BMW X5のディーゼルに試乗|BMW
Car
2014年12月10日

BMW X5のディーゼルに試乗|BMW

BMW X5 xDrive 35d BluePerformance|
ビー・エム・ダブリュー X5 Xドライブ35d ブルーパフォーマンス

最新のクリーンディーゼルエンジン搭載SUV

BMW X5 xDrive35d BluePerformanceに試乗

近年、欧州の自動車市場において、クリーンかつパワフルなイメージが際立つディーゼルエンジン。いっぽう、黒煙をもうもうと吐き出す悪役の印象が、いまだ一般的に根強い日本。そんななかにおいて、ついにBMWがSUVラインナップの中核モデル「X5」にディーゼルモデルを導入した。モータージャーナリスト渡辺敏史が、現代の“クリーンディーゼル”とはどういうものか、この「X5 xDrive35d BluePerformance」のインプレッションをまじえてリポート。

Text by WATANABE Toshifumi
Photographs by KOGAHARA Mitomu

そもそも、クリーンディーゼルとは

欧州の自動車メーカーが環境性能の向上策として、内燃機そのものの「ダウンサイジング」策を軒並みとっているのはご存知のとおり。その源流にあったのは、90年代に遡るディーゼルエンジンの環境技術向上だ。

燃料である軽油を高圧で細霧化し、その噴射を高度に制御する「コモンレールテクノロジー」は、日本がはじめて実用化したもの。それとターボを組み合わせることで燃焼の適性化と高出力化とをはたし、普及帯へともちこんだのが現在欧州で広く受け入れられているディーゼルエンジンのアウトラインだ。そして小排気量の直噴エンジン+ターボで大きな体躯をひっぱるダウンサイジング・ガソリンエンジンの開発も、ここで培われた技術が下敷きとなっている。



たいして、日本では東京都条例を引き金としたディーゼルの厳しい排出ガス規制がはいり、それと相前後してハイブリッドカーが登場と、欧州とは結果的にちがった道を歩むことになったわけだ。言ってしまえば、ともに端緒はローカルな事情が大いに関係しており、ビジネスの大枠において優劣の議論はすでに不毛な状況に達したのかもしれない。それは先に発表されたトヨタとBMWの技術提携がしめしたともいえるだろう。

そんななか、BMWはいまだ“ディーゼル=悪”という先入観が抜けきらない日本市場において、ディーゼルエンジンモデルの導入を積極的に進めようとしている。輸入車として導入の先陣を切っていたメルセデス・ベンツにつづかんと、今年になってSUVの「X5」にディーゼルモデルを投入。さらに年内には、彼らにとっての大黒柱である「3シリーズ」にもディーゼルモデルが追加されるのではという噂もあるほどだ。

BMW X5 xDrive 35d BluePerformance|
ビー・エム・ダブリュー X5 Xドライブ35d ブルーパフォーマンス

最新のクリーンディーゼルエンジン搭載SUV

BMW X5 xDrive35d BluePerformanceに試乗(2)

特別なことはなにもない

「xDrive 35dブルーパフォーマンス」という名がつけられたこのX5は、維持するにあたって面倒なことはほとんどない。ガソリンスタンドでしばしば軽油であることを確認されるのはうっとおしいかもしれないが、給油口には緑色で注意書きが。さらにキャップには“ディーゼル”の文字が大書きされておりと、誤給油への配慮はおこたりない。

また、排ガスをクリーン化するために添加されるアドブルー(尿素)はエンジンルーム内にユニットが置かれ、排熱をもちいてつねに温度を最適化する仕組みがとられている。このためラゲッジルーム内のスペースはまったく削られていない。そしてアドブルーの補充は2万kmごと、というから、平均的な使用であれば車検や点検ごとにディーラーのサービスでじゅうぶんに対応が可能だ。

ディーゼルとはいえBMWのヘリテイジでもある直列6気筒のレイアウトを持つ3リッターのツインパワーターボ エンジンは、なにより吹け上がりの滑らかさが印象的だ。音、振動の類は、さすがにガソリンエンジン同然とはいわずとも、気にさわるものではなく、特にディーゼルにつきもののガ行のノイズは実用域でしっかり封じ込められている。

