新型ジープ チェロキーを試す|Jeep
CAR / IMPRESSION
2014年12月16日

新型ジープ チェロキーを試す|Jeep

Jeep Cherokee|ジープ チェロキー

未来的なジープの新種

新型チェロキーを試す

フィアット クライスラー ジャパンが導入を開始した第4世代となる新型「チェロキー」は、誰もが良く知るこれまでの箱形デザインを採用したいわゆる“ジープ”らしいデザインから一転。アヴァンギャルドなフォルムが特徴だ。スポーティとも都会派ともいうべき、超モダンなエクステリアからは、タフなイメージだけではない、ジープのあたらしいチャレンジが見えてくる。

Text by SAKURAI KenichiPhotographs by TSUKAHARA Takaaki

まるでUFO

4世代目となった新型ジープ「チェロキー」は、ジープ伝統の7スロットグリルや台形をモチーフとした前後のフェンダーデザインが紛れもなく「ジープ」の一族であることを感じさせるが、乗用車と比較しSUVらしく確保された高めの車高と、「ジープ」を「ジープ」らしく見せるためのそうしたフレーバーともいえるデザイン要素を取り除けば、じつに斬新で未来的なルックスといえる。

このデザインに対する話題から避けて通れないのというのも、新型ジープ チェロキーの特徴である。北米では昨年末からデリバリーを開始しており、市場の反応はやはり半々。あたらしいモチーフを新鮮だと評価するユーザーと、これはジープではないと否定的な意見が真っ向からぶつかる。もちろん、こうした反応は、当のジープにとっては織り込み済みで、想定内。時間とともに市場の反応は落ち着くと見ている。

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「ジープというよりもまるでUFOのよう」とは、撮影をおこなったプロカメラマンの感想として印象的な言葉だったが、それは確かに的を射ているといえるもので、あらためて何にも似ていないこのチェロキーのチャレンジングなスタイリングには感心せざるを得ない。初めて実車を見たひとは、SUVにしてこのアヴァンギャルドなデザインに度肝を抜かれるだろう。写真よりも、実車はずっと個性的で、何にも似ていない。

これまでの「ジープ」とはかくあるべきというイメージから脱却し、次世代の提案として注目を浴びるとこのエクステリアデザインは、極端に寝かせたAピラーにつづくグリーンハウスが、箱形のジープとの決別を表現している。どちらかといえば乗用車のフォルムにちかいといえるシルエットは、タフなオフローダーのそれではない。エンジンフードとフロントグリルが一体化しているのもジープ初の試みだ。

Jeep Cherokee|ジープ チェロキー

未来的なジープの新種

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居心地の良い空間の演出に長けたインテリアデザイン

一見どこがヘッドライトかわからないようなライト周りも革新的なファクターである。実際には、正面から見て一番上がLEDクリアランスランプ、バンパー上部のスモークレンズの奥がヘッドライト、バンパーにある一番下がフォグランプとなる。

ヘッドライト部分を敢えてスモークレンズ化し、個性的な表情を作ったこのデザインは、クルマのフロントフェイスにまだまだ工夫の余地があることを知らしめた。某自動車メーカーのデザイナーは、素直に「やられた」と思った……と、チェロキーのデザインを評価したのは、あくまでも余談である。

横基調で赤いレンズの枠の中にホワイトのレンズをはめ込んだ48個のLEDを採用したテールランプもまた、これまでのジープのイメージを払拭するデザインである。前方を走るチェロキーを見て、ハッチゲート中央のエンブレムがなければ、後続車のドライバーは、まさかこのクルマがジープだとは思うまい。

しかし、そんなジープとチェロキーそれぞれの概念を覆すエクステリアは、実際に街中で見ると想像以上にスタイリッシュだ。

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SUVには必要とされる、オフローダーにありがちなタフさを強調する意匠や泥臭さを微塵も感じさせないフォルムは、時間とともに消化できそうだ。こうした一気に2世代ぶんもの進化を果たした飛び級的な個性追求の裏には、最近幅をきかせてきたライバルたる欧州SUVの存在も決して無縁ではないだろう。

反面、こうした革新的なエクステリアにくらべ、インテリアはオーソドックスな仕上がりだ。ただし、内装のクオリティは、これまでのチェロキーを知る者にとって驚きをもたらすはずである。

