りの良さ。

実際のボディサイズは、けっしてコンパクトなものではないが、この見切り、言葉を変えるのならばこれも機能性が、FFをよりアクティブな用途へと導く大きな原動力となってくれるのだ。

FFはフェラーリのカスタマーに、これまでの2+2モデルでは得られなかった、また4WD機構を持たないほかのフェラーリでは絶対に味わうことのできないライフスタイルを与えてくれる。

フェラーリというブランドを、あらたに自分のライフスタイルの中に取り込みたいというカスタマーにとって、それはあるいはフェラーリのベストモデルといえるのかもしれない。

Ferrari  FF|フェラーリ FF

Ferrari FF|フェラーリ FF
ボディサイズ|全長4,907×全幅1,953×全高1,379mm
ホイールベース|2,990 mm
トレッド 前/後|1,676 / 1,660 mm
トランク容量|450-800 リットル
重量|1,790 kg
エンジン|6,262cc V型12気筒
最高出力|486kW(660ps)/ 8,000 rpm
最大トルク|683Nm(40.8kgm)/ 6,000 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 295/35ZR20
最高速度|335 km/h
0-100km/h加速|3.7 秒
0-200km/h加速|11 秒
燃費|15.4 ℓ/100km
CO2排出量|360 g/km
燃料タンク容量|91 ℓ
価格|3,200万円

           
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