連載・藤原美智子 2015年6月|本物の塩と醤油と味噌は、美と健康の基本のキ!
連載・藤原美智子 2015年6月|キチンと作られたものが、おいしい調味料の基本
本物の塩と醤油と味噌は、美と健康の基本のキ!
今年4月の連載で我が家の食卓写真を載せたところ、知人に「どんな調味料を使っているの?」と聞かれました。そのときは「特別なものは使ってはいない」と答えたのですが、考えてみたら「私なりのこだわりはあるかも」と思い直し、今月は我が家の料理に欠かせない基本の調味料である、塩と醤油と味噌を紹介させてもらうことにしました。
Photographs&Text by FUJIWARA Michiko
和食と洋食の料理で使い分けている塩
思い起こすと、私が調味料にこだわり出したのは10年以上前、「マクロビオティック」にはまっていたころから。有機や無農薬の野菜にこだわっても、そうではない調味料を使っていては元も子もない、ということに気づいたからです。とはいえ、日々に使うものなので、あまり高価過ぎてもつづかない。そのあたりのバランスがとれているものを使っているという感じでしょうか(苦笑)。
まず、お塩は和食系と洋食系の料理によって使い分けていますが、和食のときは海水100%で伝統的な製法である天日と平釜によってつくられた、ミネラル成分豊富な「海の精 あらしお」を使っています。ほかの塩も試してみるのですが、いつのまにかこの塩に戻っているという感じでしょうか。何しろ、「海の精」は塩辛さとほのかな甘みとコクのバランスが良くて、素材の味を邪魔することなく料理をおいしくしてくれる。そうした当たり前の条件をクリアしているものって、意外と少ないんですよね。
そして洋食を作るときに使っているのは「ゲランドの塩(顆粒)」。フランス・ブルターニュ半島のゲランドの海田で、こちらも昔ながらの製法で作られている塩です。また、多くの厳しい項目をクリアしなければ与えられないという「ナチュール・エ・プログレ」という認証マークをうけています。ゲランドの塩はしっとりとしているのが特徴ですが、それは固結防止剤が一切添加されていないからだそう。味は「海の精」とおなじように、素材のおいしさを引き立ててくれるおいしさ。たまに塩そのものの味が際立ち過ぎて味付けに困るものがありますが、やはり“塩は名脇役でこそ価値がある!”というものですよね。
天然塩だからできる洗顔も効果あり
また料理にではなくときどき(10日に1回ぐらい)、塩を使って顔や身体を洗っています。塩に含まれているマグネシウムやナトリウムによって毛穴の汚れや黒ずみは落ちるし、カリウムによって毛穴がキュッと! それに肌全体が明るく、しっとりモッチリになるんです。もちろん、この効果は天然塩だからこそ。方法は、まずは汗が出るくらいにお風呂に入って、温まったら湯船から出て、手の平に塩をとって全身や顔を軽く撫でるようにして塗ります。そしてお湯でしっかりと流したあと、またお風呂に入って温まる。最後に冷たい水で引き締めます。注意点は粒子の細やかな塩を使うこと、けっして力を入れて撫でないこと。皮膚の薄い目の周りは避けること。ちなみに私が使用しているのは粒子が細かくて、売っているお店が多いので買い求めやすい「海の精」のほうです。肌の弱いひとは、塩を少しだけお湯で溶かしてからするといいかも。
有精卵と醤油での「卵醤」が元気のもと!