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アナログ表示される左右メーターのあいだには、さまざまな機能を表示する7インチ液晶ディスプレイを装備し、さらにクライスラーではすでにお馴染みとなった、スマートフォンやデジタルオーディオプレーヤーの接続のほか、ナビやエアコン、シートヒーターをタッチパネルや音声でコントロール可能となる先進的なコネクトテクノロジー「Uconnect」用の8.4インチディスプレイをセンター中央に配置。ダッシュボードの素材や質感、さらに仕上げのクオリティもかなり高レベルだ。

チープな印象が皆無なインテリアは、ジープのフラッグシップモデルである「グランドチェロキー」にも匹敵するほどのクオリティだと紹介しても、決して大げさではないだろう。

道具としての機能性を追求したのがこれまでのチェロキーだとすれば、新型は、居心地の良い空間の演出に長けている。重ねて言うが、これも欧州SUVというライバルの存在が影響していると想像に難くない。

Jeep Cherokee|ジープ チェロキー

未来的なジープの新種

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ジープたらしめる駆動システムへのこだわり

あたらしいラインナップは、FFのエントリーモデル「Longitude(ロンジチュード)」に最高出力130kW(177ps)、最大トルク229Nm(23.4kgm)を発生する2.4リッター直列4気筒の「タイガーシャーク マルチエア2」を、4WDの「Trailhawk(トレイルホーク)」と「Limited(リミテッド)」に最高出力200kW(272ps)、最大トルク315Nm(32.1kgm)を発生する3.2リッターV型6気筒の「ペンタスター」エンジンを搭載した。どちらものパワーユニットも、クライスラーグループとしては初となる、9段ATと組み合わせている。

FFモデルがラインナップすることからもわかるように、プラットフォームは米国でダッジ「ダート」として販売されている乗用車と共通化されている。クライスラーはこのプラットフォームを「コンパクトUSワイド プラットフォーム」と呼ぶが、ルーツをたどればアルファロメオ「ジュリエッタ」に行き着く。コンパクトな「コンパス」や生産終了となった「パトリオット」につづくFFプラットフォームのジープであり、アルファロメオというイタリアの血も流れているのである。

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乗用車ベースのプラットフォームを採用しているとはいえ、ジープを語る上で外せない4WDシステムは、新型チェロキー独自のものだ。泥濘路や岩場で活躍する4Lowモード(副変速機)をもつ「ジープ アクティブドライブII」をリミテッドグレードに採用。より本格的なオフロード走行性能をもつロッキング リアディファレンシャルを装備の 「ジープ アクティブドライブロック」をトレイルホークに採用した。

価格で見ればFFのロンジチュード<トレイルホーク<リミテッドの順でアップするが、オフロード性能では、トレイルホークがより悪路向き。4×4システムを、グレードによって2種類用意しているのも、ジープのこだわりといえるところである。

両4×4システムとも路面状況や天候、シチュエーションに合わせ、オート、スノー、スポーツ、サンド/マッド、ロックという5つの走行モードを選択できる最新電子デバイス「ジープ セレクテレイン システム」を搭載し、新型チェロキーを、誰もが知るタフなジープたらしめる。

Jeep Cherokee|ジープ チェロキー

未来的なジープの新種

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高いオフロード性能と快適なオンロード性能

一般路を走るぶんには、「車高が高い乗用車」とさえ印象づける、静かで快適な乗り心地に終始する。オンロードの快適性は、「グランドチェロキー」にも迫るものだ。高速域でのフラットな乗り心地は、これまでのジープでは体験したことのない独自のフィーリングである。

レスポンス良くステアリング操作に反応し、少なめのロールでワインディングロードをクリアすると、このクルマがSUVのカテゴリーに属していることを忘れてしまいそうだ。ただし、燃費向上に有利とされる最新の9段ATは、低中速域を多用する街中でレスポンスがイマイチに感じる場面もあり、熟成を期待したいと思わせた。

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肝心のオフロードでは、まさに道無き道をゆくジープの走りそのものである。先代比で36パーセント剛性を向上したボディは、深いモーグル(凹凸地形)を走行する片輪が浮くような状況下におかれても、ミシリともいわない。モノコックボディでこの高剛性を確保しているのは、さすがジープ。現行市販SUVで、最高レベルであることがわかる。

普通、そんなことはしないだろうが、試しに片輪が浮いた状態でドアの開け閉めをおこなっても、まったく問題はなくドアはスムーズに開閉可能だ。ジープの開発陣は、「ラングラーに次ぐオフロード性能を確保した」と説明するが、その実力に偽りはないだろう。

