連載・田中玲|其の四「茸」
Beauty
2015年4月30日

連載・田中玲|其の四「茸」

其の四「茸」

文=田中 玲写真=中川昌彦

椎茸、松茸、しめじ、えのき茸……、秋になると「茸のおいしい季節ですね」などの声をよく耳にします。今では一年中ほとんどの種類の茸を手に入れることが出来るけれど、古名は「菌(くさびら)」といって秋の季語でもあるので、秋の茸は特別なのでしょう。

しかし私は椎茸があまり得意ではない。このようなひとは割と多いのではないでしょうか? 私はまったく食べられないのではなくて、丸ごと一つ食べるのはなるべく避けたい。という程度です。
たまに撮影のお弁当に入っている椎茸の煮物を、克服したいと試しに口にしてみるが、少しの後悔。口内中に広がる椎茸の香りは、やはりなるべく避けたいと思う代物でした。
更に、茸全般にある、僅かな弾力、人肌のような瑞々しい水気を孕んだしっとりとした感触も生物を思い起こせる刹那。手で触るのもなるべく指の触れる表面積が小さくなるようにして、茸を触ります。

しかし、椎茸をはじめ茸類は、低カロリーでダイエットに適した食材。90%が水分で、食物繊維の種類と量は、野菜(ゴボウ、ニンジン、タケノコなど)や果実類(リンゴ、ミカンなどの果皮)とほぼおなじだそうです。ビタミンDも豊富で抗ガン作用もあると言われています。健康のためにも茸は避けては通れないようです。

そんな私が茸、とくに椎茸をおいしく、素晴らしい栄養価を摂取するために、作るのは、「茸と肉団子のスープ」です。参考にしたのは、角川SSコミニケーションズ「作りおきできるおかず」のなかの、飛田和飛さんの「肉だんごときのこの甘辛煮」を参考にして、自分なりにアレンジしたものです。
椎茸は大きめに裂き(いざとなったら除くことができるように)、ほかにも舞茸や、しめじなど癖の少ない茸類を沢山使用して、香味野菜の混ざった豚ひき肉のお団子と大量の茸を和風味のスープで煮込む。という簡単なスープです。
これは身体もあたたまるし、和風の優しい味と、大量の茸群に、身体に良いことをしていると自己満足の要素も沢山詰まった、心にも身体にも安堵と安らぎをもたらしてくれるおいしいものです。
少しスープを多めに作って、あまりはうどんのつゆと具材として活用出来るところもまた良いです。

心地よい秋風の間に通り過ぎるひんやりとした空気から、少しずつ冬の足音が近づいてくるのを肌で感じて、温かい茸スープを食べる。秋の香りを存分に身体全体で味わう至福の夜のひと時。

「茸と肉団子のスープ」レシピ
【材料(4人分くらい)】
豚ひき肉 200g
長芋 5センチ(お団子になる柔らかさによって、加減して使用)
長ネギ(粗みじん切り)10センチ
生椎茸(二等分)、舞茸、しめじ お好みの量
酒 大さじ1
塩 小さじ半分
だし汁 2~3カップ(お好みで)
みりん、醤油 (お好みの甘辛に)

【作り方】
1、長芋をすりおろし、ボウルにひき肉、長芋、酒、塩を合わせて練り混ぜる。
2、鍋にだし汁を入れて煮立て、茸類を加え、汁に茸の旨味を出す。
3、再び煮立ったら、みりん、醤油でお好みの味付けをし、1の肉だねをスプーンで団子状に落とし入れ、火が通るまで煮る。

「愛用しているルクルーゼのお鍋。スープも煮込み料理にも最適です」

           
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