清水久美子のポルシェ911体験
Porsche 911|ポルシェ 911
清水久美子のポルシェ 911体験
ポルシェ911の7代目、991型が日本にも登場した。OPENERSがさっそくこの991型と、先代にあたる997型を用意し、比較試乗にのぞんだのはご存知のとおり。青木禎之氏による徹底分析につづいては、これまであまり911には興味がなかったという清水久美子による乗り比べインプレッション!
Text by SHIMIZU KumikoPhotographs by ARAKAWA Masayuki
清水久美子的911先入観
スポーツカーブランド、「ポルシェ」といえば、長い歴史をもった「911」がその代表。わたしにとっての911のイメージは、あこがれのステータスシンボルといった感じで、日常的に乗ることのできるスポーティなクーペではあっても、本格的な走りを追求するクルマというイメージがなかったんです。
そう、たとえば都内でリッチな男性がデートの待ち合わせに911で乗りつける……そんなシチュエーションをおもい浮かべてしまうような車両。
でも、かずかずのクルマを試しているOPENERSのクルマ好き男子たちが911を語るときの熱っぽさは、そういうステータスシンボルへのあこがれとはちょっと別物。
「いったい、911の魅力ってなんなの?」
ということで今回わたしは、気分は漫画の『湾岸ミッドナイト』!
R乗りのレイナちゃんならぬ「ブラックバード」になって、その魅力の秘密を探ってきます!
運転に集中できる!
一緒に試乗に出かけた青木さんが最初に新型の991型を試したので、わたしは先代、997型から試乗スタート。ぱっと見から、カエルちゃんとあだ名をつける。まぁるいお目目が愛くるしいです。ボディサイズもそんな大きい印象を受けずカッコイイというよりはカワイイ感じ。ちょっとレトロな雰囲気もありますね。うん。見た目は65点くらいかしら?
そのカエルちゃんのコックピットに乗り込むと、おや、最近のクルマ社会ではだいぶ馴染みがなくなってきてしまったものが……そう、クラッチペダルとシフトノブの組み合わせです。これはマニュアルトランスミッション車ではないですか!
MT車のみだった「GT-R」に10年以上乗ってきて、「真の走りの楽しみはMTにあり!」とつねづね感じているわたし。これは楽しみです。
MTといえど操作は楽チン。以前乗ったケイマンRはシビアなクラッチワークを要したため、これもかな~とおもいきやドノーマル。女性はもちろん、MTの運転にあまり自信がない男性にも容易に操作が可能です。
意外だったのは、運転席にすわったときのコンパクト感。走りだしてみると、そのコンパクトな印象は走り全体からも感じられ、車幅もわかりやすく、操作感覚もつかみやすいので一体感があって運転に集中できます。
スピードを上げていくとエンジンのフケが気持ちいい。コーナーではちょっとくらい攻めてもダンパーの減衰力がさりげなく自動で高めにコントロールされ、ロール感もないです。かわいらしいカエルちゃんと命名しましたが走り出すとまるでちがう生き物ですね。コンパクトな感覚には包み込まれるような安心感がありますし、万が一タイヤがすべったときには、コンピューターがそれを感知してブレーキとエンジンの回転を制御。スピンをふせいでくれるのだとか。
頼りがいがあって、紳士的。そんなところはちょっとわたしのGT-Rにも似ているかも?
そしてここまででわたしは、ポルシェという車両は根本が「走る車」なのだと理解しました。
991は都会派?
青木さんとクルマを交換して、次は新型991型に乗りかえです。並べてみると一見どちらがどっち? ともおもえるほど似てはいるのですがよく見ると全然ちがう。991型は現代的というかよりはっきりした顔立ちに。「パナメーラ」を彷彿させるリュクスなたたずまい。997と比べると細くなったテールライトのあいだは「PORSCHE」「911 CarreraS」と2段表記になってぐっと大人な雰囲気をかもし出しています。サイズが大きくなったといわれますが全長56mmアップぐらいで、ほとんど先程の997型とかわりません。
さらに100mmのびたホイールベースのおかげなのか、旋回性能はこちらのほうが高く、乗り心地もいい。エンジン音も静かです。それから、これは997型にもいえますが、ボンネット(911はリアエンジンだからこっちがトランク!)に荷物が結構はいります。某デパートの一番大きなショッパーも並べて入っちゃいそうなくらいスペースがあるので、そこそこお買いものもできちゃいそうです。
インテリアは抜群にラグジュアリー感まんさいにまとまってるのでお洒落にうるさい女性にもお勧めしたいですね。そしてこのクルマで忘れてはいけないのが電動格納式ミラーのオプションです!997型までは、手動でミラーをたたむのが標準だったのですが……これはやりかたがわかりづらく、わかっていても扱いづらいばかりか場合によっては指先を挟んで痛いおもいをする危険性も。これ、慣れないと結構難しいんです。電動格納ミラーなら、そんな心配とは無縁。立体駐車場での乗り降りもスマートになります。いままでなかったのはやはり走りを追及するポルシェの信念みたいなもののあらわれだったのでしょうか?
それから、キーが可愛い! 911の形をしているんです。こんな小さな演出も女子にはポイント高いですね。
そんな991型ですが、オプションの「サウンドシンポーザー」のスイッチをいれればそれまで静かだった室内にスポーティなクルマには欠かせないマフラーサウンドが響きます。より高回転まで3.8リッターフラット6エンジンをまわしてくれる「SPORT」モードを選択すると、その充実感たるや格別。いっきに爆音……とまではいきませんが、ポルシェサウンドをより体感。チューンドカー好きのわたし、このサウンドがあればボーズのオーディオいらないかも!?
電子制御でなにがわるい!
わたしの溺愛するR35 GT-Rでもそうなんですが、電子制御が介入してくることにクルマ好きからは不満の声があがることがあります。991型も997型から、さらに、さまざまな電子制御技術がくわわっているので、そんな不満の声が発せられるのではないかな、と想像します。かくいうわたしもR32 GT-Rこと「スカイラインGT-R」からR35 GT-Rこと「NISSAN GT-R」に乗りかえたときには、とてつもない違和感をおぼえたクチです。第3世代となるGT-Rの発表は嬉しいニュースとともに戸惑いが隠せなかった。
アナログ的な要素がたくさん詰まっていた車両からデジタルな車両への転身はいままで大好きだったものが変わってしまうようで……なんとなく反発をおぼえてしまうんです。でも実際2台のGT-Rを所有してみてわかったことは、それぞれに素晴らしさがあること。しかもやはり新型は新型なので改良、改善がされていて、良いものにはちがいがないのです。
今回の試乗でも、997型と991型を乗りくらべてみると、991型は誰にでもオススメできるくらい乗りやすくて、すぎるくらいに速く、さらにファッショナブル。だけれどわたしのようなクルマ好きでも充実した「走り」を満喫できます。間口はひろくなって、奥はもっと深くなっている。まだまだクルマ好きが少ないといわれる女子の皆様も、そしてポルシェファンの男性の方がたも、997型よりもさらに紳士的になった今度の911で、どんどん「走り」に挑戦してみて欲しいです。