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Chapter 6 Talks About Sustainability|Interview with HABA Yoshitaka
幅允孝|世代を超えてアートや物語が受け継がれていくこともサステイナブル
文=富山英三郎写真=石野千尋
絵本『ちいさなおうち』
本の世界でサステイナビリティというと、一般的には1960年代のアメリカで環境問題を告発したレイチェル・カーソンの作品『沈黙の春』が挙げられると思います。それ以前から危惧していた人もいたと思いますが、ここ最近極めて現実的な問題になってきていますよね。個人的には、バージニア・リー・パートンの絵本『ちいさなおうち』が幼少期からすごく好きでした。美しい草原のなかにあった一軒の小さな家が、便利さと引き換えにどんどん周りが都市化していき、最後は埋もれてしまって引越しをするというお話です。当時は純粋に好きな絵本のひとつでしたが、いま読み返すと現代を示唆する内容になっている。
本棚は人の内面をあらわにするもの
とはいえ、僕は田舎育ちだったのでずっと都会に憧れていました(笑) また、正直に告白すると、ペットボトルのラベルを毎回きちんと剥がすタイプでもないんです。そんなこともあって、サステイナビリティ=エコというようなビジネスワードでとらえるのではなく、連綿と流れていく人間のつながりや営みのような意味で解釈しています。そこには、人々のささやかな気持ちがあるわけですから。
今回僕がディレクションをした『サステイナブル・ライフ・ラゲッジ』の企画にも、そんな気持ちが込められています。本棚は非常にプライベートなもので、その人の内面を雄弁に語ってくれるものですよね。サステイナブルを大上段に構えるのではなく、トークショウ出演者の方々にチョイスして頂いた本やグッズを設置することで、皆さんのなかにあるささやかな気持ちが見え隠れすればいいかなと思います。気づけば、「これもサステイナブルかもね」っていう気軽なものにしたいですね。
身近なサステイナブル体験
自分の本棚には、アトムのソフビを置こうと思っています。これは、アトム生誕1周年記念として2004年4月7日に発売されたものです。最初は自分用として飾っていましたが、今は子どもがすごく気に入っていて、一緒に外出するほど大事にしています。考えてみると、アトムは僕の父親も好きだったので、実は親子3代で受け継がれている。これもサステイナブルなことなのかなって思いますね。
僕の好きなマティスの画集『JAZZ』も子どもがすごく反応するんです。偉大なアーティストとは知らず、純粋に興奮している姿を見ていると、本物の作品は買えなくてもこうやって本にまとまっているのはいいことだなぁと改めて思う。世代を超えてアートや物語が受け継がれていくこともサステイナブルなことかもしれない。「サステイナブル/サステイナビリティ」はまだまだ聞き慣れない言葉ですし、一般的に地球規模の議論が多いですよね。でも、主語が地球とか大きなものよりも、“僕”や“うちの子”のほうが身近に感じられる。そのほうがリアリティがあって、伝わりやすい気がします。