いっぽう、ディーゼルの苦手な高回転域にかんしても、5,000rpm付近まで、さほど息つく感もなくスーッと吹け上がっていく。そのサマにはエンジン屋の出自も感じさせるが、さすがにその領域ではエンジンノイズがやや大きめだ。

ディーゼルエンジンの美味なるポイントは、アイドリングから即座に立ち上がる分厚いトルクにある。ワイドレンジのトランスミッションと、このトルクバンドの組み合わせによって、エンジンを回さずともグイグイとスピードを乗せていく走りこそがその価値であり美点だ。実際に乗ってみると、4,000rpmオーバーなんて領域を使うことなど滅多にないことがわかるだろう。ガソリンエンジンであれば5リッター級の540Nmというトルクを、わずか1,750rpmで発揮するこのディーゼルエンジンは、2,000rpmも回っていればまったく過不足なくX5の大柄な車体を走らせる。

BMW X5 xDrive 35d BluePerformance|
ビー・エム・ダブリュー X5 Xドライブ35d ブルーパフォーマンス

最新のクリーンディーゼルエンジン搭載SUV

BMW X5 xDrive35d BluePerformanceに試乗(3)

ディーゼルならではのおいしさ

この分厚いトルクがあるからこそ、巡航回転数が低くおさえられ、燃費がよく、室内の静粛性も保たれるうえ、そこからの速度調整もおもうがまま──というのが、高速移動を重視する欧州においてディーゼルエンジンが普及した大きな要因だが、X5 xDrive35d BluePerformanceはその点において期待を裏切らない。

100km/hでの巡航回転数はわずか1,500rpm。そこからのゆるやかな加減速はアクセルの操作だけで滑らかにこなすことができる。激しいキックダウンを用いるのはよほどの急加速を要する場面だが、その場合、速度はあっという間に法定速度をオーバーすることになるから注意が必要だ。

つまり多くの人が使うだろう実用域においての速度のコントロール性がシームレスかつユースフル。この点において、どうしても回して力を稼ぐ必要のあるガソリンエンジンはなかなか太刀打ちできるものではない。ましてやX5のように大きく重いSUVともなれば、そのドライバビリティの差は歴然だ。



エンジンはクルマのキャラクターを決める大事な要素だが、そういう視点でみるとディーゼルの場合、総体的に飛ばすよりも流す方が気持ちいいというフィーリングにいたるため、もともとオンロードをかなりのペースで走れるセットアップが施されたX5のシャシーとこのエンジンとの組み合わせにおいては、乗り心地の面では若干アンマッチな印象もなくはない。

しかしSUV本来の用途と特性をおもえば、ディーゼルエンジンの適性はやはりどう考えてもガソリンエンジンより上。つまり今、X5を買うなら、キャラクター的にもランニングコスト的にも、このモデル以外に考えられないだろうという結論にいたる。ちなみに高速移動を主にしながら撮影に供した試乗車の燃費は、トータルで12.1km/ℓというものだった。ガソリンエンジンでこの力強さと燃費を両立させるのはさすがに難儀である。

とあらば、多くのユーザーにとってより気になるのは先ごろフルモデルチェンジとなった「3シリーズ」のディーゼルモデルの動向だろう。それにかんしては、近日中に欧州からのリポートをお届けできる予定だ。

spec

BMW X5 xDrive 35d BluePerformance|
ビー・エム・ダブリュー X5 Xドライブ35d ブルーパフォーマンス

ボディ|全長 4,860 × 全幅 1,935 × 全高 1,775 mm
ホイールベース|2,935 mm
車両重量|2,220 kg
エンジン|直列6気筒DOHC 24バルブ ツインパワーターボ ディーゼル
排気量|2,992 cc
最高出力|180kW(245ps)/ 4,000rpm
最大トルク|540Nm(55.1kgm)/ 1,750-3,000rpm
圧縮比|16.5
サスペンション形式(前)|ダブルウィッシュボーン式コイル スプリング
サスペンション形式(後)|インテグラルアーム式コイル スプリング
駆動|4輪駆動
トランスミッション|8段オートマチック
タイヤサイズ(前後)|255/50R19
燃費|11.0 km/ℓ(JC08モード)
最低地上高|220 mm
最小回転半径|6.4 m
荷室容量|620リットル/1,750リットル(後席折りたたみ時)
価格|839万円

           
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