アウディA4に試乗|Audi
Audi A4|アウディA4
アウディA4に試乗
2012年4月3日、日本でも発表された、新型アウディ「A4」。A4は世界的にも、そして日本においてもアウディの中核をになうモデルだけに、「ただのフェイスリフトではない」と、その完成度にはアウディも自信をうかがわせる。この「あたらしいA4」にさっそく小川フミオ氏が試乗した。
Text by OGAWA Fumio
Photographs by ARAKAWA Masayuki
一頭地を抜いたクオリティ
アウディA4が2012年4月3日にマイナーチェンジを受けた。A4は「2008年の日本市場導入以来、中心的なモデル」とアウディ ジャパンで位置づけてきたように重要なモデルだ。今回は、燃費効率やつくり込み品質の向上を目指し、ライバルと一線を画そうとしているようだ。
試乗したのは、A4 2.0TFSI クワトロ。211馬力の最高出力を持つ2リッター4気筒+インタークーラー付きターボチャージャーエンジンに、フルタイム4輪駆動システムを組み合わせたモデルだ。セダンと、アバントと呼ばれるワゴンの2車型が用意されていた。
今回のマイナーチェンジの眼目のひとつが、フロントマスクのデザインを見直したこと。ヘッドランプの内部構造が変更され、シャープな印象が強くなった。中央に位置するシングルフレームグリルは上端の角が落とされ、アウディによると「立体的な造型」が表現されている。
車内もA4の大きな魅力だ。「ディテールを磨きこんだ」とアウディが強調するように、ステアリングホイールの感触やスイッチの操作感など、人間の感性に訴えかけるパーツの品質が高い。
くわえて、リフレックスペイントによる磨かれたような表面処理のデコラティブパネルの採用と、アルミニウムをおもわせるヘアライン仕上げのパネルを各所に配するデザインで、メルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズといったライバルから一頭地を抜いたクオリティを実現している。
Audi A4|アウディA4
アウディA4に試乗(2)
2.0リッターエンジンの味
試乗では、走り出しの軽快さがまず印象に残る。2.0TFSI クワトロはデュアルクラッチシステムの7段Sトロニックが搭載されていて、ギアの選択も走行状況に応じて素早くおこなわれるため、もたつく印象はいっさいない。350Nmものトルクが1,500rpmから4,200rpmで発生するため、低回転域から力強さを感じさせる。
最近のドイツ車はダウンサイジングコンセプトが主流で、このクラスのクルマでは、フォルクスワーゲンを例にとれば1.4リッターから1.8リッターエンジンを搭載する傾向にある。
アウディの場合、開発者がかつて「ある種のクラス感をもつクルマには、余裕ある排気量も必要なのだ」と語ってくれたことがあるように、大きくダウンサイジングは進めていない。そのかわり、アクセル踏み込み量にたいするトルクの出方など、ドライバーの感覚の領域では、マージンが大きいというべきか、トルクの余裕を感じさせるのが好ましい。
ハンドルは軽いが、操舵感覚は鋭敏で、わずかに切り込んだときの車体の反応速度は速い。ターボチャージャーの径が大きいせいか、2,000-3,000rpmですこしトルクの落ち込みを感じたが、総じてクルマのパワーにふりまわされることなく、ドライバーの意思のとおりクルマが動かせる感覚は気持ちがいい。
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アウディA4に試乗(3)
セダン、アバント、ふたつの世界
試乗したモデルはセダンとアバント。モデルミックスでいうと、セダンのほうが多いのが世界的傾向だそうだ。これは盗難予防などの観点から、荷室内が見えてしまうワゴンボディを回避したいという市場心理のあらわれだろう。しかし日本ではアバントが4割に届くという。さまざまな荷物を積んでアクティビティに出かけたいというライフスタイル志向がアバントを選ばせるのかもしれない。
アバントのスタイリングは軽快で、フロントからリアのハッチゲートにいたるまで、一体感の強いデザインは秀逸だ。出来のよい磁器をおもわせるほど張りのある面と、各パーツの接合面の美しさはA4の大いなる魅力で、セダンはセダン、アバントはアバント、ふたつの世界観をスタイリングにおいても、みごとに表現している。
室内の静粛性も高く、より静かなモデルを求めるひとはセダンがいいだろうが、アバントの後席も高速走行でなければ、けっして音の侵入が気になるほどではないだろう。
試乗車には「S-line」というスポーティなパッケージを装備していた。専用の前後バンパー、サイドシル、サスペンション、18インチタイヤ、フロントスポーツシート、マルチファンクションステアリングホイールなどがその内容だ。
乗り心地は意外に硬くない。スプリングレートとダンピングレートがうまくバランスしているのだろう。あいにく17インチの標準タイヤは未経験だが、245/40 R18という扁平大径タイヤでも、ステアリングのシャープさは持ちつつ、走行中は強くゴツゴツと感じさせないのは印象的だった。
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アウディA4に試乗(4)
余裕があり、上質
もうひとつ、A4の魅力は、先にも触れたように、つくり込みのよさだ。インテリアの各部は、ことなる材質でも色調に統一感があり、そこに上質なクロームやポリッシュ仕上げのパーツをアクセントとして効果的に配している。
ステアリングホイールは革の吸い付きぐあい、ステッチが指の腹に触れる感触も好ましい。センターコンソールはスイッチ類が整理された。
ボディサイズは全長4,720mm、全幅1,825mmと、日本で使うには余裕あるサイズだ。2,810mmと比較的長いホイールベースの恩恵は、十分な後席のレッグルームと、大きな荷室容量を生んでいる。
今回のA4は効率性と安全性の向上も眼目で、2.0TFSIクワトロにはオプションで、エフィシエンシーモードを持つ「アウディドライブセレクト」、カメラとレーダーを用いて車線認識をおこない走行車線の逸脱時に進路の自動修正をおこなう「アウディ アクティブ レーンアシスト」などが用意されている。
ベースモデルは前輪駆動の2.0TFSI(マルチトロニック変速機を備え、セダンで440万円、アバントで458万円)。そのうえに、今回試乗したフルタイム4輪駆動の2.0TFSI クワトロ(同523万円、541万円)、そして3リッターV型6気筒にスーパーチャージャーを組み合わせたS4(同799万円、817万円)がラインナップされている。