連載・田中 玲|其の八「ボディクリームの誘惑」
其の八「ボディクリームの誘惑」
モデル田中 玲の連載エッセイ、2009年の第二回。彼女ならではの感受性からこぼれ落ちてくる“言の葉”を紡いで、2月のテーマは「ボディクリーム」について。
誘惑に負けてもらいたい、そのテクスチャー……。
写真・文=田中 玲
手に取ってからだぢゅうにいき渡らせる。というクリームならではの行為
ボディクリームは蠱惑的(こわくてき)である。
そのいでたち、その香り、その感触、がそう思わせるのでしょうか? 香水もおなじような魅力を放ってはいますが、香水とはちがう魅力をボディクリームに感じます。
香水と大きくちがうのは、感触。
出会い方は両者ともちがいます。香水はさらりと通り過ぎますが、ボディクリームはそうはいかない纏わりつく留まりがあるのだと思います。香水より、もう少しの優しさ。
手に取ってからだぢゅうにいき渡らせる。というクリームならではの行為のせいなのか、手を込めた安堵。外側だけでなく内側からも香る、まるで自分から発香しているようです。
見た目もひとを惹きつけます。淡い色の、乳色味かかった色とりどりのクリーム。質素な容器から豪奢な容器まで多種多様、私の心を奪ってしまう。そうこうしているうちに気がつくとボディクリームが増えてしまっています。
最近大事に愛用している「クロエ」のボディクリームは、香りも、見た目も、クリームの質もとても上質で、身体に塗るだけで自分も上質な気分に浸れます。
ボディクリームをからだにほどこせば肌は確実にしっとりとした重みを帯びていき、顔のケアよりも早く結果が出てくるところもうれしい点。そしてなにより、ボディクリームで自分のからだを撫でるという行為がより一層効果を高めているのではないでしょうか。
なにかと、おなじブランドのなかでも香水ばかりクローズアップされてしまいがちですが、香水の横に堂々と鎮座しているボディクリームも触れて誘惑に負けてもらいたい。