キング オブ オフローダー「ラングラー」に迫る悪路走破性をもつトレイルホークは、最低地上高が220mmともっとも高く、「セレクスピード コントロール」と呼ぶ低速オフロード走行用のクルーズコントロールも装備。

車体が走行中の勾配を感知してアクセル開度を自動制御し、ABSを作動させ滑りやすい下りも安全に走行できるほか、登りでも適切なパワーを4輪に伝え、人間が足で登り降りするのも大変なガレ場を強力なグリップ力でグイグイと進んでいく。

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ドライバーは安全なルートの確認とステアリング操作に集中すれば良い。障害物の多いオフロードやスリッピーな勾配のあるルートを抜けるさいには、じつに心強い最新デバイスである。

新型ジープ チェロキーは、確かにFFベースのプラットフォームを採用している。しかし、フォードの「エクスプローラー」がそうであるように、エンジンの横置き化や乗用車ベースという点だけで評価しては新型チェロキーの実力を見誤る。

マニアはメカニズムを注視して「本物か否か」を語りたがるが、そうした評価はナンセンスである。極限の状況で、いかに安全に走れるか、その実力があるかどうかが、ジープの価値。ラングラーに迫るタフなオフロード性能を持ち、いっぽうでグランドチェロキーに迫る快適なオンロード性能を持つチェロキーは、新種ではあるが、紛れもなくジープなのである。

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Jeep Cherokee Longitude|ジープ チェロキー ロンジチュード

ボディサイズ|全長 4,630 × 全幅 1,860 × 全高 1,700 mm

ホイールベース|2,700 mm

トレッド 前/後|1,580 / 1,620 mm

最低地上高|180 mm

重量|1,730 kg

エンジン|2,359cc 直列4気筒 SOHC

ボア×ストローク|88.0 × 97.0 mm

最高出力| 130 kW(177 ps)/ 6,400 rpm

最大トルク|229 Nm(23.4 kgm)/3,900 rpm

トランスミッション|9段オートマチック

駆動方式|FF

サスペンション 前|マクファーソン

サスペンション 後|マルチリンク

タイヤ 前/後|225/60R17

ブレーキ 前/後|ディスク / ディスク

燃費(JC08モード)|10.4 km/ℓ

最小回転半径|5.8 m

燃料タンク容量|60 リットル

価格(税込)|379万800円

Jeep Cherokee Trailhawk|ジープ チェロキー トレイルホーク

ボディサイズ|全長 4,630 × 全幅 1,905 × 全高 1,740 mm

ホイールベース|2,720 mm

トレッド 前/後|1,620 / 1,625 mm

最低地上高|220 mm

重量|1,990 kg

エンジン|3,238cc V型6気筒 DOHC

ボア×ストローク|91.0 × 83.0 mm

最高出力| 200 kW(272 ps)/ 6,500 rpm

最大トルク|315 Nm(32.1 kgm)/4,300 rpm

トランスミッション|9段オートマチック

駆動方式|4WD(オンデマンド方式)

サスペンション 前|マクファーソン

サスペンション 後|マルチリンク

タイヤ 前/後|245/65R17

ブレーキ 前/後|ディスク / ディスク

燃費(JC08モード)|8.8 km/ℓ

最小回転半径|5.8 m

燃料タンク容量|60 リットル

価格(税込)|429万8,400円

Jeep Cherokee Limited|ジープ チェロキー リミテッド

ボディサイズ|全長 4,630 × 全幅 1,860 × 全高 1,700 mm

ホイールベース|2,700 mm

トレッド 前/後|1,580 / 1,585 mm

最低地上高|180 mm

重量|1,880 kg

エンジン|3,238cc V型6気筒 DOHC

ボア×ストローク|91.0 × 83.0 mm

最高出力| 200 kW(272 ps)/ 6,500 rpm

最大トルク|315 Nm(32.1 kgm)/4,300 rpm

トランスミッション|9段オートマチック

駆動方式|4WD(オンデマンド方式)

サスペンション 前|マクファーソン

サスペンション 後|マルチリンク

タイヤ 前/後|225/55R18

ブレーキ 前/後|ディスク / ディスク

燃費(JC08モード)|8.9 km/ℓ

最小回転半径|5.8 m

燃料タンク容量|60 リットル

価格(税込)|461万1,600円

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