お醤油のお気に入りは「井上 古式じょうゆ」。井上醤油店は創業140有余年という歴史があり、こだわりのある素材と技術と手間ひまをかけた伝統的な丁寧な製法によって作られています。酵母が生きている濃口醤油で、コクがあってまろやかな旨味と香りがあるので、出汁が少なくても料理がおいしく決まるところが気に入っています。何にでも合いますが、とくに野菜の煮物や魚の煮付け、和風ドレッシングなどに使っています。
そして、もう一本。「マルシマ 純正醤油 濃口」も昔ながらの製法と、こだわり抜いた素材で製造されているお気に入りの醤油。どちらも添加物を使っていないということも共通していること。マルシマは奥深い旨味と濃厚でしっかりとした味が特徴で、炒め物やお刺身に使うことが多いでしょうか。
そして「卵醤」を飲むときにも使っています。卵醤とは字のごとく、卵と醤油のことで、正食(=マクロビオティック)の食事療法の一つ。使用する卵は有精卵で、醤油は昔ながらの製法で作られているものが基本です。今は「塩分過多は病気のもと」というのが定説ですが、正食によるとそれは天然の塩を使ってないからであり、身体をアルカリ性に保つためには適量の塩分は必要。病気は塩分やミネラルが不足したり酸性に偏ると発生する、ということらしいです。
たしかに病気とまでいかなくても、身体が酸性に傾いていると覇気や元気がなくなるような。そんなときに私がカンフル剤代わりに摂っているのが「卵醤」。とはいえ、私のやり方は本来の方法とはちがって「なーんちゃって卵醤」です。お湯にサッと潜らせたぐらいのポーチドエッグを作って、「マルシマ」の醤油を少し多めに垂らして食べる(飲むという感じかしら)というもの。これはあくまでも私流ですので、正しい作り方はネットで検索してみてください。もちろん塩分過多は高血圧を招いたり、腎臓や心臓や胃に負担をかけたりしますから、ご自分でキチンと判断しておこなってくださいね。
味噌を生で摂るのに一番適した野菜とは
味噌は味噌汁や肉の味噌漬け、中華風の炒めものなどに使いますが、料理のためだけでなく健康のためにも欠かせないもの。何といっても、味噌は植物性乳酸菌が多く含まれていてヨーグルトよりも整腸作用が高いといわれているし、酵素たっぷりの発酵食品ですものね。もちろん、そうした効果があるのは“本物の味噌”だからこそ。お気に入りの味噌は「石井味噌 信州 三年蔵」の赤味噌と、「小野崎糀店 天然醸造麦味噌」。味噌汁は米味噌と麦味噌を合わせて作るので、2種類常備しています。この2つの味噌の気に入っている点は、おいしさと豆の香りがすること、どちらも素材と手法と環境にこだわって作られているところ、そして添加物が使われていないこと。
「三年蔵」はまろやかな酸味と塩気と旨味のバランスが良く、三年味噌ならではの熟成された深い味わい。夏の朝は畑で作っている採れたてのきゅうりに、この味噌をつけてボリボリと食べることが多いのですが、これがおいしいんです~! きゅうりはギネスブックに「世界一栄養がない野菜」などと掲載されているらしいですが、ボリボリという歯ごたえが脳に響いて夏の蒸し暑い朝でもシャキッと目が覚めるし、なぜか身も心もスッキリ! それに味噌を生で摂るので酵素もこわれないですしね。
「小野崎糀店」は糀としても有名で、ここの麦味噌は麦糀で仕込まれていて、500日間自然発酵・熟成して作られています。麦の粒も残されている素朴で、独特なまろやかな味と香りが醸し出されている味噌です。作り手側の誠実さがうかがえるような味は国境を超えて支持されているようで、海外にも輸出されているらしいです。また小野崎店で修行したアメリカ人がアメリカでMisoメーカーを立ち上げて、その昔ながらの手造り製法を守った味噌を作って販売をしているそう。昨今の海外の和食ブームは味噌にも及んでいたんですね。
本物の塩分と水分の摂取で、肌状態も良好に
こうして書いてみて、自分が好きな味というのは吟味された素材と昔ながらの手法で作られ、そして作り手のこだわりが感じられるものだということがよくわかりました。また、どの商品にも塩分が含まれているわけですが、前述のように塩分過多は良くないけれど、摂らな過ぎも良くない。健康と肌の新陳代謝や修復のためにも塩分は大事ですからね。本物の塩分を適度に摂り、そして水分もキチンと摂る ―― そういえば、2014年7月の連載に「以前の私は水を飲む量が足りていなかったけれど、意識的に水を飲むようになったら肌の調子が良くなった」という記事を書きましたが、じつはそれは水分量だけでなく、塩分量とのバランスが良くなったからということもあるかも……! こうした効果のためにも塩分を含んでいる調味料はキチンとした本物を選ばなくては、ですね。